zizi さんの日記
2013
1月
5
(土)
20:05
本文
連載小説「水の空に眠る」の第九話です。
本年も宜しく御願い申し上げます。
れまでの経緯、バックナンバー及び外伝、関連楽曲等は下記御参照頂ければと思います。
第一話〜第七話
「水の空に眠る」/yuuichikさん
「君十七の月ほの暗く」/yuuichikさんの外伝曲
「À la fracture de jour」/SCRAPSさん
「彼方から」/ziziの外伝曲
かんなぎの空 〜「水の空に眠る」main title/zizi
予告編【Youtube 高解像度版】
主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。
樋渡干記 大陸帰りの従軍記者。過去経歴に謎の部分有り。
シオン 寛太が漂着した村の美しい娘
笹子 古ぼけた写真に写っていた女性。じじ昔の知人であるらしい。
須倉 歩 気の荒い整備兵
それでは第九話。なぎこは昔の夢を見てしまいます...そしてシオンと寛太は...
雨の詩 (1979+2012) ; yuuichikさん&凪さん
挿入歌にこちらをどうぞ。You're On ; kankanさん
----------------------------------------------------------------------
「水の空に眠る」
第九話 なぎこの回想夢
1945年8月初旬
奄美大島海辺の村
最近の寛太の回復は医師である村長が驚く程に早かった。歩行訓練を始めたかと思うとすぐに松葉杖は不要となり、既に一人で歩けるようになっている。今日も海岸へシオンと共に歩いて行った。
「寛太さん、かなり歩けるようになって来ましたね。」
「ええ、おかげさまで...村長や皆さんに良くして頂いたおかげです。」
「少し休みましょうか。」
「ええ、そうですね。」
二人は海岸に打ち上げられた流木に並んで座った。シオンは先日以来元気が無かったのだが今日は急に寛太に問いかけて来た。
「寛太さん...以前は…恋人なんていらっしゃったんですか?」
「え...?いや...よく覚えてません...」
「あっ、そうですよね...すみません...」
「いえ...いいんです。でもどうして急にそんな事を?」
と言いながらシオンの横顔を見ると頬を涙がつたうのが見えた。どうして良いか判らず寛太は思わず口を滑らせる。
「あの...すみません...恋人が戦死されたって、村長から聞いてしまったんです...本当にお悔やみ申し上げます...」
「いえ、ごめんなさい...でもそれは私だけじゃないんですもの...彼の御両親の事を思うと私なんて...」
しばらく考え込んだ寛太はつい疑問を口にした。
「自分は...ここでこんな事してて良いんでしょうか...」
「寛太さんはまだ怪我人ですよ...」
「でも...自分と同じ年頃の男子は、今もこの時...皆戦地で...」
「そんな脚で...そんな事考えるなんてまだ早いんじゃないですか?」
無理して明るい調子で言ったシオンの方を見た寛太はその口調とは裏腹に今にも泣き出しそうな表情に戸惑いながら言った。
「上手く言えませんが...悲しい時は辛抱しないで...泣いてしまえばいい...」
その言葉を聞き終らないうちにシオンは寛太の胸に顔を埋めて泣いた。寛太は思わずその震える肩を優しく抱きしめた。
少し離れた場所から黄昏行く水平線に沈む夕陽の中、影となる二人の様子を眺めていた村長は納得した様に小さく頷いた。
----------------------------------
1945.年8月初旬
黒猫館
基地の航空隊は直に解隊となるという話だった。基地の人員も減っているようで、黒猫館だけでなく他の店にも客が訪れる事は無くなって来た。そんな時の暑苦しい夜、なぎこは夢を見ていた。夢の中で、子供の頃に亡くなった父親の顔が浮かんでいた。
なぎこが生まれる前、商売が順調で羽振りの良かった父は花柳界に居た母を娶った。一人娘のなぎこは幼い頃母から唄と踊りの手ほどきを受けていた。しかしその後父は信頼していた商売仲間に裏切られ破産し、新たなる希望を求めて満州へ渡った。母は一緒に行くと言ったのだが父は頑として受け容れなかった。その後の運命を悟っていたのかもしれない。結局父は大陸で軍事抗争に巻き込まれて亡くなり、亡骸だけが帰って来た。母は悲嘆に暮れる間も無く働いた。しかし女手ひとつで働きづめた無理がたたり病気がちになり、直に食うに事欠くようになった。なぎこは戦前に学校を卒業するとすぐに働きに出た。家と以前の父の仕事場は横浜にあり、港近くの伝手のある事務所で働く事が出来たが、結局看病の甲斐無く母は亡くなった。その後すぐに戦火が迫る中、なぎこ含め数人の職員は退職せざる得ない状況になった。元々余裕がある職場ではなく、外国との貿易を業としていた会社では最早存続自体が危ぶまれており無理は言えなかった。
次に浮かんだのはあの店...
