zizi さんの日記
2015
10月
18
(日)
08:47
風に尋ねて 第16話
本文
風に尋ねて 第十六話
そして翌日、6月4日を迎えた。ボクは部活が終わると一直線に屋上へ向かった。何だか楽しそうなカンちゃんと、ちょっと緊張気味のそれ以外の皆と合流し茶室の裏に向かう。
ボク達は配置に付く。マコが茶室の裏の池の傍で南先輩の到着を待ち、ハルが校舎の影に立ち見張り役。陽代子ちゃんがはハルと反対側の校舎の裏側から、南先輩がマコと話始めた頃合いを見計らって登場、ボクとカンちゃんは校舎を背に正面にマコが居る池を臨む低い木の植え込みの影に隠れ、ボクは動画撮影のためのケータイを、カンちゃんはハルがスケッチブックの画用紙で作ったドッキリのプラカードを持ってる。でもその時ボクはカンちゃんがに準備してる物が気になる。足元には既に水が汲まれたバケツが置いてある。
「カンちゃん、それ使うつもり?」ボクは声を潜めて聞いた。
「あ?やっぱこれ位やんねぇとつまんないんじゃね?」カンちゃんはニヤリと応えた。
「大丈夫かな?状況次第って事忘れてないよね?」ちょっと不安になる。
「いいっていいて、オレがやるからバッチリ動画撮っときなよ」
カンちゃんは面白そうに言った。南先輩の反応がつまんなかったら...って条件で用意されたバケツで水かぶせるプランを実行する気なのだ。既に陽代子ちゃんは予定の場所に立っている。ボクにはもうどうしようも無かった。
「来た!」
カンちゃんが小さく叫んだ。ボクはケータイの動画をスタートさせる。南先輩はヘラヘラしながら近寄って来る。声は小さくしか聞こえないが辛うじて内容が聞き取れる。
「やあ、連絡くれて嬉しかったよ」
「すみません」
「あのさ、こんな所ってのも何だからさ、ちょっと別の場所行かない?」
「や...あの」
「いいじゃん....二人でさ、もっとゆっくり出来る場所へさ」
「ちょっと待って下さい...」
「オレの気持ちわかってんだろ?オマエしか見えてないって」
よくもまあ抜け抜けと...南先輩の態度に呆れながらも...「今だ!早く来い!」ボクは心の中で呼んだ。そこに陽代子ちゃんが近づく...声かける...見てるとハラハラして心臓が激しく動悸を打つ。
「あれ?先輩こんな所で何してるんですかぁ?」
奇襲成功!ナイスタイミングだった。南先輩は陽代子ちゃんを見て驚いてる。
「あれ、南先輩、誰ですかその人?」陽代子ちゃん、案外名演技だ。
「いや...別に」ちょっと狼狽えてんな。
「ウチとキチンと話しようって言ってましたよね。何なん?」マコの口調が変わった。
南先輩は一瞬固まってたが、陽代子ちゃんの方を振り返り、こう言ったんだ。ボクは思わず構えてたケータイを投げつけてやろうかと思った。
「いや、陽代子ちゃん。それがさ、コイツちょっとシツコくてさ...困ってんのよ〜」
事もあろうかマコに背中向け、親指で後ろを指差しながらそんな事を言った。
「え?どういう事ですか?」陽代子ちゃんも表情が変わった。ただ一人状況が飲めてない南先輩は更に続けた。
「いや〜それがさ、ちょっと一緒に遊び行っただけでさ、彼女気取りされちゃってさ、困ってんのよ」
「何やとコラ」
それまで演技でしおらしくしてたマコの口調が乱暴になった。ヤバい!ボクは思った。過去滅多な事では遭遇しなかった、マコの本気モードの声だったからだ。ああなると何をするかわからない...そんな状態の声だった。ボクはカンちゃんに目で合図し、一緒に飛び出そうと思ったけど、ちょっと待てって制止される。
「もういっぺん言うてみいや」
マコの声が大きくなった。しかし南先輩もここは格好つけないといけない。保身のために反論せざるを得なかったのだろう。
「は?何言ってんの。もうオマエさ、しつけぇんだよ、これ以上オレに付きまとうのヤメてくんねぇか?」
そう南先輩がマコの方を振り返り、言い終わるか言い終わらないかの間だった。マコはつかつかと南先輩に近寄り、無言で足を出した。
