zizi さんの日記
2014
3月
15
(土)
05:35
本文
Blue mirage
第22話
2014年 3月-6
そして次の瞬間…
アサミちゃんはボクの胸に顔を埋めて…ボクに体を預けて泣いた。声を出して泣いていた。そのままずっと…ボクはただ、その手を彼女に触れるか触れないかの所に置いたまま、彼女が泣き止むまでそのままにしていた。
どれ位そうしていただろうか…時間が過ぎて、彼女が泣き止んだ時、その時、ボクは彼女の肩に手をあてて体を戻した。彼女は照れ臭そうに涙を拭いながら後ろを向いて服を整えた。
「帰ろうか...」
ボクはようやくそう言った。蛍光灯を点けると先生にバレて怒られちゃうし、もうすっかり暗くなってしまってたから。そして、先生に見つからないようにボクたちはこっそりと一緒に音楽室を出た。この時思わずアサミちゃんの手を握って一緒に走って...裏通用口から学校を出た所でその事に気がついて、二人で照れ笑いしながら手を離した。校門からしばらく南へ下り、東西に別れる道路との交差点まで帰り道は一緒の方向で、そこまで並んでゆっくり歩きながら帰った。二人ともようやく落ち着いて来て、そうなると何だか照れを隠したくて何か話さなきゃ...と思って口を開いた。
「アサミちゃん...」
「ジジ君...」
二人同時に口を開いて思わず顔を見合わせた。
「あっ、ごめん、先にいいよ」
「ジジ君さ...ライブ来てたよね?マコちゃんと」
「えっ?気付いてたの...凄いね、よくわかったね。バンドやってて「Kanders」に出てる先輩がいてさ、その人からチケット手配してもらって...」
「そうだったんだ...ホントはさ...ジジ君には来て欲しかったんだ...」
「ホント?」
「でも...いろんなウソついちゃってたから...とてもそんな事言い出せなくて...」
ボクはその言葉が聞けただけでもう満足だった。
「あのさ...今日の事って...絶対誰にも言わないから...」
「ごめんね...私も。ジジ君との秘密が一つ増えちゃったね...」
「そうだけど...でもボク、どちらも忘れるよ...だからもう気にしないで」
「うん...」
少し言葉が途切れる。ボクは慌てて話題を振った。
「普通さ、こんな時二人で空見ながら『あっ!一番星だ』なんて言うのにね」
「え?あははっ、そうだね、そういえば夕方に見える明るい星が見えないよね」
「宵の明星だよね。あれって金星だったかな」
「ふ〜ん、そうなんだ。星って言うか、惑星なんだね」
「今は明け方に見える時期じゃなかったっけ」
「ふ〜んそうなの?どうして明け方だったり夕方だったりするんだろ?」
「うん、金星って地球の内側を廻ってるからさ、地球から見て西にあるか東にあるかで...」
「あ〜なるほど!流石ジジ君ね...さっぱりわかんない。なんつって」
「あははっ、そうだよね、自分でも良く理解してないから...」
「え〜なにそれ!」
二人で久しぶりに声を出して笑った。本当に久しぶりだった。しばらく笑いあってたけど、ふとアサミちゃんは笑うのをヤメて、真顔に戻って言った。
「...私ね...もうあの音楽室行かないから」
「え?」
「もう受験の事もあるしさ、将来の事もそろそろ真剣に考えなきゃ…」
「そっか...そうだよね...もう三年生になるんだもんね...」
皆自分の事ちゃんと考えてるんだなあと内心少し焦りながら平静さを装って言った。
そしてついに別れ道にさしかかった。学校が終わってしばらく経ったこの時間、人通りはない。ボクは何となく別れ難くて言葉を捜したが出て来ずに、ただ沈黙が流れた。二人向かい合って下を向いてたけど、アサミちゃんの言葉にボクは顔を上げた。
「じゃあね…ありがと」
そう言った次の瞬間。彼女はボクの唇にそっとキスをした。
「マコちゃんには内緒だよ…」
彼女は...はにかみながらそう言うと、くるりと振り返って帰って行った。ボクはただ黙って、その後ろ姿が見えなくなるまでその場に突っ立っていた。風はまだ冷たかったけどどこか春風を感じさせ、ちっとも苦痛ではないどころか心地良くさえ感じていた...