音楽が好きだったなぎこには職場近くに好きな場所があった。港に立ち寄る外国人も来る、生の音楽を聴く事が出来る「ブルー・マックス」という店で、元はピアノ・バーだったそうだが洋楽を聴かせる専属の楽団も居て、色んな音楽を聴く事が出来た。腕に覚えのある客が楽器を演奏する事もあり、それに合わせてダンスを踊る客も多かった。ところが戦争が始まる前年の母を亡くした直後、統制が厳しくなり国策により閉店せざるを得なくなってしまった。最愛の家族を失い、更に心の拠り所であった場所をも失う事に寂しさを感じながらその最後の夜に一人で立ち寄った。なぎこは地味な服装しか出来なかったが客達は皆最後の夜だと綺麗に着飾っていた。閉店前、最後に青いスーツと赤いドレスを着た端正な顔立ちの日本人男女が華麗に踊っていた姿が凄く印象的で、これで見納めだ、とこっそり一人寂しく店を出て、これからどうしようかと困っていた所をどういう訳かその場に突然現れたじじに誘われ、家の借り手まで見つけて管理してくれるという主と共に黒猫館に来たのだった。
そして母の心配そうな顔が浮かんで消えた後...
寛太と知り合ってしばらく経った頃の景色が見えた。あれは春の暖かさを感じ始めた三月の頃…なぎこは隊務の合間の寛太と基地近くの河原でおち逢っていたのだった。
「最近少し暖かくなって来ましたね...そういえば寛太さん、こちらに来られる以前はどちらにいらっしゃったんですか?」
なぎこがそう問いかけると寛太はいつになく昔の事を語った。
「俺、田舎は北海道で...三人の男兄弟と妹一人の末弟で、家を出るしか無かったッス...軍なら誰にも迷惑かけず食べるに困らないかと思って...水兵になって駆逐艦の乗組員になったんスが、途中から操縦練習生になって飛行機に乗るようになったんス...」
「どうして飛行機に?危険じゃないんですか?それに難しいんでしょう?」
「ええ、何だか艦隊勤務は肌に合わなくて...しがらみも多くて。でも空は良いッス。一度飛び上がれば、空はもう俺だけのモンです...だから一生懸命勉強も訓練もしました。でもようやく一人前になった頃戦争が始まって...俺、最初は飛龍(空母)に乗ってたんス。でも沈んじまって...」
「飛龍って航空母艦でしたか、どこで沈んだんですか?」
「ミッドウェー海戦です...大本営発表じゃ相打ちみたいに言ってたみたいですが、本当は負け戦だったんス...生き残った俺は、その後ラバウルやトラック島で戦って...でも何とか生き残って...転進...って撤退の事ですがね、その挙句内地に戻った時、自分の隊から三四三航空隊とこっちに一人ずつ行けって話になったんスが...同じ部隊の同期に家族持ちが居たんでそいつに譲って自分はこっちに来たんス。」
「え、三四三航空隊って?」
「四国の松山です。剣部隊っていう熟練した搭乗員と優秀な機体をかきあつめた部隊っス...」
「どうして家族持ちの方をそちらに?」
「なぎこさん…俺言わなくちゃいけない事があるっス...」
「え?どうしたんですか、改まって...」
寛太は意を決したようになぎこを見つめた。
「来月、特攻に出撃するっス...」
「...」
なぎこは予感はありながらも最も恐れていた事態を耳にしてすぐに言葉が出なかった。
「司令官...由布さんが...そう命じたの...」
「まあそうですが...あのお方は立派です。上層部にもこの作戦を止める様何度も意見具申されてあるのは基地じゃあ誰でも知ってます。しかしもうそんな事で何とかなるような状況じゃ無いんです...司令官もあれ以上言うと抗命って事で職を解かれる寸前だったみたいッスから...でもそうなると結局他の誰かが来て同じ事をやるだけです。それも出来ないとお考えの様でした。我々に命令を伝える時は苦渋の表情をされてましたから...」
「そうなんですね...ごめんなさい...私...」
「こっちに来るって事は...そういう事だと判ってました。俺、ミッドウェー海戦の後最前線ばかり行かされて...しかも営倉には何度も入れられたりしてて…威張り散らしたりおかしな命令ばかりするような上官には反抗的な態度取ってましたから...」
「そうなん...ですか...」
「こんな事上官に聞かれたらまた殴られますけど...御国の為に死ぬなんて考えてないッス。ただ、故郷の家族や...なぎこさんの為なら...俺、往くっス」
<そんな事...私、いやです>と言ったつもりが言葉にならず、思わず涙が滲んでくる。
「なぎこさん。俺と一緒に空...飛んでみませんか?」
「え?それは...」
なぎこは意味が分からず問いかけた。一緒に死ぬ、という事なのだろうか?しかしそうでは無かった。
「実は…今日の夕方、ほんの20分程度ですが...連絡飛行で飛ぶ複座の偵察機があるッス。こっそり搭乗員達と入れ替わって一緒に空飛んでみませんか?」
