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zizi さんの日記

 
2014
9月 13
(土)
13:03
風に尋ねて 第3話
本文
「風に尋ねて」 第三話


 翌週、もうすぐ中間試験で部活が休みになった。放課後の屋上では今にも雨が降りそうな空模様だ。

「あ〜あ、どうしよ試験。数学全然わかんねぇよ」

ボクは暗澹たる気持ちだった。中学の頃は少し位勉強サボっても何とかなってたのに高校に入った途端にそうは行かなくなった。分からない所をズルズル先伸ばししてるとドンドン分からなくなって行く。でもカンちゃんはあまり気にならないらしい。

「ま。成るようになるデショ。あんま考え込みなさんなって。それよりさ、これからチョイと付き合わね?」
「え?どこ?」
「まあいいから」

カンちゃんは試験前だと言うのにボクをどっかに誘う。でも真っ直ぐ帰って勉強したくなかったのとまだテストまで三日もあるじゃんと自分に言い訳して付いて行った。

電車に乗って、カンちゃんはボクの家の駅の一つ前の駅で降りた。ボクの家に帰る方向だから良かったと思いながら付いていくと、繁華街の方に進んで行き、どうやら見覚えのある場所の階段へ向かう。

「え?カンちゃんここってさ、あの…」
「ライブハウス。kanders」

そう、中学生の頃のちょっとした思い出のある場所だった。呆然と後を続くボクに構わずカンちゃんは平然と《準備中》と札のかかったドアを開く。

「チワーっす」

「あら、カンちゃん」
凪子さんが迎える。ボクは久しぶりだったけどカンちゃんはえらくフレンドリーだ。
「こんにちは、御無沙汰してます...」
ボクは後に続いて入り、小声で挨拶した。
「あれ?え〜と、もしかしてジジ君だっけ?久しぶりじゃない!でもどうして?」
「凪子ネエさん、そんな驚きなさんなって。オレ今ジジと同じ高校に行ってんのよ」
カンちゃんがおどけて言う。ボクは懐かしくなって言った。
「いや、ホラ、ボクが中学の頃来てたライブハウスって」
「ここでしょ。この前の話聞いててそうだろなって思ってた」
「そっか。え?カンちゃんて凪子さんと…」
「あ、勘違いしてない?ホントの姉さんじゃないからね。爺さんの代同士が知り合いみたいでさ、本土に来た時から何かと世話んなっててさ、時々飯食わせて貰ったりしてんだ。俺のオヤジ現場仕事で日本全国アチコチ行ってて殆ど家いないから」
「あ、母さんは亡くなられたんだったね…」
「ん…」
ボクはちょっとまずかったかな、と思って話を変えようと思った。けどカンちゃんは口を開いた。
「オレのバアちゃんってさ、若い頃コザで…って今の沖縄市ね。そこで歌ってたんだって。で、アメリカに渡ったらしいよ。そこでアメリカ人と結婚して母さんが生まれた。...で、しばらくして経営してたレストランが景気悪くなってさ、沖縄に帰って来たんだ。そこで結婚してオレが生まれた。でもオフクロはその後間もなく病気でさ…」
「そっか…」

しばらく沈黙が続いた後、ボクはようやく話題を変えた。

「宮部さんって居たでしょ、最近デビューした。あの人去年ここでライブやったじゃん。あの時観に来てたんだよって、この前話たっけ」
「あん時オレも居たよ」
「え。この前屋上で話した時なんで言わなかったの」
「言うスキなかったじゃん。一方的に話すから」
「そっか」
カンちゃんが悪戯っぽく笑いんながら言う。
「しかしナルホドね〜。あんときピアノの弾いてた娘と同じ中学で知り合いね。ナルホドね」
「その言い方ヤメてくれ」
二人でガハハと笑ってると貫太郎さんが声かけてくれた。
「ジジ君だっけ、お久。カンタ珍しいじゃん、友達連れてくるなんて」
「あ、今日ちょっと試験前だからさ、ここで一緒に勉強でもすっかなって」
「ウソつけ」
「ハハハっ。今日はリハ終わったの」
「いや、今日はライブ入ってないから夕方バーのみ営業だ」
「そう、じゃ、開店までには帰るから」

