zizi さんの日記
2013
11月
23
(土)
09:28
本文
Blue mirage
第12話
2013年 11月 -1
最近少し寒くなって来た。
放課後の音楽室。マコはいない。今日のアサミちゃんのピアノは不安げだった。上手く説明出来ないんだけど...どこか「翳り」を感じる。いつものように弾き終えるのを待って、ボクから口を開いた。
「アサミちゃん、どうしたの?何かあった?」
「え...?どうして?」
「あ...ごめん、何となく...」
「うん...そっか、やっぱジジ君わかっちゃうんだ...実はね...」
アサミちゃんは、ちょっと俯き加減で話始めた。ピアノのレッスンの時に宮部先輩と会って、その時話をしたそうなんだけど、宮部先輩はどうやら高校を中退するって事が確実なんだそうだ。学校を辞めて本格的にプロを目指して音楽活動をやるつもりらしい。高校生だけでやってたバンドから引き抜かれて大人に混じってやってたんだけど、周囲からもその実力を認められて来て、今後は自分で曲作ってギター弾いて歌って、自分自身をもっとPRして行くつもりらしい。高校中退までして、もしも失敗したらって…ボクがそんな事を考えてると、彼女はボクにこんな事を訊いて来た。
「ジジ君はどうして吹奏楽部やめちゃったの?」
「え...ボクは...二年生の時に来た顧問の先生さ、コンクールで良い成績取るためには手段を選ばないって感じでさ...コンクールって55人まで出れるんだよ。でもウチの学校は部員全部合わせて50人もいないから、全員出れるのにさ、選抜して上手い人だけをコンクールに出すって言うんだ...そういう方法もあるんだろうけど、ボクは反対ですって一度話したんだけど、先生はとても考え変えそうじゃなくて...ボクは何だか楽しくなくなっちゃって...」
「ふーん...私は一人でピアノ弾いてるから、その辺りの気持ちがよくわかんないのかもしれないね...宮部先輩は...ピアノだけ弾いてた時よりも、今の方が楽しんでるのかな...」
「いや、ボクも学校やめるなんて考えた事も無いから...よくわかんないけど...その、宮部先輩って人は、自分のやりたい事と周囲から求められてる事が...その、一致してんのかな?」
ボクは内心、宮部先輩の事なんてどうでも良かった。ただ、アサミちゃんがあんまり心配そうな表情で話をするんでほっとけなかっただけだった。
「でもね、ジジ君、どう思う?宮部先輩だったらピアノで良い所の音大にも行けるのに…ちろんバンドで成功してくれたら私も嬉しいんだけど…」
「う〜ん...今までやって来たのが勿体無くも感じるけど...」
「そうなんだよね、ピアノの先生もそう仰ってるわ。勿体ないとは思わないのかって...」
こっちを向いたアサミちゃんは不安そうな表情してた。ボクには宮部先輩が何で今までの努力をここで捨ててしまうのか全く理解出来なかった。しかし口から出た言葉は、ちぐはぐな事だった。
「でも宮部先輩本人がそう言うなら仕方ないんじゃないかな…才能ある人なんでしょ?あの時やってればって後で後悔するよりも」
そして、自分が本心からそう思って言っている訳ではなく、アサミちゃんの不安を取り除こうとして言っている事に少し後ろめたさを感じていた。彼女のちょっと寂しげな表情がボクの胸を締め付けて...取り繕うような事を言ってしまった。
「うん…そうだよね…実は私もそうかなぁって思ってた。やっぱりジジ君に話してよかった。そうだよ、そうだよね…宮部先輩にとってもそっちの方が良いんだよね…」
アサミちゃんは自分に言い聞かせるように言った。
いや…ボクは本当は宮部先輩の事を思って言ったわけじゃない…それどころか、どうやらアサミちゃんの心の中のある部分を占有しているらしいこの先輩に対して、あまり良い心象を描ききれないでいる。どんな人なのかとても気になって仕方ない。
でもその事を口にする事は出来なかずに、その時ボクの中で何かが燻ぶり始めているのを感じていた。
第12話
2013年 11月 -1
最近少し寒くなって来た。
放課後の音楽室。マコはいない。今日のアサミちゃんのピアノは不安げだった。上手く説明出来ないんだけど...どこか「翳り」を感じる。いつものように弾き終えるのを待って、ボクから口を開いた。
「アサミちゃん、どうしたの?何かあった?」
「え...?どうして?」
「あ...ごめん、何となく...」
「うん...そっか、やっぱジジ君わかっちゃうんだ...実はね...」
アサミちゃんは、ちょっと俯き加減で話始めた。ピアノのレッスンの時に宮部先輩と会って、その時話をしたそうなんだけど、宮部先輩はどうやら高校を中退するって事が確実なんだそうだ。学校を辞めて本格的にプロを目指して音楽活動をやるつもりらしい。高校生だけでやってたバンドから引き抜かれて大人に混じってやってたんだけど、周囲からもその実力を認められて来て、今後は自分で曲作ってギター弾いて歌って、自分自身をもっとPRして行くつもりらしい。高校中退までして、もしも失敗したらって…ボクがそんな事を考えてると、彼女はボクにこんな事を訊いて来た。
「ジジ君はどうして吹奏楽部やめちゃったの?」
「え...ボクは...二年生の時に来た顧問の先生さ、コンクールで良い成績取るためには手段を選ばないって感じでさ...コンクールって55人まで出れるんだよ。でもウチの学校は部員全部合わせて50人もいないから、全員出れるのにさ、選抜して上手い人だけをコンクールに出すって言うんだ...そういう方法もあるんだろうけど、ボクは反対ですって一度話したんだけど、先生はとても考え変えそうじゃなくて...ボクは何だか楽しくなくなっちゃって...」
「ふーん...私は一人でピアノ弾いてるから、その辺りの気持ちがよくわかんないのかもしれないね...宮部先輩は...ピアノだけ弾いてた時よりも、今の方が楽しんでるのかな...」