「大丈夫なんですか?そんな事して...」
なぎこは心配であったが寛太はいたって真剣であった。今日は自分は隊務が無く黒猫館に行くと言っている。偵察機は連絡飛行の時離陸前に滑走路の端まで行くらしい。その近くにいつも基地をこっそり抜け出す時の通り道があるので、そこまで来てくれたら搭乗員には自分が言い含めておくので、入れ変わる。二人の搭乗員には寛太のツケで黒猫館に行ってもらう。主に上手く話しして他の客に見つからないよう頼んでみる、との事だった。
果たして主は既に寛太の運命を知っているかのようにやけに協力的であった。いさこやまこに言い含めてなぎこに休みを与え、二人の搭乗員が来たら個室に入れ他の客に見られないようにしよう、と約束してくれた。
そして夕刻。寛太に手をひかれ軍服の上着と飛行帽を被ったなぎこは滑走路の外れの抜け道で待機していると、複座の偵察機がゆっくりと滑走しながらこちらに向かってやって来るのが見えた。すると、飛行機を停止させた二人の搭乗員がやおら機から降り、わざとらしく車輪を確認すると異常があるふりをして整備兵を呼んだ。その間に二人は寛太と目で合図を交わすとこちらに向かって走って来る。
「寛太さん、御苦労様です。本日は佐世保鎮撫守に通信筒を落としてくるだけです。それではお楽しみ下さい。」
操縦士はそう言って片目をつぶった。
「おう。すまねぇ。黒猫館ではゆっくりしてくれ。羽目外して見つかるんじゃねえぞ」
「はい。ゆっくりさせて頂きます。」
後輩らしい二人は寛太の申し入れを楽しんでいる様子だった。
「ああ、須倉さん、すまないね、そんな訳で宜しく頼むッス。」
自転車で駆けつけた整備兵がじろりとこちらを睨む。この整備兵は風変わりにも背中にパンパンに膨れたリュックを背負っており、その中から工具を取り出し手馴れた様子で車輪の点検を素早く終えた。
「車輪に違和感を感じたとの事でしたが異常はありませんでした。ただ、心配ですから着陸の際には必ずまたこの場所で一旦静止して下さい。私が確認に参ります。」
須倉はなぎこの姿を見ても何事も無かったかのように平然とした表情で応えたばかりでなく、なぎこが後部座席に座るのを手伝ってくれた。
「それじゃ、定時には必ず戻るから」
そう言って寛太は離陸を始めた。ふわりと体が浮き上がるような感触を覚えると見る見るうちに高度が上がる。地上の景色が段々小さくなって来た。上空で巡航高度に移ると寛太は少しスロットルを絞りなぎこに話かけた。
「どうッスか?空の上は?」
寛太が大きな声で語りかける。機内はかなりうるさかったが発動機の音に負けないようになぎこも大声で返した。
「凄い...とっても良い気持ち...素敵だわ、寛太さん。でも今の方、親切でしたね。」
「ああ、奴は空母に乗ってる頃一緒でしたからね。無愛想ですが良い奴です。」
「そうなんですか...でも空の上から海を見るって、何だか不思議だわ。」
「この蒼穹の空は...どこまでも続いている...なんてね、へへっ。怖くないッスか?」
「いいえ、寛太さんが操縦してるんだもの...安心してるわ」
なぎこはそう言いながら、寛太と飛ぶ、生まれて初めて見る空からの景色を眺めていた。
やがて機は湾を越え、しばらく飛行を続け目的地上空に到達すると高度を落とし通信筒を投下した。
「それじゃ。これから帰投するッス」
「あっ、あっち見て、寛太さん…段々陽が沈んで行きますね…」
「そうですね...俺、この時間帯の空と海の色が一番好きっス…」
「とても綺麗だわ…水平線が紅く染まって行く…」
「ええ、この景色を一度なぎこさんに見てもらいたかったっス…」
群青の海と紅く沈み行く夕陽…黄昏て行く水平線を眺めながら、なぎこは陽が沈む事よりも寛太との飛行がもうすぐ終わりを告げる事に寂しさを感じていた。海上には軍艦や民間船が航行しており、その灯火がきらめく宝石のように美しかった。地上は灯火管制もあり灯りはまばらであったが、なぎこにはとてもかけがえの無い美しい景色に思えた。基地が近づいて来た頃、寛太はなぎこに話かけた。
「俺、なぎこさんに会えてとても嬉しかったっス…もしも戦争のない時代に出会えたらもっと…楽しかっただろうなあって…」
「私もです…寛太さん、私、もしもこの戦争が終わったら…」
段々暗くなって行く空を感じながら、そう言って寛太の方を見ると同じ飛行機に乗っているはずなのに何故か寛太の姿が靄にかすむように遠くなるのを感じた。
「寛太さん、聞こえますか?どうしたんですか?どこへ行くんですか?待って下さい...」
なぎこは何故か不安な気持ちに囚われ思わず手を伸ばした。しかしすぐに近くに居るはずなのにどうしてもその体に触れる事が出来なかった。寛太の背中がどんどん遠ざかり靄の中に薄れて行く...
