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zizi さんの日記

 
2015
7月 5
(日)
06:46
風に尋ねて 第13話
本文
風に尋ねて  第十三話

 四月、今年もまた桜の花が咲き、そしてすぐに儚くも散り始め、その花びらは校門から校舎へ続く通路に舞っている。この季節になると、そんな当たり前の事なのに大人はいつも『今年も桜が綺麗だね』なんて言う。その風景に感慨を抱く余裕が無いボクは...そのまま始業式を迎え、二年生になり新しいクラスの教室に居た。何故かわからないけど、仲良かった連中は、また同じクラスになった。カンちゃん、ハル、深松君と吉山さん、そして桜井陽代子ちゃん。新しい教室に入り、彼女の姿を目にした時、胸の内にズキンと痛みが走った。机の配置を確認し、席を探して座ろうと皆ガヤガヤしてた時、どちらからともなく目が目が合ってしまって。

「同じクラスだね...」
「え...そうね」

始業式の日、会話ってこれだけだった。それからのボクは新しい学年で、彼女と一緒に居る事が出来る...って事態を自然に受け入れてるように振る舞ったものの、状況は春休み以前のまま、お互いに何をどう...って話をした訳でもなく、かと言って全く話をしない訳でもなく、でもどこかよそよそしさが漂う微妙な距離感だった。ただ、陽代子ちゃんは最近小音楽室でピアノの練習をする事がなくなっているようで、その事が気がかりだった。そして今年度の入学式を終え下級生が入って来た頃、ようやくその事を聞いてみた。

「最近ピアノ練習してないみたいだね」
「え?そうかな」
「だってあの部屋いつもボクが吹奏楽部の練習で使ってるし」
「そっか...」

しかし今のボクには感情に「しこり」のような物があり、素直に話をし辛くなっている事を自覚させられた。彼女もそれ以上あまり語らなかったので、ボクもそれ以上聞くのをやめた。そして、新学年の何となく浮かれた期待感がようやく落ち着いて来た頃、またも深松君と共にクラス委員を任される事になった吉山さんに声かけられた。その日の理科室はいつもより強いラベンダーの香りがしてて、深松君の姿は無かった。

「あれ?深松君は?」
「あれ?さっきまでそこに居たのに...もしかして消えちゃった?...」
「ええっ!?そ、それってまさか...」
「なんてね。調合間違えて思い切り濃い香りを嗅いじゃって、気分悪くなって外に行ったの」
「ハハ...何か笑えない」
「ふふっ、ごめんね。でもジジ君、あれって本当だったんだね」
「え?何の話?」
「桜井さんの事。最近皆とよく喋るようになってるよね。気づかなかった?」
「ああ...そうみたいだね」
「ジジ君言ってたじゃない、『もうすぐ気にならなくなるよ』って」
「ああ...そう言えばそうだった」
「アレって何か予兆があったの?」
「うん...まあ」

あの時のそれは...彼女がもうすぐ居なくなるって思ってた時で、吉山さんが考えてるような事じゃあなかったけど、そのままにしておいた。そんな事はお構い無し、吉山さんは話を続けた。

「放課後、皆んなと一緒に遊んだりするようになったし」
「あれ、そうなの?」
「それにさ、この前クラスの女子でカラオケ行ったんだけどさ、桜井さんも来たんだよ」
「へえ...そうなんだ」

そんな話をした後だった。ボクはちょっと嫌な光景と遭遇した。そんな事言う資格が無いのは百も承知だけど。登校して教室に向かう階段の踊り場で、陽代子ちゃんが見慣れない男と話してる...そんな場面を見た。あの顔には見覚えがある、確か一学年上の南先輩とか言ったか。ちょっとしたイケメンで時々クラスでも部活でも女子達の話題にその名前が登るのを聞いた事がある。ただ話してるだけ...何でそんな事わざわざ自分に言い聞かせなきゃいけないのか。心の中で自分に対して悪態を吐きながら伏し目がちにその横を通り過ぎた。