そう言ってカンちゃんは立ち上がった。そして、隅っこに置いてあったアコースティックギターをひょいと手に取り、ステージに上がったんだ。何すんのってボクは見守ってたら、カンちゃんはちょいちょいとチューニングをした後、おもむろにギターを弾きながら歌ったんだ。

『今日は雨、明日は晴れる
夜が いつでも 明けるように
降り止まない 雨は ないのです』

その歌はとてもボクの胸に響いて来て、ちょっとビックリしながら聴いた。皆は平然と開店の準備をしている。歌い終わってステージから戻って来たカンちゃんに思わず尋ねた。

「すっごい良かった」
「そう?あんがと」
「誰の曲?」
「ん?自分で創った」
「え?まさかオリジナル曲なの?」
「そだよ」

凄い。その事はボクにとって衝撃的だった。カンちゃんは自分で曲創って歌ってるんだ。ボクは今まで音楽といえば曲を聴いて、ちょっと楽器で演奏したり。音楽ってそんな風に接して楽しむもんだと思ってた。自分にも創れるのだろうか?そんな疑問が頭をもたげる。

「どうやったらそんな曲なんて出来んの?」
「あ?ああ、何つうか…そんな事考えた事ねぇけど。感じたまま歌えばいいんじゃね?」
「そうか…」
そんなもんで出来んのかなぁと思いつつ尋ねた。
「そういえばさ、カンちゃんここのステージって勝手に使っちゃっていいの?」
「ああ、マスターには開店前空いてたら勝手にやっていいって使用の許可貰ってっから。気持ちいいよ、スカっとする。ジジもやる?」
「え、いいやボクはとてもそんな…でも使用の許可か…そうか…」

使用の許可って言葉はボクに部活の個人練習での場所の使用の事を思い出させ、何故かあの部屋でピアノを弾いてた転校生の事を連想させた。ホントはあの娘、もっとピアノ弾きたいんじゃないのかな…そんな思いが頭を過る。少し薄暗くなって来て、もうすぐ店がオープンする時刻になりボク達は店を出た。

「じゃな。ジジはちゃんと勉強やっときなよ」
「カンちゃんはいいのかよ。じゃ、また明日」

駅の手前で別れた。外は雨が降り出していた。でも明日は晴れるかな…





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投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2014-9-22 21:27  更新日時: 2014-9-22 21:27
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3285
 Re[2]: キム教授へ
kimuxさんどうも〜!
今回はゆっくりやろうと思ってます。話は数回分書いてますが
前作との違いは最後の部分をどう描くかまだ決まって無い事です。
このペースだと完結までおそらく一年超えそうですが...
まあ無理せず自分も楽しみながらやって行こうと思います。
(と言いつつ途中で駈け足になる可能性も捨てきれず:笑)

では久しぶりにスタジオの片隅での会話から...

---------

zizi監督「キム教授。カンちゃんの不調なPC治したそうですね」
キム教授「うん。使えるモノは使わないと」
zizi監督「九九社長は新しいの買わせたいんじゃないですか」
キム教授「でも今忙しいでしょ。新機種でフィーバーしてるから」

その時...忙しい中九九社長がスタジオを訪れる...

九九社長「ふう〜忙し忙し...あんな早くから並ばなくても...」
zizi監督「九九社長、お忙しそうですね」
九九社長「ジジちゃんさ、あれ見てくれた?」
zizi監督「ええ...愛本六号機ですね...大ヒットおめでとうございます」
九九社長「いいでしょ?そろそろ買いなよ」
zizi監督「ええ...あの...会長はアレ良かったスかね...」
九九社長「あ、おっきい画面ね。生前否定的だったけど」
zizi監督「やっぱ時代でしょうかね。まあいいと思いますけど」
九九社長「うん。時代は移ろうもんだよ...それと時計とかさ、どう?」
zizi監督「いいですけど...あ、でもあれって凄いですよね」
九九社長「あ、リンゴ払いね。凄いでしょ」
zizi監督「非接触決済端末の仕様は...大丈夫です?」
九九社長「...ま。何とかなるんじゃね?」
zizi監督「そ...そうですか...」