「寛太さん、助けて...」
なぎこがそう言うと薄れいく後ろ姿が操縦席から振り返った。しかしそれは寛太ではなく何故か黒猫館の主の顔に変わっていた。
<なぎこさんは是非これからも生き抜いて下さい。>
そして、じじは何故か寛太が出撃する前夜の置き手紙に書かれていた一文を口にしたのだった。
「寛太さん、行かないで!」
なぎこは頭に響いた自分の声に驚いて思わず飛び起きた。夢?状況を理解する事にしばし時間を要した。
夢を見てたんだ...私目が覚めたんだ、と気付いて辺りを見廻すといつもの黒猫館の見慣れた風景であった。切ないような安心したような...いくつもの感情が入り交じった何とも言えない想いだった。もう窓の外は明るくなっている。なぎこが起きたのを見て、もう朝の支度を済ませたまこが声をかけてくれた。
「あ、なぎこさんお早うございます!じじさんが何だか話しがあるそうで、みんな座敷に集まってくれって言ってますよー。」
「そう…何だか寝坊しちゃったみたいね…すぐ支度するわね。」
何だか胸騒ぎがする...夢で見た寛太の姿が頭から離れないままなぎこは支度をして座敷に向かった。
-続く-
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この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。 ため息の向こう/SCPAPSさん&凪さん
あとがき
ちょっと補足説明的言い訳。書きながら思ったのですが寛太のキャリアですと(数年の実戦経験ですがこの時期のこの経歴ではベテランの域です)分隊長や教官位になっててもおかしくありません。が、反抗的な態度と営倉入りが何度もあった事などによりここに来るまではそこかしこの基地司令に疎んじられ昇進出来なかった...のかもしれません。さて次回はこの大事な時期にじじはどこかへ出かけようとしています...群像編ラスト、「じじのお出かけ」です。その後はクライマックスへとなだれこむ...かもしれません(相変わらず曖昧)。
本年も宜しく御願い申し上げます。
れまでの経緯、バックナンバー及び外伝、関連楽曲等は下記御参照頂ければと思います。
第一話〜第七話
「水の空に眠る」/yuuichikさん
「君十七の月ほの暗く」/yuuichikさんの外伝曲
「À la fracture de jour」/SCRAPSさん
「彼方から」/ziziの外伝曲
かんなぎの空 〜「水の空に眠る」main title/zizi
予告編【Youtube 高解像度版】
主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。
樋渡干記 大陸帰りの従軍記者。過去経歴に謎の部分有り。
シオン 寛太が漂着した村の美しい娘
笹子 古ぼけた写真に写っていた女性。じじ昔の知人であるらしい。
須倉 歩 気の荒い整備兵
それでは第九話。なぎこは昔の夢を見てしまいます...そしてシオンと寛太は...
雨の詩 (1979+2012) ; yuuichikさん&凪さん
挿入歌にこちらをどうぞ。You're On ; kankanさん
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「水の空に眠る」
第九話 なぎこの回想夢
1945年8月初旬
奄美大島海辺の村
最近の寛太の回復は医師である村長が驚く程に早かった。歩行訓練を始めたかと思うとすぐに松葉杖は不要となり、既に一人で歩けるようになっている。今日も海岸へシオンと共に歩いて行った。
「寛太さん、かなり歩けるようになって来ましたね。」
「ええ、おかげさまで...村長や皆さんに良くして頂いたおかげです。」
「少し休みましょうか。」
「ええ、そうですね。」
二人は海岸に打ち上げられた流木に並んで座った。シオンは先日以来元気が無かったのだが今日は急に寛太に問いかけて来た。
「寛太さん...以前は…恋人なんていらっしゃったんですか?」
「え...?いや...よく覚えてません...」
「あっ、そうですよね...すみません...」
「いえ...いいんです。でもどうして急にそんな事を?」
と言いながらシオンの横顔を見ると頬を涙がつたうのが見えた。どうして良いか判らず寛太は思わず口を滑らせる。
「あの...すみません...恋人が戦死されたって、村長から聞いてしまったんです...本当にお悔やみ申し上げます...」
「いえ、ごめんなさい...でもそれは私だけじゃないんですもの...彼の御両親の事を思うと私なんて...」
しばらく考え込んだ寛太はつい疑問を口にした。
「自分は...ここでこんな事してて良いんでしょうか...」
「寛太さんはまだ怪我人ですよ...」
「でも...自分と同じ年頃の男子は、今もこの時...皆戦地で...」
「そんな脚で...そんな事考えるなんてまだ早いんじゃないですか?」
