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zizi さんの日記

 
2016
8月 2
(火)
21:57
風に尋ねて 第24話
本文
風に尋ねて  第二十四話

 MCの軽妙な紹介から始まり、いよいよMIYABE登場、拍手に包まれる。最初は楽曲とアニメの紹介トークが続く。制作の裏話から事前に募集されていたファンからの質問なんかをテンポ良く進行した。ふと気づくとなにやら入り口の所で声がする。

「ちょ、行ってこっか」

カンちゃんが目配せする。今はkandersのスタッフとしての立場で行動しなきゃいけなかった。凪子さんが対応してたんだけど、どうやらどっかのマスコミ関係者が料金払うから中に入れろと押し問答になってるようだった。カンちゃんとボクはとにかくその人たちを半ば強引にドアの外まで押し出して、ちょっと店外に出て様子を見る。中に入ろうとした人の他にも明らかに出待ちするつもりらしい数社の人間がいる。

店内に戻るとちょうどトークのコーナーが終わり、MIYABEの歌が始まる所だった。
「どうだった?」
気になったんだろう、三好さんに聞かれる。
「あれって明らかに出待ちしてます。外、終わってからちょっと騒ぎになりそうですね」
「少年、実はあのコさっきさ...楽屋の入り口ん所から外の様子伺ってたんよね...」
「あ〜やっぱ相当気になってるんですかね...」
「大丈夫かな?見てきてやんなよ」
「でも男のボクじゃ」
「それもそうね....じゃさ、私行くからアナタも来て」
「あの...三好さんなんでそんなに?」
三好さんは一瞬言い淀んだ後に少し辛そうに言った。
「この業界ってさ...色々あんのよ。嫌な思いしてるコ見るとさ、ちょっとね」

三好さんの視線がヒヨコの方に向けられる。ヒヨコは自分を指差して「私?」って表情をしてる。気がつくとMIYABEの歌のコーナーは終わり、MCが「スペシャルゲスト成瀬美月」の参加を告げていた。

「絵里香さん、これ持ってって」

凪子さんが楽屋の鍵を投げた。三好さんがナイスキャッチした瞬間、成瀬登場のコールを受けてフロアではどよめきがおこり、会場が拍手と期待に包まれる。MCの紹介のあと、その手が指すの方向に視線が集まる。しかし、そこに皆の期待を集めた成瀬の姿は見えない。ちょっと間が空いた。でも中々出てこない。次第に不自然さに気づいた観客がガヤガヤしだす。一度引っ込んだMCは再度登場し間を持たせるため、成瀬のこれまでの経歴やエピソードを披露している。しかい会場のざわめきは収まらない。

「三好さん、何か大変な雰囲気に」
「わかってる。だから男のアナタを連れて来た。邪魔が入るようなら排除して」

ボクは三好さんとヒヨコと楽屋前に行ってみる。

「成瀬さーん、出番ですよ!」
スタッフがドアを叩き呼んでる。三好さんは構わず割って入る。
「ちょっと鍵開けますけどいいですか」
質問調だったが返事を待たずに三好さんが鍵を開けて素早く中に入る。続いてヒヨコとボクも入って鍵を閉める。例のアニメの登場人物の学校の制服を着て座ったままの成瀬は驚いてボクたちを見た。三好さんは臆せず口を開く。

「勝手にごめんね...外の騒ぎ気づいてるよね...でも私はあなたの気持ちがわかってるつもりよ」
成瀬の目が彷徨う。そして、三好さんの後ろにいるヒヨコに気づいて驚いた表情を見せた。
「えっ...」
「やぁ...」
二人の視線が交差する。互いに声をかけあぐんだ一瞬、三好さんが続ける。
「いやなら止めとけば?」
「でも...どうやって...」
成瀬は救いを求めるような表情になった。
「あとはお願い」
三好さんは成瀬とヒヨコの顔を交互に眺め、場所を譲る。聞かずにはいられなかったのだろう、成瀬が先に口を開く。