第22話
2014年 3月-6
そして次の瞬間…
アサミちゃんはボクの胸に顔を埋めて…ボクに体を預けて泣いた。声を出して泣いていた。そのままずっと…ボクはただ、その手を彼女に触れるか触れないかの所に置いたまま、彼女が泣き止むまでそのままにしていた。
どれ位そうしていただろうか…時間が過ぎて、彼女が泣き止んだ時、その時、ボクは彼女の肩に手をあてて体を戻した。彼女は照れ臭そうに涙を拭いながら後ろを向いて服を整えた。
「帰ろうか...」
ボクはようやくそう言った。蛍光灯を点けると先生にバレて怒られちゃうし、もうすっかり暗くなってしまってたから。そして、先生に見つからないようにボクたちはこっそりと一緒に音楽室を出た。この時思わずアサミちゃんの手を握って一緒に走って...裏通用口から学校を出た所でその事に気がついて、二人で照れ笑いしながら手を離した。校門からしばらく南へ下り、東西に別れる道路との交差点まで帰り道は一緒の方向で、そこまで並んでゆっくり歩きながら帰った。二人ともようやく落ち着いて来て、そうなると何だか照れを隠したくて何か話さなきゃ...と思って口を開いた。
「アサミちゃん...」
「ジジ君...」
二人同時に口を開いて思わず顔を見合わせた。
「あっ、ごめん、先にいいよ」
「ジジ君さ...ライブ来てたよね?マコちゃんと」
「えっ?気付いてたの...凄いね、よくわかったね。バンドやってて「Kanders」に出てる先輩がいてさ、その人からチケット手配してもらって...」
「そうだったんだ...ホントはさ...ジジ君には来て欲しかったんだ...」
「ホント?」
「でも...いろんなウソついちゃってたから...とてもそんな事言い出せなくて...」
ボクはその言葉が聞けただけでもう満足だった。
「あのさ...今日の事って...絶対誰にも言わないから...」
「ごめんね...私も。ジジ君との秘密が一つ増えちゃったね...」
「そうだけど...でもボク、どちらも忘れるよ...だからもう気にしないで」
「うん...」
少し言葉が途切れる。ボクは慌てて話題を振った。
「普通さ、こんな時二人で空見ながら『あっ!一番星だ』なんて言うのにね」
「え?あははっ、そうだね、そういえば夕方に見える明るい星が見えないよね」
「宵の明星だよね。あれって金星だったかな」
「ふ〜ん、そうなんだ。星って言うか、惑星なんだね」
「今は明け方に見える時期じゃなかったっけ」
「ふ〜んそうなの?どうして明け方だったり夕方だったりするんだろ?」
「うん、金星って地球の内側を廻ってるからさ、地球から見て西にあるか東にあるかで...」
「あ〜なるほど!流石ジジ君ね...さっぱりわかんない。なんつって」
「あははっ、そうだよね、自分でも良く理解してないから...」
「え〜なにそれ!」
二人で久しぶりに声を出して笑った。本当に久しぶりだった。しばらく笑いあってたけど、ふとアサミちゃんは笑うのをヤメて、真顔に戻って言った。
「...私ね...もうあの音楽室行かないから」
「え?」
「もう受験の事もあるしさ、将来の事もそろそろ真剣に考えなきゃ…」
「そっか...そうだよね...もう三年生になるんだもんね...」
皆自分の事ちゃんと考えてるんだなあと内心少し焦りながら平静さを装って言った。
そしてついに別れ道にさしかかった。学校が終わってしばらく経ったこの時間、人通りはない。ボクは何となく別れ難くて言葉を捜したが出て来ずに、ただ沈黙が流れた。二人向かい合って下を向いてたけど、アサミちゃんの言葉にボクは顔を上げた。
「じゃあね…ありがと」
そう言った次の瞬間。彼女はボクの唇にそっとキスをした。
「マコちゃんには内緒だよ…」
彼女は...はにかみながらそう言うと、くるりと振り返って帰って行った。ボクはただ黙って、その後ろ姿が見えなくなるまでその場に突っ立っていた。風はまだ冷たかったけどどこか春風を感じさせ、ちっとも苦痛ではないどころか心地良くさえ感じていた...