無理して明るい調子で言ったシオンの方を見た寛太はその口調とは裏腹に今にも泣き出しそうな表情に戸惑いながら言った。
「上手く言えませんが...悲しい時は辛抱しないで...泣いてしまえばいい...」
その言葉を聞き終らないうちにシオンは寛太の胸に顔を埋めて泣いた。寛太は思わずその震える肩を優しく抱きしめた。
少し離れた場所から黄昏行く水平線に沈む夕陽の中、影となる二人の様子を眺めていた村長は納得した様に小さく頷いた。
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1945.年8月初旬
黒猫館
基地の航空隊は直に解隊となるという話だった。基地の人員も減っているようで、黒猫館だけでなく他の店にも客が訪れる事は無くなって来た。そんな時の暑苦しい夜、なぎこは夢を見ていた。夢の中で、子供の頃に亡くなった父親の顔が浮かんでいた。
なぎこが生まれる前、商売が順調で羽振りの良かった父は花柳界に居た母を娶った。一人娘のなぎこは幼い頃母から唄と踊りの手ほどきを受けていた。しかしその後父は信頼していた商売仲間に裏切られ破産し、新たなる希望を求めて満州へ渡った。母は一緒に行くと言ったのだが父は頑として受け容れなかった。その後の運命を悟っていたのかもしれない。結局父は大陸で軍事抗争に巻き込まれて亡くなり、亡骸だけが帰って来た。母は悲嘆に暮れる間も無く働いた。しかし女手ひとつで働きづめた無理がたたり病気がちになり、直に食うに事欠くようになった。なぎこは戦前に学校を卒業するとすぐに働きに出た。家と以前の父の仕事場は横浜にあり、港近くの伝手のある事務所で働く事が出来たが、結局看病の甲斐無く母は亡くなった。その後すぐに戦火が迫る中、なぎこ含め数人の職員は退職せざる得ない状況になった。元々余裕がある職場ではなく、外国との貿易を業としていた会社では最早存続自体が危ぶまれており無理は言えなかった。
次に浮かんだのはあの店...
音楽が好きだったなぎこには職場近くに好きな場所があった。港に立ち寄る外国人も来る、生の音楽を聴く事が出来る「ブルー・マックス」という店で、元はピアノ・バーだったそうだが洋楽を聴かせる専属の楽団も居て、色んな音楽を聴く事が出来た。腕に覚えのある客が楽器を演奏する事もあり、それに合わせてダンスを踊る客も多かった。ところが戦争が始まる前年の母を亡くした直後、統制が厳しくなり国策により閉店せざるを得なくなってしまった。最愛の家族を失い、更に心の拠り所であった場所をも失う事に寂しさを感じながらその最後の夜に一人で立ち寄った。なぎこは地味な服装しか出来なかったが客達は皆最後の夜だと綺麗に着飾っていた。閉店前、最後に青いスーツと赤いドレスを着た端正な顔立ちの日本人男女が華麗に踊っていた姿が凄く印象的で、これで見納めだ、とこっそり一人寂しく店を出て、これからどうしようかと困っていた所をどういう訳かその場に突然現れたじじに誘われ、家の借り手まで見つけて管理してくれるという主と共に黒猫館に来たのだった。
そして母の心配そうな顔が浮かんで消えた後...
寛太と知り合ってしばらく経った頃の景色が見えた。あれは春の暖かさを感じ始めた三月の頃…なぎこは隊務の合間の寛太と基地近くの河原でおち逢っていたのだった。
「最近少し暖かくなって来ましたね...そういえば寛太さん、こちらに来られる以前はどちらにいらっしゃったんですか?」
なぎこがそう問いかけると寛太はいつになく昔の事を語った。
「俺、田舎は北海道で...三人の男兄弟と妹一人の末弟で、家を出るしか無かったッス...軍なら誰にも迷惑かけず食べるに困らないかと思って...水兵になって駆逐艦の乗組員になったんスが、途中から操縦練習生になって飛行機に乗るようになったんス...」
「どうして飛行機に?危険じゃないんですか?それに難しいんでしょう?」
「ええ、何だか艦隊勤務は肌に合わなくて...しがらみも多くて。でも空は良いッス。一度飛び上がれば、空はもう俺だけのモンです...だから一生懸命勉強も訓練もしました。でもようやく一人前になった頃戦争が始まって...俺、最初は飛龍(空母)に乗ってたんス。でも沈んじまって...」
「飛龍って航空母艦でしたか、どこで沈んだんですか?」
「ミッドウェー海戦です...大本営発表じゃ相打ちみたいに言ってたみたいですが、本当は負け戦だったんス...生き残った俺は、その後ラバウルやトラック島で戦って...でも何とか生き残って...転進...って撤退の事ですがね、その挙句内地に戻った時、自分の隊から三四三航空隊とこっちに一人ずつ行けって話になったんスが...同じ部隊の同期に家族持ちが居たんでそいつに譲って自分はこっちに来たんス。」
「え、三四三航空隊って?」
「四国の松山です。剣部隊っていう熟練した搭乗員と優秀な機体をかきあつめた部隊っス...」
「どうして家族持ちの方をそちらに?」
「なぎこさん…俺言わなくちゃいけない事があるっス...」
