zizi さんの日記
2014
3月
8
(土)
06:24
本文
第21話
2014年 3月-5
翌週、三学期最後の日を迎えた。
ボクはあの音楽室での出来事以来何もする気になれず、終業式が終わるとどこにも出かけずに家に帰って不貞寝していた。そしたらその日の夕方電話が鳴ったんだ。母さんに呼ばれて受話器を取った。
「もしもし...あ...アサミちゃん?」
「ジジ君...音楽室に来て。今すぐ」
「え?今から?」
「…うん」
「…わかった、行くよ」
ボクは何が何だかわからなかったが、怪訝そうな顔をする母さんにユーイチの家に行くとウソを言ってとにかく家を出た。学校裏の通用口から入って音楽室に着いて、扉を開けた。蛍光灯は点いてなかったけど鍵はかかってなくて、薄暗くなった音楽室にアサミちゃんがいた。学校で見る私服姿にこの期に及んでドキっとした。ボクが音楽室に入って、何も言えずにいると、彼女は俯いたまま静かに口を開いた。
ピアノの椅子に座ったままの彼女、小さな声だった。
「私ね、宮部先輩にね...小学生の頃初めてピアノ聴いた時からずっと憧れてたんだ...」
「え?...その...ごめん...」
「何で謝るの?」
「いや、だってこの前ボク、動揺してて…悪かったなって...」
「そんな事ない…だってジジ君の言った通りだから」
彼女は殆ど表情を出さずに話を続けた。
「どこまで話してたっけ。宮部先輩、高校生になるとバンドやるようになって、結局プロ目指して中退しちゃってさ...それで、どうしてもライブで一曲だけバラードやりたいから私にピアノ弾いてくれないかって去年の暮れ頃誘われて。その事お母さんに話たら、ひどく叱られちゃってね...だからジジ君家に呼んで安心させて、カムフラージュしたの。ごめんね...だってジジ君真面目なんだもの...私は宮部先輩の事が好きだったから...」
この言葉はボクの心に突き刺さった。まだそんな痛みを感じる余地があった事に我ながら少し驚きを感じた。
「でもね、最初のバンドのミーティングで先輩のアパートに行った時、すぐに分かったわ。マネージャー役の三好さん?だっけ。この女の人と恋人同士なんだって。私、あの人キライ。私を値踏みするように見るのよ。あの人にとっては皆宮部先輩の引き立て役なのよね...でも私は、宮部先輩に信頼されてる事が嬉しくって...ただそれだけでいいんだって思ってた。でも、この前さ、ジジ君に...」
「え?…あの時は…ゴメン…」
「いいの。私も、宮部先輩には子供扱いされてるって分かってて、ただ一度だけ一緒に演奏出来ればいいんだ、良い思い出になるしそれだけで満足だって思ってた...つもりだったの。でもこの前ジジ君に色んな事言われてさ...自分にウソついてるって気付いちゃった。私、私は...あの三好さんに嫉妬してる。もしかしから恋人なんて私の思い過ごしで...そして、まだ宮部先輩が自分の方振り向いてくれるんじゃないかって期待してる...その事に気付いちゃって...もういてもたってもいられなくなっちゃって....」
彼女は立ち上がった。
「ジジ君、この前私の事好きって言ったよね...」
彼女はこちらを向いた。
「え?」
ボクは何て言ったらいいのか分からなくなっていた。
「それで今日ね…先輩のアパート行ったの。あの人学校辞める時に家も出て行ってるのよ…って言ってもボロボロのアパートなの。まだ稼いでないからね...どうしても確かめたい事があってね…ケーキなんか買ってっちゃってさ...そしたらさ...下の駐車場には見覚えのあるワゴン車が止まってた。あの女の人も居るってわかった...」
彼女は俯いていた顔を上げた。真っ正面に視線を据えて、話を続けた。
「呼び鈴を押したの…中からは女の人の喘ぐような声が聞こえてて...私にだって二人が何やってるのかわかったわ...それでも何度も呼び鈴を押したのよ...そしたら先輩、少しだけドア開けて…困ったような顔してた...その時ドアの隙間から見えたの。奥にあの三好さんがいて…裸だった…私....持ってたケーキ落っことして...踏んづけて帰って来ちゃった...」
その時彼女の手が動いてコートとジャケットを脱ぎ、ピアノの椅子に掛けた。
「アサミちゃん、もういいよ言わなくて...辛いよね...もうわかったから...」
ボクは辛うじて口が動いた。
「...もう子供なんかじゃないのに...」
そう言いながら彼女はゆっくりとブラウスのボタンをはずした。そしてゆっくりとボクの方に近づいて来た。
「私たち、もう大人だよね…」
彼女は一つ一つゆっくりと...上から順番にボタンをはずして行く。ボクはもうすっかり気が動転して...自分の心臓の音がこれまでに無い位大きな音を立てていた。五個目のボタンを外した時、彼女はボクのすぐ近くにいた。外したボタンの隙間から少しだけ下着が覗いた。
「...だから…いいんじゃないかな…」
ボクのすぐ目の前、手を少し動かせば触れてしまう程の位置に立ったアサミちゃんのこの言葉がボクの心のタガを外してしまいそうになり、頭の中で何かが弾け飛んだような感覚を覚えた。この時、ボクの中で何かと何かが激しく戦っていた。そして...