そんな風に過ぎていく四月。ボクはまた屋上に行く回数が増えていた。そして、それは小春日和に誘われたワケじゃないって事だけは確かだった。

*

その日、屋上に行った時はカンちゃんもハルもまだ来てなくて、ボクは一人だった。その時ここではあまり見ない顔を...でもボクは以前から知っている、同級生の女子が居た。その時ボクは珍しいなって思って声かけようかと思ったんだけど、その直後にカンちゃん達が屋上に上がって来て、それっきりだった。そして翌日、そのコの名前が意外な所から出てきたんだ。その日の朝、教室に入るなりハルに羽交い絞めされた。

「ジジ!ちょっと屯所まで来い!取り調べを行う」
「ちょ、オマエ一体何者だよ!今度は新撰組かよ…わかったから離せよ」
ハルは素直に腕を離し、珍しく『ハルノート』を持ち出し、教室の端っこの方で声を潜めて言った。
「ちょっと聞きたいんだけどさ、マコちゃんって娘知ってんだって?ほら、デザイン科の」
「ええと...紺野眞子の事?」
「そう」
「…ああ、まあ」
「またまた〜しらばっくれちゃって。同じ中学だったんだろ?」
「まあ、そうだけど」
「オマエさ〜何でそんな大事な事教えてくんねぇの?」
「はぁ?知らねーよそんな事」
「同じ中学のヤツに聞いたらさ、昔結構つるんでたらしいじゃん」

確かにそうだった。でも高校ではマコはデザイン科で、女子クラスだったから普通の高校生活で接点は無い。同じ駅から通ってるけど、マコは確か文芸部に入ってんだったか、ボクは吹奏楽部の朝練なんかで通学時間も合わなくなり、ごくたまにメールのやりとりする事が無くもないけど...今じゃほとんど顔を合わせなくなっていた。

「そうだっけ」
「もぅつれないでしょ。ホラ、ここ。ハルノートに名前上がってんの。でも女クラだからさ、情報無くて困ってんのよ」
「何でオマエが困るんだよ」
「ま、いいじゃん。でさ、ジジ様。一つお願いなんだけどさ、写真なんて持ってない?」
「持ってねぇよそんなもん。最近会ってもねぇし」
「何でぇ、役立たずだなぁオマエ。あ、仲良かったんなら教えといてやる。知ってる?一コ上の先輩と噂あんの」
「ん?よく知らない」

実は同じ中学だったヤツから風の噂で聞いた事がある。南イチローって言ったっけ。三年生のイケメンの先輩とつきあってるとかいないとか…そこまで考えてハッとした。昨日階段の踊り場で陽代子ちゃんと話してたのってその人じゃなかったっけ...

そんな事考えてるとハルは何か勘違いしたらしい。

「そんなに気になる?知りたいんなら情報集めといてやる。ただし…写真と交換な」

オマエの頼みなんて知らねぇよ、と思いつつ翌々日。教室に入ると早速ハルに呼び止められる。

「ジジちゃん。どう?」
「あ?何の話?」
「すっとぼけちゃって」
「ああ...まだだよ」
「ヤル気なしだろ、そう思ってさ…特別に先出してやる」
「何をだよ」
「それがさ、あの南先輩ってんのは…」

ハルの情報収集力は侮れない。ヤツが仕入れた情報によると、南先輩ってのは顔はイケメンなのだがそれを良い事にアチコチで女子に手を出してるらしい。ハルの言によれば…『あんなヤツは男の敵』だった。『アイツ一つの高校に一人づつ彼女作るなんて言ってるらしいぜ…そんな事あっていいのかよ…』ハルは自分がモテない事を全てイケメン先輩のせいにしてしまいたかったらしい。

ハルにそんな事言われたからじゃないけど、マコの事が気になって来て、メッセージを送り、部活前に屋上で久しぶりに会う事にした。

*

そして放課後。ハルの視線を無視して教室を出て屋上へ上がった。マコは先に来てた。

「久しぶり」
「そやな、でも何やこんなとこ呼び出して。ついにウチに告るつもりなんか?」
「うん実は…って…そんなワケねぇだろうがよ!」
「あははっ、モチロン冗談や」

校内でたまたますれ違って軽く声かける時はあったけど、ちゃんと会って話するのは久しぶりだ。少し大人っぽくなったのかな?って気が一瞬したけど、やっぱ相変わらずだな...って少しだけ懐かしさを感じる。でも笑い方がいつもと違う。何となくボクが知ってるマコじゃないような気がした。高校になってから殆ど会ってなかったとはいえ、ま、ちょいと気にはなる。