「え?どうしたんですか、改まって...」
寛太は意を決したようになぎこを見つめた。
「来月、特攻に出撃するっス...」
「...」
なぎこは予感はありながらも最も恐れていた事態を耳にしてすぐに言葉が出なかった。
「司令官...由布さんが...そう命じたの...」
「まあそうですが...あのお方は立派です。上層部にもこの作戦を止める様何度も意見具申されてあるのは基地じゃあ誰でも知ってます。しかしもうそんな事で何とかなるような状況じゃ無いんです...司令官もあれ以上言うと抗命って事で職を解かれる寸前だったみたいッスから...でもそうなると結局他の誰かが来て同じ事をやるだけです。それも出来ないとお考えの様でした。我々に命令を伝える時は苦渋の表情をされてましたから...」
「そうなんですね...ごめんなさい...私...」
「こっちに来るって事は...そういう事だと判ってました。俺、ミッドウェー海戦の後最前線ばかり行かされて...しかも営倉には何度も入れられたりしてて…威張り散らしたりおかしな命令ばかりするような上官には反抗的な態度取ってましたから...」
「そうなん...ですか...」
「こんな事上官に聞かれたらまた殴られますけど...御国の為に死ぬなんて考えてないッス。ただ、故郷の家族や...なぎこさんの為なら...俺、往くっス」
<そんな事...私、いやです>と言ったつもりが言葉にならず、思わず涙が滲んでくる。
「なぎこさん。俺と一緒に空...飛んでみませんか?」
「え?それは...」
なぎこは意味が分からず問いかけた。一緒に死ぬ、という事なのだろうか?しかしそうでは無かった。
「実は…今日の夕方、ほんの20分程度ですが...連絡飛行で飛ぶ複座の偵察機があるッス。こっそり搭乗員達と入れ替わって一緒に空飛んでみませんか?」
「大丈夫なんですか?そんな事して...」
なぎこは心配であったが寛太はいたって真剣であった。今日は自分は隊務が無く黒猫館に行くと言っている。偵察機は連絡飛行の時離陸前に滑走路の端まで行くらしい。その近くにいつも基地をこっそり抜け出す時の通り道があるので、そこまで来てくれたら搭乗員には自分が言い含めておくので、入れ変わる。二人の搭乗員には寛太のツケで黒猫館に行ってもらう。主に上手く話しして他の客に見つからないよう頼んでみる、との事だった。
果たして主は既に寛太の運命を知っているかのようにやけに協力的であった。いさこやまこに言い含めてなぎこに休みを与え、二人の搭乗員が来たら個室に入れ他の客に見られないようにしよう、と約束してくれた。
そして夕刻。寛太に手をひかれ軍服の上着と飛行帽を被ったなぎこは滑走路の外れの抜け道で待機していると、複座の偵察機がゆっくりと滑走しながらこちらに向かってやって来るのが見えた。すると、飛行機を停止させた二人の搭乗員がやおら機から降り、わざとらしく車輪を確認すると異常があるふりをして整備兵を呼んだ。その間に二人は寛太と目で合図を交わすとこちらに向かって走って来る。
「寛太さん、御苦労様です。本日は佐世保鎮撫守に通信筒を落としてくるだけです。それではお楽しみ下さい。」
操縦士はそう言って片目をつぶった。
「おう。すまねぇ。黒猫館ではゆっくりしてくれ。羽目外して見つかるんじゃねえぞ」
「はい。ゆっくりさせて頂きます。」
後輩らしい二人は寛太の申し入れを楽しんでいる様子だった。
「ああ、須倉さん、すまないね、そんな訳で宜しく頼むッス。」
自転車で駆けつけた整備兵がじろりとこちらを睨む。この整備兵は風変わりにも背中にパンパンに膨れたリュックを背負っており、その中から工具を取り出し手馴れた様子で車輪の点検を素早く終えた。
「車輪に違和感を感じたとの事でしたが異常はありませんでした。ただ、心配ですから着陸の際には必ずまたこの場所で一旦静止して下さい。私が確認に参ります。」
須倉はなぎこの姿を見ても何事も無かったかのように平然とした表情で応えたばかりでなく、なぎこが後部座席に座るのを手伝ってくれた。
「それじゃ、定時には必ず戻るから」
そう言って寛太は離陸を始めた。ふわりと体が浮き上がるような感触を覚えると見る見るうちに高度が上がる。地上の景色が段々小さくなって来た。上空で巡航高度に移ると寛太は少しスロットルを絞りなぎこに話かけた。
「どうッスか?空の上は?」
寛太が大きな声で語りかける。機内はかなりうるさかったが発動機の音に負けないようになぎこも大声で返した。
「凄い...とっても良い気持ち...素敵だわ、寛太さん。でも今の方、親切でしたね。」
「ああ、奴は空母に乗ってる頃一緒でしたからね。無愛想ですが良い奴です。」
「そうなんですか...でも空の上から海を見るって、何だか不思議だわ。」
「この蒼穹の空は...どこまでも続いている...なんてね、へへっ。怖くないッスか?」
「いいえ、寛太さんが操縦してるんだもの...安心してるわ」
なぎこはそう言いながら、寛太と飛ぶ、生まれて初めて見る空からの景色を眺めていた。