「あっ!」と思わずボクが声を出した瞬間、目に入って来たのは...マコが蹴り上げた右膝が見事に南先輩の股間に命中し、声を出したくとも上げられず両手で股間を押さえてうずくまる南先輩の姿だった。
「やるじゃん!見事命中!ガハハ!ほれ、ジジ仕上げ行くぞ!しっかり撮ってろ!」
カンちゃんはこの想定外の成り行きを完全に面白がっている。予定の「ドッキリ」のプラカードを放り投げ、水の入ったバケツを持って走り出した。
「あっ」ボクは驚きながらもケータイを握りしめ一緒に走り出した。と思った途端、カンちゃんは木の根っこにつまづいて、もんどりうって転んでしまったんだ。水を全部ぶちまけたバケツと一緒にひっくり返ったカンちゃんは叫んだ。
「ジジ!復活すっぞ!何とかしろ!」
その時ボクはマコ達の場所に一番近くて、正面を見ると、南先輩はフラフラと立ち上がりながら、片手で股間を押さえたまま、片手を伸ばしてマコの腕を掴んで唸っていた。
「オマエ...何しやがんだよ...」
サスガのマコもやはり女の子だ。こうなると体が固まってしまっている。
「キャ!」さっきとは打って変わって女の子らしい声を上げる。陽代子ちゃんも口元に手をあてて明らかに動転して固まってる。
「ジジー!早くヤツを!」ようやく起き上がりながらカンちゃんが叫ぶ。
「離せや!」ようやくマコがまだ弱々しい南先輩の腕を振り払う。
「こんな事してタダで済むと思うなよ...」
ボクが南先輩の背後まで来て、苦しそうに南先輩が声を絞り出した時、陽代子ちゃんがボクの横に並んだ。一瞬目が合い同時に頷く。阿吽の呼吸って言葉が頭を過る間も無く本当に咄嗟だった。二人同時に手が出たんだ!ボク達は目の前の背中を思いっきり突き飛ばし、結果、南先輩は頭から池に突っ込んて大きな水しぶきを上げた。
その時だった。
「お前ら何やってんだ」遠くでゴリ先生の声が聞こえた。
「オーイ!撤収だー!」続けてハルが叫ぶ声が聞こえる。
「おい!逃げっぞ!」カンちゃんが短く叫ぶ。
それを合図にボクたちは南先輩が池の中でフラ付きながら起き上がるのを視界の端に捉え、その場に背を向けた。遠くにハルがゴリ先生に取っ捕まってるのが見えたがハルはニヤリと笑ってた。それを確認し、ボクは言った。
「ヒヨコ!こっち!」
「ジジ、待って!」
ボクは咄嗟に彼女の手を握り、走り出した!走れ走れ!心はそう叫んでいた。既に起き上がったカンちゃんとマコはボクたちの遥か前方にいて、その逃げ足の速さには舌を巻いた。ボクは彼らをあっと言う間に見失い、足の向くまま屋上へヒヨコと一緒に手を取り逃げる。
その時は南先輩の事とか悪い事したとか、行き先がどこでそこが行き止まりだとかそんな事はどうでも良くて、衝動に突き動かされるようにボク達は一気に走った。余りに急いだため途中で繋いだ手が離れそうになり、ボクはその手をしっかし握り直しいつもの階段を駆け上り、勢いよく扉を開ける。夕暮れ時のこの時間、屋上には誰一人居なかった。屋上に出てからも息を切らし、崩れるように座り込んだ...つもりだったが結果的にコンクリートの床に寝転んでしまった。息が苦しい...ようやくそんな事を感じる余裕が出てきた所で空を見上げたら、夕映えの雲を突き抜けるような飛行機雲が見えた。
「あっ...飛行機雲だ」
ボクはそれを指差そうとして、まだ手を繋いだままだった事に気づいてパッとその手を離した。
「あ...ごめん...」
「いいよ、別に」
ゆっくりと起き上がり、二人して屋上の端っこのフェンスまで行った所でようやう息が整って来た。何だか突然に色んな事が頭の中を駆け抜ける。
「こんな時ってさ、何かさ、言いたい事あったら大声で叫んだらスッキリしたりして」
「ジジのバカー!」
「何でだよ、ヒヨコの方こそ相変わらず性格悪!」
「アハハっ!」
二人声を揃えて笑った。ボクの頭の中にはもう南先輩の姿は無く、言おうとして言えてなかった事が溢れて来る。
「あの時の電話の後...」
「え?いつの話?」
「ほら...奨学生の試験の時の...」
「あれね...」