「ヒヨコ...どうして...」
「こんな時だけど...久しぶり。いまこの辺りに住んでるの」
「そうなの...」

成瀬は一度下を向き、膝の上に置いたハンカチを固く握りしめ、もう一度顔を上げた。

「あの...あの時は悪かったわね...」
「いいよ、もう。それより何だか大変になっちゃってるね...」
「...心配してくれるの?」
「うん...」
「あのさ...あれからどうしてた?」
「え?...まあいろいろね」
「私...ずっと気になってた。何であんな事言っちゃったのか...ヒヨコが居なくなるって事が私には受け入れられなくて...競いあって励ましあってって...それが出来なくなるって私もうどうしてよいかワケわかんなくなって...」
「うん...実は私もしばらく引きずってたけど」
「本当にごめん...あの時、皆んなから心配されて、自分は大丈夫って言うつもりだったのに...」
「えへへ、もういいよ」
「最初はちょっと強がった事言ってただけだったのが...ヒヨコが居なくなっちゃうって事が段々悔しくなって来て...それから口が勝手に喋り出して止まんなくなって...ごめんなさい...」
「うん。ここに転校して来てさ、普通に過ごしてたら何だかもういいかなって思って。で、落ち着いて考えたらさ、あの時の美月ってそんな感じだったんじゃないかなーって思ってた」
「そう...あのさ...ここで何かあったの?」
「ううん。皆んなそれぞれ色々あって。それでも何かに向かって生きている。昔は何だか私達って特別だって思ってたのかな。でもそうじゃなかったんだって」
「うん。そっか....そうかもね」
「で、さ。どうする?フロアに記者かテレビの人来てるみたいだったよ?」
「うん...事務所の人はライブ終わったら囲まれるだろうけどPRに良い機会だから音楽の話だけして後はニコニコしてて誤魔化せって...」
「何でも利用しようって事か...大人の事情ってワケね」

成瀬は少し落ち着いたようで、ようやく本音を漏らす。

「大体もともと何も無いのよ。あの人...MIYABEって人、一度テレビの収録で会って、その後本当に食事にって何度も誘われてさ、仕方なく一回だけ行ってさ、その後断ったのにどうしても送ってくって言うから送ってもらっただけなのに」
「うん...そうだったんだ...」
成瀬の表情が少し柔らかくなったような気がする。
「もうずっと前からテレビの仕事辞めたいって何度も言ってるの。最初の一度だけって約束だったのに...学校側も最初の時、誰か紹介してくれって言われて私が出て、学校側も最初は本学に差し障るといけないから一度限りって言ってたのにさ。ちょっと話題になったら掌返したようにもっと出ろなんて言い出してさ。私はピアノに集中したいし嫌だって言ってたのに、ズルズル続けてるうちにとうとうこんな事になっちゃって、もう何だか嫌になっちゃって...」

三好さんが突然言った。
「だったらやっぱやめちゃいなよ」
ボクは驚いて聞き返す。
「え?でも三好さんどうするんです?もう出番ですよ?」
「アンタが代わりに弾けば良いじゃない」
三好さんはヒヨコを見て悪戯っぽく笑う。
「ふふ…私と美月って大体同じ体型...だったっけ。今もかな?」
「失礼ね、変わってないわよ!ヒヨコこそ大丈夫?」
二人は表情を崩して笑いあった。でもボクは一つだけ心配が残っている。
「でもほら...いいの?これって演奏活動になるんじゃ。学校にバレたらまずいんじゃない?」
「あれね...いいのよ、もう...」
「そう...」