やがて機は湾を越え、しばらく飛行を続け目的地上空に到達すると高度を落とし通信筒を投下した。
「それじゃ。これから帰投するッス」
「あっ、あっち見て、寛太さん…段々陽が沈んで行きますね…」
「そうですね...俺、この時間帯の空と海の色が一番好きっス…」
「とても綺麗だわ…水平線が紅く染まって行く…」
「ええ、この景色を一度なぎこさんに見てもらいたかったっス…」
群青の海と紅く沈み行く夕陽…黄昏て行く水平線を眺めながら、なぎこは陽が沈む事よりも寛太との飛行がもうすぐ終わりを告げる事に寂しさを感じていた。海上には軍艦や民間船が航行しており、その灯火がきらめく宝石のように美しかった。地上は灯火管制もあり灯りはまばらであったが、なぎこにはとてもかけがえの無い美しい景色に思えた。基地が近づいて来た頃、寛太はなぎこに話かけた。
「俺、なぎこさんに会えてとても嬉しかったっス…もしも戦争のない時代に出会えたらもっと…楽しかっただろうなあって…」
「私もです…寛太さん、私、もしもこの戦争が終わったら…」
段々暗くなって行く空を感じながら、そう言って寛太の方を見ると同じ飛行機に乗っているはずなのに何故か寛太の姿が靄にかすむように遠くなるのを感じた。
「寛太さん、聞こえますか?どうしたんですか?どこへ行くんですか?待って下さい...」
なぎこは何故か不安な気持ちに囚われ思わず手を伸ばした。しかしすぐに近くに居るはずなのにどうしてもその体に触れる事が出来なかった。寛太の背中がどんどん遠ざかり靄の中に薄れて行く...
「寛太さん、助けて...」
なぎこがそう言うと薄れいく後ろ姿が操縦席から振り返った。しかしそれは寛太ではなく何故か黒猫館の主の顔に変わっていた。
<なぎこさんは是非これからも生き抜いて下さい。>
そして、じじは何故か寛太が出撃する前夜の置き手紙に書かれていた一文を口にしたのだった。
「寛太さん、行かないで!」
なぎこは頭に響いた自分の声に驚いて思わず飛び起きた。夢?状況を理解する事にしばし時間を要した。
夢を見てたんだ...私目が覚めたんだ、と気付いて辺りを見廻すといつもの黒猫館の見慣れた風景であった。切ないような安心したような...いくつもの感情が入り交じった何とも言えない想いだった。もう窓の外は明るくなっている。なぎこが起きたのを見て、もう朝の支度を済ませたまこが声をかけてくれた。
「あ、なぎこさんお早うございます!じじさんが何だか話しがあるそうで、みんな座敷に集まってくれって言ってますよー。」
「そう…何だか寝坊しちゃったみたいね…すぐ支度するわね。」
何だか胸騒ぎがする...夢で見た寛太の姿が頭から離れないままなぎこは支度をして座敷に向かった。
-続く-
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この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。 ため息の向こう/SCPAPSさん&凪さん
あとがき
ちょっと補足説明的言い訳。書きながら思ったのですが寛太のキャリアですと(数年の実戦経験ですがこの時期のこの経歴ではベテランの域です)分隊長や教官位になっててもおかしくありません。が、反抗的な態度と営倉入りが何度もあった事などによりここに来るまではそこかしこの基地司令に疎んじられ昇進出来なかった...のかもしれません。さて次回はこの大事な時期にじじはどこかへ出かけようとしています...群像編ラスト、「じじのお出かけ」です。その後はクライマックスへとなだれこむ...かもしれません(相変わらず曖昧)。
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投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2013-1-19 21:07 更新日時: 2013-1-19 21:07 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() 監督助手の鈴木と佐藤は昨夜の騒動が収まり安堵の表情を浮かべていた。
鈴木「監督、シオナちゃん見つかって良かったですね。」 佐藤「監督が折れてくれたんで丸く収まりました。」 zizi「そうだな...で、アレどう思うよ?」 鈴木「え?何をです?」 zizi「この先の脚本見せたでしょ?」 佐藤「ハァ...もしかしてあの十△話のあのシーンですか...」 zizi「そうだ...皆にはまだ渡していない...」 鈴木「大丈夫ッスかね...」 zizi「これは...やる。」 佐藤「そうですか...監督、話変わりますが今年の大河はもう意識してないんです?」 zizi「え?ああ、もう全然。よく知らないし。」 佐藤「ホントですか?綾○はるかさん、どうです?」 zizi「全然興味なし。今年のライバルは他にある。」 鈴木「それで...十△話のシーンですが、もしも拒否されたらどうします?」 zizi監督しばし黙考した後。 zizi「役者が演出を拒否するなんて...ならぬことはならぬものです!」 鈴木・佐藤「めっちゃ意識してるじゃないですかぁ---!」 |