「ゴメンね、ホントは会いに行きたかったんだ」
しばし沈黙が流れる。
「何よ今更」
彼女はそう言ってふくれっ面したまま向こうを向いた...そしてそのまま言った。
「でも...だったら良かった」
「残念だったね…」
「ダメ元のつもりだったから…スッキリした。」
「元気出しなよ、また…」
また機会はあるよ、その言葉を飲み込んだ。ボクは無責任にも頑張れば何とかなる、大丈夫だよと言い続け、彼女の時間を無駄に浪費させる事に加担してしまった。そんな考えが頭を巡るり無責任な言葉は慎まないと...と思いながら言葉を探しあぐねていると、振り返った彼女の手が、ボクの腕を掴み、その手が震えてるのが伝わる。やはり悔しかったんだ。本当は残念でたまらないんだ。彼女の気持ちを知って、ボクも伝えなきゃって思った。
「良かった」
「何が良かったよ」
彼女は不思議そうな表情を見せる。
「だってさ...」
「良くそんな事言えるわね」
「また一緒に居れるから」
「え?」
「何度も言えないよ」
不思議そうな表情がふと柔らかくなる。とりあえず伝えた。ホッとしたその時ボクは大事な物が無くなっている事に気がついた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「ケータイが無い...」
そして翌日、6月4日を迎えた。ボクは部活が終わると一直線に屋上へ向かった。何だか楽しそうなカンちゃんと、ちょっと緊張気味のそれ以外の皆と合流し茶室の裏に向かう。
ボク達は配置に付く。マコが茶室の裏の池の傍で南先輩の到着を待ち、ハルが校舎の影に立ち見張り役。陽代子ちゃんがはハルと反対側の校舎の裏側から、南先輩がマコと話始めた頃合いを見計らって登場、ボクとカンちゃんは校舎を背に正面にマコが居る池を臨む低い木の植え込みの影に隠れ、ボクは動画撮影のためのケータイを、カンちゃんはハルがスケッチブックの画用紙で作ったドッキリのプラカードを持ってる。でもその時ボクはカンちゃんがに準備してる物が気になる。足元には既に水が汲まれたバケツが置いてある。
「カンちゃん、それ使うつもり?」ボクは声を潜めて聞いた。
「あ?やっぱこれ位やんねぇとつまんないんじゃね?」カンちゃんはニヤリと応えた。
「大丈夫かな?状況次第って事忘れてないよね?」ちょっと不安になる。
「いいっていいて、オレがやるからバッチリ動画撮っときなよ」
カンちゃんは面白そうに言った。南先輩の反応がつまんなかったら...って条件で用意されたバケツで水かぶせるプランを実行する気なのだ。既に陽代子ちゃんは予定の場所に立っている。ボクにはもうどうしようも無かった。
「来た!」
カンちゃんが小さく叫んだ。ボクはケータイの動画をスタートさせる。南先輩はヘラヘラしながら近寄って来る。声は小さくしか聞こえないが辛うじて内容が聞き取れる。
「やあ、連絡くれて嬉しかったよ」
「すみません」
「あのさ、こんな所ってのも何だからさ、ちょっと別の場所行かない?」
「や...あの」
「いいじゃん....二人でさ、もっとゆっくり出来る場所へさ」
「ちょっと待って下さい...」
「オレの気持ちわかってんだろ?オマエしか見えてないって」
よくもまあ抜け抜けと...南先輩の態度に呆れながらも...「今だ!早く来い!」ボクは心の中で呼んだ。そこに陽代子ちゃんが近づく...声かける...見てるとハラハラして心臓が激しく動悸を打つ。
「あれ?先輩こんな所で何してるんですかぁ?」
奇襲成功!ナイスタイミングだった。南先輩は陽代子ちゃんを見て驚いてる。
「あれ、南先輩、誰ですかその人?」陽代子ちゃん、案外名演技だ。
「いや...別に」ちょっと狼狽えてんな。
「ウチとキチンと話しようって言ってましたよね。何なん?」マコの口調が変わった。
南先輩は一瞬固まってたが、陽代子ちゃんの方を振り返り、こう言ったんだ。ボクは思わず構えてたケータイを投げつけてやろうかと思った。
「いや、陽代子ちゃん。それがさ、コイツちょっとシツコくてさ...困ってんのよ〜」