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投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2014-3-24 22:40 更新日時: 2014-3-24 22:40 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
Re: kimuxさんへ 3月はやはり皆様お忙しいですよね。私もちょっと忙しいのですが
先に書きだめしていたので何とか続けられてます(笑) あ、19話〜22話辺りはちょっとしたクライマックス的な感じなので 続けて読んだ方が良さげです。お忙しい中どもありがとうございました! 次回最終回。また御時間ありましたら宜しくお願い致します。 |
kimux | 投稿日時: 2014-3-23 15:24 更新日時: 2014-3-23 15:24 |
登録日: 2004-2-11 居住地: 地球 投稿数: 6943 |
Re: Blue mirage 第22話 このところ忙しくて、この22話に気づかずにいて、23話を読んでしまいました。
肝心なところを飛ばしちゃいませんね (^^; いや〜、青春だなぁ。 |
zizi | 投稿日時: 2014-3-19 22:16 更新日時: 2014-3-19 22:16 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
Re[2]: kankanさんへ おお、読み返して頂きどうもありがとうございます!ええ私もありませんとも〜(爆)
ジジ少年。どんな気持ちだったのか自分にはこんな体験勿論ありませんので想像するしかありませんが...お。kankanさんならそこで抱き締めてますか...しかしこの千歳一遇のチャンスを逃した(のか)ジジ少年。これから大人になってこの時の事を思い出した時には感傷的になるのかそれとも地団駄踏んで後悔するのか... スバらしきかな青春。残り僅かですが宜しくお願いしまっす! |
kankan | 投稿日時: 2014-3-19 0:33 更新日時: 2014-3-19 0:33 |
TheKanders 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
Re: Blue mirage 第22話 第19話あたりから読み返しながら、22話まで読みましたです。
えぇ。kankan、一度もこんなファーストキス経験してない。(。。。たぶん) 最初が女性から唇にチュッなんて。 ものすごく、ビビビってきたんだろうなぁ。 それは、きっとどんなディープ・キスより刺激的だったと想像するっす。 もう、DJ.kankanにはなんともコメントできない境地。 じじは、もうオトナへの一歩を歩みだしているっすね。 kankanなら、ブラウスのボタンを外したところで抱き締めてなぁ。 青春って、スンバラスィーなぁ。 大詰め、期待っす。 |
zizi | 投稿日時: 2014-3-18 22:06 更新日時: 2014-3-18 22:06 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
友永隊、頼んだわよ! 監督「山口少将は阿部少将の命令を待たずして米空母艦隊に挑んだんだ。間合いを詰めて、敵が攻撃隊を収容するであろう時間を狙って攻撃隊を発艦させる」
鈴木「でもあまり数はいないですよね」 監督「うん、第一次攻撃は艦爆18機、戦闘機6機。しかし寡数ながらも米空母ヨークタウンを攻撃、爆弾3発を命中させる」 佐藤「アメリカ側も迎撃して来たんですよね。しかし直撃弾は与えた。それで撃沈?」 監督「はしなかった。先に言ったダメージコントロールの能力が高かったんだ。日本側は気付かなかったが被害を見事最小限に食い止めて航行を続ける。おまけに攻撃隊の被害が大きく艦爆13、戦闘機4機を失う」 鈴木「それは...さすがに闘将多聞丸も戦意を挫かれたでしょうかね」 監督「いや。飛龍の戦いはまだ終わらない。この絶望的に劣勢の中、再度攻撃隊を繰り出す。今度の攻撃隊は更に少なく艦攻10機、戦闘機6機しかいない。この攻撃隊の隊長、友永大尉は最初にミッドウェー島の基地を攻撃した時の隊長で、「第二次攻撃の要あり」と打電して来た人物だ。友永大尉の九七艦攻はこの時被弾し燃料タンクに損傷を受けており、片道分の燃料しか積めなかった。この時劇的な言葉のやりとりがあった...という物語もあるが、実際には結構さらりと出撃したらしい」 佐藤「う〜ん...」 監督「で、再度米空母を発見、攻撃する。友永機はこの時...最後は被弾炎上し、米空母艦橋付近に激突したと伝えられている。この攻撃隊が放った魚雷は2本が命中。実は日本側は最初攻撃した空母と別の艦と思っていたがこれは実は被害を食い止め鎮火した同じヨークタウンだった。