じゃあね〜と手を振りながら帰って行く九九社長。
その意気揚々とした後ろ姿を見送りながら、
新機種の大ヒットよりもその利潤をどうやって
製作資金に還元させようかと腹黒く考えるzizi監督であった...
kimux
投稿日時: 2014-9-21 19:25  更新日時: 2014-9-21 19:25
登録日: 2004-2-11
居住地: 地球
投稿数: 6690
 Re: 風に尋ねて 第3話
じわじわ話が進む感じでいいですね〜。
カンちゃん、ほんといいポジションw
zizi
投稿日時: 2014-9-20 17:08  更新日時: 2014-9-20 17:08
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3285
 Re[2]: kankanさんへ
Wキャストお疲れさまでっす。
まあ今はメイク技術も進歩してる...ハズ...
大河ドラマなんて10代後半から晩年まで一人で演じてるし(笑)

あ、音出し会の会場でしたか、何だかいい雰囲気の所みたいですね、
ああいう店持つのも憧れますが維持するのは大変ですよね...

夏休みが終わってか〜、この頃は結構短い間に色んな事
体験して色んな事感じる時代だったような気がします。
スカートの裾...眩い...永遠に...なんつって。

こちらの物語の方は今後もマイペースで進めて参ろうかと思います。
どうもありがとうございました!
kankan
投稿日時: 2014-9-19 18:47  更新日時: 2014-9-19 18:47
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2014
 Re: 風に尋ねて 第3話
カンちゃん、いいポジションとってるなぁ。
しかも、ライブハウスのマスターとWキャストだもんね。
メイクに苦労しまっせ。

それはそうと、忙しくて今はあんま、出入りしてないっすが、
多摩センターの音楽工房。そんな感じなんすよ。
もちろん、マスターは自分ではないっすがね。
ライブハウスや飲食店って、ほんと経営がむじゅかしい。
っと、大人の話になっちまった。

夏休みが終わると、変わることがある。
女性が大人びてくる。ノーメイク女子がちょっとだけ化粧していたりする。
なんじゃ、これぇ。と思ったり、色気を感じたり。
まるで、秋の紅葉のようではないですか。
天高い空、そよぐ風。スカートの裾がまぶしい季節でっす。
zizi
投稿日時: 2014-9-13 13:06  更新日時: 2014-9-13 13:06
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3285
 あとがき
連載小説「風に尋ねて」の第三話、御覧頂き誠に
ありがとうございました。ライブハウス、「kanders」
については前作「Blue mirage」のここで登場し...

http://gbuc.net/modules/d3diary/index.php?page=detail&bid=247&req_uid=2049&mode=category&cid=4

こんな場面も...

http://gbuc.net/modules/d3diary/index.php?page=detail&bid=277&req_uid=2049&mode=category&cid=4


それではまた、宜しくお願い申し上げます。


登場人物(今回はフルネーム有り)

時次 航佑 :ジジ。高校1年生。吹奏楽部所属。
桜井 陽代子 :ヒヨコ。中途半端な時期にやって来た転校生。
喜屋武 寛太 :カンちゃん。クラスメイト。ライブハウス「kanders」に出入り。
幸田 春雄 :ハル。クラスメイト。女子の情報収集に余念が無い。
紺野 眞子 :マコ。ジジ中学時代の同級生。
ゴリ先生;ホントの名前は城園 梁。クラスの担任。
貫太郎:ライブハウス「Kanders」マスター。結構年配です。
凪子:ライブハウス「Kanders」スタッフ。アラサー位?の美人です。

関連楽曲はこちらです〜(敬略称、大変申し訳ありません... )

今日は雨、後に晴れ/kankan
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16018&cid=1

♪爽やかな心を運んで…♪/PIYO
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16019

風に尋ねて TVsize/zizi
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16020&cid=1

今日は雨、後に晴れ/kankan with zizipiyo
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16057&cid=1

♪爽やかな心を運んで…♪ feat.横笛吹代/zizipiyo
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16141&cid=9

風に尋ねて feat.さとみん**/zizi
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16159&cid=1

Rainyday/zizipiyo
http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=16182&cid=17




CM動画はこちらです↓

http://gbuc.net/modules/xootube/xootube_view.php?cid=1&lid=123

それではまた〜
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