事もあろうかマコに背中向け、親指で後ろを指差しながらそんな事を言った。
「え?どういう事ですか?」陽代子ちゃんも表情が変わった。ただ一人状況が飲めてない南先輩は更に続けた。
「いや〜それがさ、ちょっと一緒に遊び行っただけでさ、彼女気取りされちゃってさ、困ってんのよ」
「何やとコラ」
それまで演技でしおらしくしてたマコの口調が乱暴になった。ヤバい!ボクは思った。過去滅多な事では遭遇しなかった、マコの本気モードの声だったからだ。ああなると何をするかわからない...そんな状態の声だった。ボクはカンちゃんに目で合図し、一緒に飛び出そうと思ったけど、ちょっと待てって制止される。
「もういっぺん言うてみいや」
マコの声が大きくなった。しかし南先輩もここは格好つけないといけない。保身のために反論せざるを得なかったのだろう。
「は?何言ってんの。もうオマエさ、しつけぇんだよ、これ以上オレに付きまとうのヤメてくんねぇか?」
そう南先輩がマコの方を振り返り、言い終わるか言い終わらないかの間だった。マコはつかつかと南先輩に近寄り、無言で足を出した。
「あっ!」と思わずボクが声を出した瞬間、目に入って来たのは...マコが蹴り上げた右膝が見事に南先輩の股間に命中し、声を出したくとも上げられず両手で股間を押さえてうずくまる南先輩の姿だった。
「やるじゃん!見事命中!ガハハ!ほれ、ジジ仕上げ行くぞ!しっかり撮ってろ!」
カンちゃんはこの想定外の成り行きを完全に面白がっている。予定の「ドッキリ」のプラカードを放り投げ、水の入ったバケツを持って走り出した。
「あっ」ボクは驚きながらもケータイを握りしめ一緒に走り出した。と思った途端、カンちゃんは木の根っこにつまづいて、もんどりうって転んでしまったんだ。水を全部ぶちまけたバケツと一緒にひっくり返ったカンちゃんは叫んだ。
「ジジ!復活すっぞ!何とかしろ!」
その時ボクはマコ達の場所に一番近くて、正面を見ると、南先輩はフラフラと立ち上がりながら、片手で股間を押さえたまま、片手を伸ばしてマコの腕を掴んで唸っていた。
「オマエ...何しやがんだよ...」
サスガのマコもやはり女の子だ。こうなると体が固まってしまっている。
「キャ!」さっきとは打って変わって女の子らしい声を上げる。陽代子ちゃんも口元に手をあてて明らかに動転して固まってる。
「ジジー!早くヤツを!」ようやく起き上がりながらカンちゃんが叫ぶ。
「離せや!」ようやくマコがまだ弱々しい南先輩の腕を振り払う。
「こんな事してタダで済むと思うなよ...」
ボクが南先輩の背後まで来て、苦しそうに南先輩が声を絞り出した時、陽代子ちゃんがボクの横に並んだ。一瞬目が合い同時に頷く。阿吽の呼吸って言葉が頭を過る間も無く本当に咄嗟だった。二人同時に手が出たんだ!ボク達は目の前の背中を思いっきり突き飛ばし、結果、南先輩は頭から池に突っ込んて大きな水しぶきを上げた。
その時だった。
「お前ら何やってんだ」遠くでゴリ先生の声が聞こえた。
「オーイ!撤収だー!」続けてハルが叫ぶ声が聞こえる。
「おい!逃げっぞ!」カンちゃんが短く叫ぶ。
それを合図にボクたちは南先輩が池の中でフラ付きながら起き上がるのを視界の端に捉え、その場に背を向けた。遠くにハルがゴリ先生に取っ捕まってるのが見えたがハルはニヤリと笑ってた。それを確認し、ボクは言った。
「ヒヨコ!こっち!」
「ジジ、待って!」
ボクは咄嗟に彼女の手を握り、走り出した!走れ走れ!心はそう叫んでいた。既に起き上がったカンちゃんとマコはボクたちの遥か前方にいて、その逃げ足の速さには舌を巻いた。ボクは彼らをあっと言う間に見失い、足の向くまま屋上へヒヨコと一緒に手を取り逃げる。