2014年 3月-5
翌週、三学期最後の日を迎えた。
ボクはあの音楽室での出来事以来何もする気になれず、終業式が終わるとどこにも出かけずに家に帰って不貞寝していた。そしたらその日の夕方電話が鳴ったんだ。母さんに呼ばれて受話器を取った。
「もしもし...あ...アサミちゃん?」
「ジジ君...音楽室に来て。今すぐ」
「え?今から?」
「…うん」
「…わかった、行くよ」
ボクは何が何だかわからなかったが、怪訝そうな顔をする母さんにユーイチの家に行くとウソを言ってとにかく家を出た。学校裏の通用口から入って音楽室に着いて、扉を開けた。蛍光灯は点いてなかったけど鍵はかかってなくて、薄暗くなった音楽室にアサミちゃんがいた。学校で見る私服姿にこの期に及んでドキっとした。ボクが音楽室に入って、何も言えずにいると、彼女は俯いたまま静かに口を開いた。
ピアノの椅子に座ったままの彼女、小さな声だった。
「私ね、宮部先輩にね...小学生の頃初めてピアノ聴いた時からずっと憧れてたんだ...」
「え?...その...ごめん...」
「何で謝るの?」
「いや、だってこの前ボク、動揺してて…悪かったなって...」
「そんな事ない…だってジジ君の言った通りだから」
彼女は殆ど表情を出さずに話を続けた。
「どこまで話してたっけ。宮部先輩、高校生になるとバンドやるようになって、結局プロ目指して中退しちゃってさ...それで、どうしてもライブで一曲だけバラードやりたいから私にピアノ弾いてくれないかって去年の暮れ頃誘われて。その事お母さんに話たら、ひどく叱られちゃってね...だからジジ君家に呼んで安心させて、カムフラージュしたの。ごめんね...だってジジ君真面目なんだもの...私は宮部先輩の事が好きだったから...」
この言葉はボクの心に突き刺さった。まだそんな痛みを感じる余地があった事に我ながら少し驚きを感じた。
「でもね、最初のバンドのミーティングで先輩のアパートに行った時、すぐに分かったわ。マネージャー役の三好さん?だっけ。この女の人と恋人同士なんだって。私、あの人キライ。私を値踏みするように見るのよ。あの人にとっては皆宮部先輩の引き立て役なのよね...でも私は、宮部先輩に信頼されてる事が嬉しくって...ただそれだけでいいんだって思ってた。でも、この前さ、ジジ君に...」
「え?…あの時は…ゴメン…」
「いいの。私も、宮部先輩には子供扱いされてるって分かってて、ただ一度だけ一緒に演奏出来ればいいんだ、良い思い出になるしそれだけで満足だって思ってた...つもりだったの。でもこの前ジジ君に色んな事言われてさ...自分にウソついてるって気付いちゃった。私、私は...あの三好さんに嫉妬してる。もしかしから恋人なんて私の思い過ごしで...そして、まだ宮部先輩が自分の方振り向いてくれるんじゃないかって期待してる...その事に気付いちゃって...もういてもたってもいられなくなっちゃって....」
彼女は立ち上がった。
「ジジ君、この前私の事好きって言ったよね...」
彼女はこちらを向いた。
「え?」
ボクは何て言ったらいいのか分からなくなっていた。
「それで今日ね…先輩のアパート行ったの。あの人学校辞める時に家も出て行ってるのよ…って言ってもボロボロのアパートなの。まだ稼いでないからね...どうしても確かめたい事があってね…ケーキなんか買ってっちゃってさ...そしたらさ...下の駐車場には見覚えのあるワゴン車が止まってた。あの女の人も居るってわかった...」
彼女は俯いていた顔を上げた。真っ正面に視線を据えて、話を続けた。
「呼び鈴を押したの…中からは女の人の喘ぐような声が聞こえてて...私にだって二人が何やってるのかわかったわ...それでも何度も呼び鈴を押したのよ...そしたら先輩、少しだけドア開けて…困ったような顔してた...その時ドアの隙間から見えたの。奥にあの三好さんがいて…裸だった…私....持ってたケーキ落っことして...踏んづけて帰って来ちゃった...」
その時彼女の手が動いてコートとジャケットを脱ぎ、ピアノの椅子に掛けた。
「アサミちゃん、もういいよ言わなくて...辛いよね...もうわかったから...」
ボクは辛うじて口が動いた。
「...もう子供なんかじゃないのに...」
そう言いながら彼女はゆっくりとブラウスのボタンをはずした。そしてゆっくりとボクの方に近づいて来た。
「私たち、もう大人だよね…」
彼女は一つ一つゆっくりと...上から順番にボタンをはずして行く。ボクはもうすっかり気が動転して...自分の心臓の音がこれまでに無い位大きな音を立てていた。五個目のボタンを外した時、彼女はボクのすぐ近くにいた。外したボタンの隙間から少しだけ下着が覗いた。
「...だから…いいんじゃないかな…」