「いや、ボクも学校やめるなんて考えた事も無いから...よくわかんないけど...その、宮部先輩って人は、自分のやりたい事と周囲から求められてる事が...その、一致してんのかな?」
ボクは内心、宮部先輩の事なんてどうでも良かった。ただ、アサミちゃんがあんまり心配そうな表情で話をするんでほっとけなかっただけだった。
「でもね、ジジ君、どう思う?宮部先輩だったらピアノで良い所の音大にも行けるのに…ちろんバンドで成功してくれたら私も嬉しいんだけど…」
「う〜ん...今までやって来たのが勿体無くも感じるけど...」
「そうなんだよね、ピアノの先生もそう仰ってるわ。勿体ないとは思わないのかって...」
こっちを向いたアサミちゃんは不安そうな表情してた。ボクには宮部先輩が何で今までの努力をここで捨ててしまうのか全く理解出来なかった。しかし口から出た言葉は、ちぐはぐな事だった。
「でも宮部先輩本人がそう言うなら仕方ないんじゃないかな…才能ある人なんでしょ?あの時やってればって後で後悔するよりも」
そして、自分が本心からそう思って言っている訳ではなく、アサミちゃんの不安を取り除こうとして言っている事に少し後ろめたさを感じていた。彼女のちょっと寂しげな表情がボクの胸を締め付けて...取り繕うような事を言ってしまった。
「うん…そうだよね…実は私もそうかなぁって思ってた。やっぱりジジ君に話してよかった。そうだよ、そうだよね…宮部先輩にとってもそっちの方が良いんだよね…」
アサミちゃんは自分に言い聞かせるように言った。
いや…ボクは本当は宮部先輩の事を思って言ったわけじゃない…それどころか、どうやらアサミちゃんの心の中のある部分を占有しているらしいこの先輩に対して、あまり良い心象を描ききれないでいる。どんな人なのかとても気になって仕方ない。
でもその事を口にする事は出来なかずに、その時ボクの中で何かが燻ぶり始めているのを感じていた。
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投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2013-11-23 9:36 更新日時: 2013-11-23 9:36 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
付録写真について 付録写真は前回に引き続き築城基地航空祭2013より「Blue impulse」です。
今回のは大空にスモークにより描かれたアートを。題して「青空はキャンバス」シリーズ1〜3です。今年は天候が良く青空に白いスモークが良く映えています。 実際に会場に行って見ると雲が出たりして(小雨の時行った事もあります)いつも良い天気の好条件で見れるワケではないんです。築城は一日中順光状態である事と今年天気が良かったのでこんなん撮れました〜。 |
zizi | 投稿日時: 2013-11-23 9:32 更新日時: 2013-11-23 9:32 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
あとがき ようやく物語中の季節が追いついて来ました。ジジ少年のココロにはなにやら細波が立って来ましたがさてさてどうなります事やら。
関連楽曲はこちらです。(勝手にスンマセン) She Was Briting/kankanさん【第一期OP曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15661&cid=8 春風 feat kayumai/zizi feat.kayumai【第一期ED曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15775&cid=58 Mr. DJ/kankanさん【【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15560&cid=1 瞳の向こう- for Blue Mirage -/kankanさん【劇中挿入歌】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15770&cid=1 BLUE MIRAGE/Asakoさん曲ziziアレンジver 【イメージテーマ曲】 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=15470&cid=1 バックナンバーはこちらです。 http://gbuc.net/modules/d3diary/index.php?req_uid=2049&mode=category&cid=4 登場人物 ジジ:無気力な中学二年生。音楽室で隣のクラスの女の娘に一目ボレします。 アサミ:ジジの隣のクラスの女の娘。音楽室でピアノを弾いている。ジジと少しづつ心を通わすように..なるのか? マコ:ジジの隣の席の女子。ジジとはいつもケンカばかりしている女子。天敵なのか...? 貫太郎:ライブハウス「Kanders」マスター。結構年配です。 凪子:ライブハウス「Kanders」スタッフ。アラサー位?の美人です。 ヤスオ先輩:ジジの先輩。バンド「Potmans」で活動中。現在大学生です。 ユーイチ:ジジの親友、学級委員の秀才。 須倉先生:ジジのクラスの担任の先生。あだ名はスクラップ先生。 なり子先生:教育実習の可愛らしい先生。(7話) 樋渡先生:教育実習のカッコいい先生。(7話) 宮部先輩:イケメンで音楽センス抜群。ジジ少年最大のライバル...なのか? また、この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません。 それではまた次回。 |
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