その時は南先輩の事とか悪い事したとか、行き先がどこでそこが行き止まりだとかそんな事はどうでも良くて、衝動に突き動かされるようにボク達は一気に走った。余りに急いだため途中で繋いだ手が離れそうになり、ボクはその手をしっかし握り直しいつもの階段を駆け上り、勢いよく扉を開ける。夕暮れ時のこの時間、屋上には誰一人居なかった。屋上に出てからも息を切らし、崩れるように座り込んだ...つもりだったが結果的にコンクリートの床に寝転んでしまった。息が苦しい...ようやくそんな事を感じる余裕が出てきた所で空を見上げたら、夕映えの雲を突き抜けるような飛行機雲が見えた。
「あっ...飛行機雲だ」
ボクはそれを指差そうとして、まだ手を繋いだままだった事に気づいてパッとその手を離した。
「あ...ごめん...」
「いいよ、別に」
ゆっくりと起き上がり、二人して屋上の端っこのフェンスまで行った所でようやう息が整って来た。何だか突然に色んな事が頭の中を駆け抜ける。
「こんな時ってさ、何かさ、言いたい事あったら大声で叫んだらスッキリしたりして」
「ジジのバカー!」
「何でだよ、ヒヨコの方こそ相変わらず性格悪!」
「アハハっ!」
二人声を揃えて笑った。ボクの頭の中にはもう南先輩の姿は無く、言おうとして言えてなかった事が溢れて来る。
「あの時の電話の後...」
「え?いつの話?」
「ほら...奨学生の試験の時の...」
「あれね...」
「ゴメンね、ホントは会いに行きたかったんだ」
しばし沈黙が流れる。
「何よ今更」
彼女はそう言ってふくれっ面したまま向こうを向いた...そしてそのまま言った。
「でも...だったら良かった」
「残念だったね…」
「ダメ元のつもりだったから…スッキリした。」
「元気出しなよ、また…」
また機会はあるよ、その言葉を飲み込んだ。ボクは無責任にも頑張れば何とかなる、大丈夫だよと言い続け、彼女の時間を無駄に浪費させる事に加担してしまった。そんな考えが頭を巡るり無責任な言葉は慎まないと...と思いながら言葉を探しあぐねていると、振り返った彼女の手が、ボクの腕を掴み、その手が震えてるのが伝わる。やはり悔しかったんだ。本当は残念でたまらないんだ。彼女の気持ちを知って、ボクも伝えなきゃって思った。
「良かった」
「何が良かったよ」
彼女は不思議そうな表情を見せる。
「だってさ...」
「良くそんな事言えるわね」
「また一緒に居れるから」
「え?」
「何度も言えないよ」
不思議そうな表情がふと柔らかくなる。とりあえず伝えた。ホッとしたその時ボクは大事な物が無くなっている事に気がついた。
「あれ?」
「どうしたの?」
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投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2015-11-14 21:14 更新日時: 2015-11-14 21:14 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
久しぶりに独り言を書きます。。。 こいういの久しぶりですが。。。
特にご興味ない方もニュース映像でご覧になられた方多いのではないでしょうか、 国産旅客機の初飛行。創ったのはあの三菱重工業。 https://www.youtube.com/watch?v=W5PPW2IUTrI しかしその華々しいニュースの数日間にこのような記事が新聞に... http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/205880 これは...九州は鹿児島に持って来たとの話を聞いて期待してただけに.. 「水の空に眠る」の作者としてこれは大変残念で今後が心配な... ここで思い起こされるのはアメリカなんてこんな事やってんのに... https://www.youtube.com/watch?v=wYuQro3DjOg これはアメリカで毎年行われている「Reno AirRace」の最上級クラス、 「Umlimited class」の模様ですね。