しかし今度は航行不能となり総員退艦、後に日本の伊号潜水艦が放った魚雷により沈没した」 鈴木「今度も日本側の被害は...」 監督「大きかった。30機位の迎撃を受けながら命中弾を与えたものの、半分しか戻って来れなかった」 佐藤「これではもう多聞丸、ホントに引き返そうと...思わないんですよね」 監督「まだまだ。しかしさすがに稼働機が少なくなってきたしもう全員疲労困憊だ。昼間だし発見されやすく敵も待ち構えている。そこで山口少将は薄暮攻撃を考えたんだが...やはり米側が黙ってこれを見過ごすはずもなく反撃を受ける。飛龍は相次いで米艦上爆撃機の攻撃を受け、ここまで見事な操艦で攻撃を避け続けて来たが、とうとう力尽きてしまう...とうとう4発の直撃弾を受け大破してしまう。消火の努力が続けられたが手のほどこしようが無くなり総員退艦。最後は味方駆逐艦の魚雷により処分される。山口少将は退艦をすすめられるがこれを固辞、加来艦長と共に艦に残り。飛龍と運命を共にした」 鈴木「壮絶な最期ですね...ミッドウェー島は今?」 監督「特に何もない。おそらく先の大戦が無かったら日本でこんなに名前を知られる事は無かっただろう。今はアホウドリの繁殖地となっている」 佐藤「アホウ...何やら象徴的な...」 ※ zizi注)海戦の数値や記録の解釈を巡っては様々な種類の記述や意見があります。つきましては、ここで書かせて頂いた内容についてはあくまでも大体こんな感じだった...という参考程度に考えて頂ければ...というコトで宜しくお願い申し上げます。 |
zizi | 投稿日時: 2014-3-15 5:40 更新日時: 2014-3-15 19:20 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
あとがき なのです!それでは残り二回。宜しくお願い申し上げます。
関連楽曲はこちらです。(勝手にスンマセン) Miragegazer/zizi【第ニ期OP曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15897&cid=1 Farewell/zizi【第ニ期ED曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15926&cid=58 She Was Briting/kankanさん【第一期OP曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15661&cid=8 春風 feat kayumai/zizi feat.kayumai【第一期ED曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15775&cid=58 Mr. DJ/kankanさん【【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15560&cid=1 瞳の向こう- for Blue Mirage -/kankanさん【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15770&cid=1 BLUE MIRAGE/Asakoさん曲ziziアレンジver 【イメージテーマ曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15470&cid=1 バックナンバーはこちらです。 http://gbuc.net/modules/d3diary/index.php?req_uid=2049&mode=category&cid=4 登場人物 ジジ:無気力な中学二年生。音楽室で隣のクラスの女の娘に一目ボレします。 アサミ:ジジの隣のクラスの女の娘。音楽室でピアノを弾いている。ジジと少しづつ心を通わすように..なるのか? マコ:ジジの隣の席の女子。ジジとはいつもケンカばかりしている女子。天敵なのか...? 貫太郎:ライブハウス「Kanders」マスター。結構年配です。 凪子:ライブハウス「Kanders」スタッフ。アラサー位?の美人です。 ヤスオ先輩:ジジの先輩。バンド「Potmans」で活動中。現在大学生です。 ユーイチ:ジジの親友、学級委員の秀才。 須倉先生:ジジのクラスの担任の先生。あだ名はスクラップ先生。 なり子先生:教育実習の可愛らしい先生。(7話) 樋渡先生:教育実習のカッコいい先生。(7話) 宮部先輩:イケメンで音楽センス抜群。ジジ少年最大のライバル...なのか? 三好絵理香:宮部先輩のバンドのマネージャー役。二十歳そこそこ。 キム:貸しスタジオ「kimux」マスター。ウクレレが得意。 また、この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません。 |
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