三好さんが突然大きな声で言った。

「よーし!じゃ、着替えよっか。少年は外で説明してきて。上手くやんなよ」
三好さんに背中を押され、楽屋を出たボクは多くのスタッフに取り囲まれシドロモドロで説明した。
「と、とにかくもうすぐ来ます」
その時楽屋の扉が開いて出てきた女の子は俯き加減のままスタッフの横をすり抜け急ぎ足でステージへ向かった。ホールのざわめきが一瞬静まり、声援が湧く。掃けていたMIYABEはちょっと慌てた様子でステージへ戻り、マイクへ向かいちょっと戸惑った様子で「お待たせしましたー」と言った。

会場がざわめくなか、成瀬が着ていた制服を着たヒヨコはスタスタとエレピに近づき、すとんと座った...と思うと即座に鍵盤に指をのせ、イントロを弾き始める。

MIYABEはすぐに成瀬じゃない事に気付いてギョっとしたみたいだった。でもイントロが鳴り始めると平静を装おっているのかどうか伺えなかったが、正面を向き息を整え歌の準備に入った。

が、ヒヨコのフレーズはすぐに様相が変わって行ったんだ。ワンフレーズ弾き終えたと思ったら激しい不協和音が響いた。そしてコードが一巡する頃には打鍵が激しくなって音数が増えている。本来ならばここ辺りで少し大人しくなって、歌が入りやすく...するはずだが、MIYABEが思わずヒヨコ...いや、成瀬でない奏者にコンタクトを求める...がヒヨコはチラと目をやっただけで、後は鍵盤で表現した...のだと思う。

「ライブって生きてるって意味でしょ」

ボクにはそんな風に聴こえた。歌う事を諦めたMIYABEは呆然としてヒヨコのピアノを眺めるしかなかった。最初ザワついていた客席は一度静かになり、何が起こったのか状況が理解出来ていない状態だったに違いない。しかしステージで続けられるヒヨコのピアノに、徐々に吸い込まれるようになって行く。最早曲の原形を辛うじて留める...程度になったフレーズは現代的とでも言えば良いのか、ボクには適切に表現する言葉を見つける事が出来無いままプレイは続く。それに呼応するようにボクだけでなくフロアの全員の魂が、もっともっと!と叫びを上げ、テージとフロアが熱気に包まれて行く。そして皆のボルテージが最高潮に達しようとした時、そのフレーズはクライマックスを向かえ鍵盤を上下に激しく往復したかと思うと耳をつんざくような不協和音の強打で終わった。

一瞬の静寂...

唖然とする観客...誰かがパラパラと拍手をした。釣られて二人...三人.と増えて行き、やがて大歓声が沸き起こった。その中ヒヨコをペコリと頭を下げ、これまた拍手を送っているMIYABEには一顧だにせずステージをスタスタと横切り掃けていく。

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投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2016-8-10 9:32  更新日時: 2016-8-10 9:32
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3136
 Re[2]: kimuさんへ
kimuxさん毎度です〜

あっ。これは文章組み立てる時コピペ使って何か変になってますね(笑)

整理して以下のように↓
>しかしステージで続けられるヒヨコのピアノに、徐々に吸い込まれるようになって行く

> 最早曲の原形を辛うじて留める...

「...」はう〜ん一応残しておきます(笑)

なんだか自分の文章はクドイと自覚はあるのですが、角に従って見直すのが面倒になってくるもんで(オイ)

さてさて残りも少なくなって参りました(たぶん)。
夏が終わる頃には完成させたいと思ってます〜
kimux
投稿日時: 2016-8-7 15:52  更新日時: 2016-8-7 15:52
登録日: 2004-2-11
居住地: 永山じゃないですよ
投稿数: 6479
 Re: 風に尋ねて 第24話
おお、怒涛の音楽的展開!この後、どうなる?!


校正担当より:
> しかしステージで続けられるピアノのに、徐々にヒヨコの演奏に吸い込まれるようになって行く。
ピアノ「の」→削除
「〜ピアノに、〜演奏に」で、「〜に」が意図せずにカブっているような。

> 最早曲の原形が辛うじて留める...程度になったフレーズは

原形「が」→「を」
留める「…」→削除?
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