飛行機のレースと言えば 現在ではNHKBSでも放映してます「Red Bull Air Race」が有名かと 思いますが、個人的にどちらが見たいかと言われれば断然「Reno」です。 「Red Bull」は一機づつ規定のコースでパイロンを潜り抜けて飛んでの タイムアタック、それはそれでスリリングですしパイロットも研ぎ澄まされた アスリート的な雰囲気で、これはこれで面白いのすが... やはりレースと言うからには同時に飛んで競争する、そんな風景を 見たいモンです。それをヤルのが「Reno AirRace」、 レギュレーションもシンプルで、「レシプロ機であること」 「重量が4,500lb(2,041kg)であること」だけで後は何をやっても 無制限というマサに無差別級のバトルロイヤル的雰囲気。 コースもパイロンを周回するシンプル明快な内容、 主な出場機はレシプロエンジン最後期ジェットエンジンへの 端境期にあった機体、つまり第二次世界大戦末期に登場した機体に 魔改造(エンジン載せ替えたりとか車みたいな事を飛行機にやっとる) を施したモノが周回コースを回ります。流石アメリカ... |
zizi | 投稿日時: 2015-10-18 9:13 更新日時: 2015-10-18 9:13 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
あとがき お読み頂きありがとうございます。本編とは全く関係ありませんが、最近以前から気になっていた小説をようやく読む事が出来ました。R・F・ヤングという方の「たんぽぽ娘」という短編小説です。タイムトラベル物の紹介サイトなんかでいつもむっっちゃ評価が高く、どうやら爽やかロマンス系にタイムトラベルを絡めた作品らしく、もの凄く気になってたのですが収録本は廃刊となっていて長らく読む事が出来ませんでしたが今年になって河出文庫から同タイトルの短編集が出版されておりました。
「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」 そう書かれた帯に期待は膨らみます...市内の大型書店におもむきいざ購入!胸躍らせて一気に読みました! 結論から言いますと...面白かったのは面白かったし良い作品でした。しかし物凄く感動した、とか泣いたとか今まで読んだタイムトラベル物で一番良かったとかいう程では無かったです(本当に申し訳ありませんあくまでも個人的感想です)。どうやら私の中で勝手に期待が膨らみすぎていた事やどうも描写に完全に感情移入し切れない部分もあったような...日本人の感性からすると「マイナス・ゼロ」の方が良かった...ここでふと思いました。 でもそれは長編だから比較するのもちょっと...じゃあ短編でそういう日本の作品あったかと...。 ありました。あったんですよ...恥ずかしげもなく申し上げますが感動して泣いた短編SF時間物(と言えなくも無いと個人的には思います)。朱川湊人さん著の「かたみ歌」から「栞の恋」。TVの「世にも奇妙な物語」で堀北真希さん主演のアレです...これはグっと来ましたねぇ...TVから知って文庫本買ったのですが、どれも切々とした良い作品でした... すみません無駄な話を長々と... 登場人物 時次 航佑 :ジジ。高校1年生。吹奏楽部所属。 桜井 陽代子 :ヒヨコ。中途半端な時期にやって来た転校生。 喜屋武 寛太 :カンちゃん。クラスメイト。ライブハウス「kanders」に出入り。 幸田 春雄 :ハル。クラスメイト。女子の情報収集に余念が無い。 紺野 眞子 :マコ。ジジ中学時代の同級生。(ようやく登場) ゴリ先生;ホントの名前は城園 梁。クラスの担任。 貫太郎:ライブハウス「Kanders」マスター。結構年配です。 凪子:ライブハウス「Kanders」スタッフ。アラサー位?の美人です。 南 一郎:複数の女子に声かけて回ってる先輩。 |
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