ボクのすぐ目の前、手を少し動かせば触れてしまう程の位置に立ったアサミちゃんのこの言葉がボクの心のタガを外してしまいそうになり、頭の中で何かが弾け飛んだような感覚を覚えた。この時、ボクの中で何かと何かが激しく戦っていた。そして...
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投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2014-3-12 22:47 更新日時: 2014-3-12 22:47 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
Re[2]: 須倉先生へ いやどうもすみません!
しかし三好女史、見事に演じてくれました〜!もしかしたらこれをきっかけに芸能界再デビューを目論でいたりするかも... ネットであの女優誰?と噂になる→昔アイドルだった事発覚→当時の動画出回る→バラエティに登場→CD出す みたいな想定がなされているかもしれません(笑) その時は是非須倉プロデューサーのバックアップが必要不可欠となること必至です。さてジジくんの...DT力...思わずググっみました(爆)さてさてこの絶好の機会を...ヘタレなのかそれとも...次回乞うご期待!? |
SCRAPS | 投稿日時: 2014-3-11 23:32 更新日時: 2014-3-11 23:32 |
ターミネーター 登録日: 2007-1-27 居住地: 宮崎市 投稿数: 1424 |
Re: Blue mirage 第21話 はぁ〜……。
おい三好、何してくれてるんだよ、三好。 いたいけな少女の耳に、君の喘ぎ声聞かせるなんて……。 僕は君の親御さんに顔向けできないよ。 って、おっとっと。 三好はあくまで架空の(私とZIZIさんの妄想中の)人物です。(笑) GBUC内で時々活動している架空領域の音楽家、須倉歩のマネージャーという設定で。しかし最近は女優業にまで手を出しているようでちょっと調子のってんじゃないの。 ジジくん、安定のDT力。これからも大切にしてほしいものです。 切なすぎて苦しくなりますね。 物語はどんなふうに着地するのでしょう。見守ります。 |
zizi | 投稿日時: 2014-3-8 6:29 更新日時: 2014-3-8 6:29 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
あとがき DJ.kankanさん、ジジ少年へのアドバイスありがとうございます!
マサに人生とはチョコレートボックスのような物、これからどう 転がって行くのでしょうか...予告しておきますとこの物語は 2クール、24話で終了する予定となっております。 それでは以下次号。宜しくお願い申し上げます! 関連楽曲はこちらです。(勝手にスンマセン) Miragegazer/zizi【第ニ期OP曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15897&cid=1 Farewell/zizi【第ニ期ED曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15926&cid=58 She Was Briting/kankanさん【第一期OP曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15661&cid=8 春風 feat kayumai/zizi feat.kayumai【第一期ED曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15775&cid=58 Mr. DJ/kankanさん【【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15560&cid=1 瞳の向こう- for Blue Mirage -/kankanさん【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15770&cid=1 BLUE MIRAGE/Asakoさん曲ziziアレンジver 【イメージテーマ曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15470&cid=1 バックナンバーはこちらです。 http://gbuc.net/modules/d3diary/index.php?req_uid=2049&mode=category&cid=4 |
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