「オマエ最近どうよ?」
「何がや」
「いやさ、ちょっと気になって」
「何やジジ…」
「ほら、今さ。誰か…」

マコは目を伏せて言った。中学生時代には見た事が無かった表情だった。

「知ってんのやろ」
「噂じゃ…」
「別れた」
「え?」
「南先輩の事やろ?」
「まあな...でもそうなん?カッコいい人らしいじゃん」
「知ってんのやろ?大体」
「まあ…ちょっとは」
「ウチもさ…バカやったな。言いよられてついその気になって…そしたらやで、友達にちょっと話したらさ、校内でも他校の女子にも手ぇ出してんのがわかってさ。それも一人二人やないんや」
「オマエ最初からわかんなかったのかよ?らしくねぇじゃん」
「そやな…なんかホラ、ジジさ、中学ん時の音楽室でさ、よく三人でいたやんか」
「あ…ああ」
「ジジが先に行っててさ…二人だけでいる時あったやろ、そんな時いつもウチは入り口で入ろかどうか迷ってたんやで…」
「え?何でだよ」
「何か邪魔してるみたいな…そんな雰囲気やったんや…」
「え?そうなの?」
「嬉しそうに言うなアホ。ただ…あの雰囲気に憧れてただけかもしれんな」
「そう…か…」
「あ、勘違いすんなや、何もなかったで。一ヶ月くらいやし…」
「ん。で、今はどうなんだよ?」
「もうスッキリしてる。何ともないし。それよかあの時の自分にケリ入れたい気分やで」
「なら良かった…あんま気にすんなよ。オマエ案外いいとこあるからさ、いつかいいことあるんじゃね?」
「案外は余計やアホ」
マコはそう言いいながら冗談交じりに肘で軽くボクをつついた。

「うう…痛ぇ…なんつって」

ボクはちょっと昔を思い出して、ふざけて屈みながら、腹を押さえて言った。

「はははっ!そんなワケないやろ!」

今度は昔のマコの笑いだった。それを確認して見上げながら一言。

「歯磨き粉付いてんぞ」

反射的に口許をぬぐうマコ。でもすぐにボクを蹴とばすマネをして大声出した。

「そんなワケあるかー!!オマエな、もう高校生なんや、大人のレディーやぞ」

ボクは走って逃げ出した。

「はははっ!オマエなんか大人のレディーにはほど遠いって!」

マコはボクを追いかけて来て…屋上の端っこまで来て二人並んだ時、マコに言った。

「少しはスッキリした?」

「そやな…今日話し出来て良かったわ」

何となくこの時ハルの顔が頭に浮かんだ。

「な。頼みがある」
「なんや」
「写真一枚撮らせて」
「な、何言ってんのや急に。待ち受けにするつもりなんか」
「そんなワケねぇだろうが」
「いいで、別に」
「悪い」

パシャ

「あ」
「何や」
「泣いてね?」
「アホ言うな」

翌日。昨日撮ったマコの写真を眺めていた。やっぱこれ泣いてる。でも話はこれで終わり。そう思ってたんだけど、そうは行かなかったんだ...

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投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2015-8-3 22:55  更新日時: 2015-8-3 22:56
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3285
 間違えました...
間違えましたので削除しました(すみません)
zizi
投稿日時: 2015-7-6 19:29  更新日時: 2015-7-6 19:29
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3285
 あとがき
お読み頂きありがとうございます。
さて物語も2クール目に突入致しました。新たな登場人物も出現、
どう展開するのか...ちょっとあまり先の方は考えてないのですが
(大丈夫か)それでは今後もゆったり参ります〜

登場人物

時次 航佑 :ジジ。高校1年生。吹奏楽部所属。
桜井 陽代子 :ヒヨコ。中途半端な時期にやって来た転校生。
喜屋武 寛太 :カンちゃん。クラスメイト。ライブハウス「kanders」に出入り。
幸田 春雄 :ハル。クラスメイト。女子の情報収集に余念が無い。
紺野 眞子 :マコ。ジジ中学時代の同級生。(ようやく登場)
ゴリ先生;ホントの名前は城園 梁。クラスの担任。
貫太郎:ライブハウス「Kanders」マスター。結構年配です。
凪子:ライブハウス「Kanders」スタッフ。アラサー位?の美人です。
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