kankan | 投稿日時: 2013-1-14 15:13 更新日時: 2013-1-14 15:13 |
TheKanders ![]() ![]() 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
![]() とりあえず、それぞれシオナ搜索に出たが、なんの収穫もないので、一度、ホテルに集まって、情報を整理することとなった。
オマタ「先ほど7時40分。助監督の鈴木様と佐藤様がシオナちゃんに明日の撮影のことで話があると。私は、どうしても席を外してくれということなので、シオナちゃんが来ないでというので、帰りをお待ちしておりました。1時間ほどすると、鈴着様と佐藤様が戻ってきましたので、シオナちゃんのことを覗うと、どうしても行かなければならない所があると言って、どこかへ行っちゃったと言うことです。私はすぐ自分の知っている範囲で連絡をとったのですが、情報は得られませんでした」 鈴木「zizi監督が、寛太さんには自分が説得するから、シオナちゃんにはお前ら助監督がしろというので、明日の撮影では、どうしてもキスシーンが必要だと説得しました。なぁ。佐藤」 佐藤「キスでもなんでも平気だって、言っていたんですよ。でも、急に、走って行っちゃたんです。訳わかんないっすけど。」 なんて話してる現在。深夜0時を回った。シオナが姿を消したのが、宴会直後の8時前。 戸田「事故や事件に巻き込まれていなければ、こんな狭い島ですから見つかるはずですよね」 zizi監督「うーん。なんともはや、寛ちゃんがあんまりにも拒否するから、キスシーンはなしって、九九社長にも納得してもらったし、もう、どうでもいいんだけどねぇ。視聴率、欲しいけど。。。鈴木、佐藤。もう一度、探しに行け」 鈴木・佐藤「はい」 ママ「私も行くわ」 寛太「ママは、いいって。搜索の邪魔になるだけだから。とにかく大人しくしておいて」 ママ「だって、心配で、心配で」 寛太「戸田、お前酒飲んだか?」 戸田「はい。けっこう飲まされました」 寛太「オマタさん。車だしてください」 オマタ「かしこまりました」 寛太「ママ、大丈夫だよ。シオナはすぐ見つかる」 寛太は、ちょっとしたことを思い出した。 シオナは自分から男の子にあまり話さない娘なんだが、一ヶ月前に、撮影の合間に村の男の子と話していた。妙だなと思った。 そして、正直で率直な娘だから、監督やスタッフや村の人々への不満をぐだぐだ言っていた。しかし、彼については何も話さなかった。 漁師の息子だ。あの家だ。 これだけ探して見つからなけりゃ、あの男の子が関係してると直感したのだった。 寛太「その角を左に曲がって、すぐね。停って」 オマタ「かしこまりました。前にロケの待機場所でしたね」 寛太「そう、シオナが初めてオマタさんに心許した場所だよ。オレは、シオナの心なんて、知っているようで、まったく知ってはいなかった」 オマタ「あなたは、いつもそうして生きてきたのだと思います。仕方のないことだと思います」 寛太「痛い」 車を下りて、家に声をかけた。老人が出て来た。男の子の祖父だ。 祖父「はいはい。良太ですかぁ。二階で寝ていると。。。」 男の子は、居なかった。 祖父「きっと浜に出てるんじゃろ」 浜に出てみた。月が美しい。波の音が快い。 寛太「オマタさん。足元に気を付けて」 と言いながら、イテェっとずっこける。 オマタ「大丈夫ですか。あそこで何かが動きました」 岩場の影に、シオナと男の子・良太を発見した。 寛太「シオナ」 良太がびっくりして立ち上がった。 シオナは泣いていた。 シオナ「叔父さん。やっぱり、叔父さんとキスできない。やるって言ったのに」 (とうるうるした目で見つめるシオナを抱きしめた) 寛太「いいんだ、いいんだよ。さぁ、戻ろう。皆が心配してる」 シオナ「うん」 寛太「良太くん、だっけ。。。」 シオナ「叔父さんは何も言わないで。(良太に振り返って)良太君。ありがとう。後、何回会えるかわからないけど、良太くんのことは一生忘れない」 寛太「ってことだそうだ」 翌朝、ものすごく晴れ渡っていた。 二日酔いの朝でもあった。ジビッシュのママがシオナが無事戻って来たというで、ドンペリを注文して、プチ宴会やろうって、どうしても部屋を出て行かなかったんだよね。まいっちゃう。ママがベッドで、自分はソファで寝たというわけさ。 ロケバスで、シオナと会った。なんじゃろ。すごくキレイになったような気がする。メイクのせいかもしれないけど。少女は突然に女になっていくものなのだろうか。目だけで挨拶を交した。 シオナを女として思うことに、ものすごく煩わしいものを感じた。 撮影ではキスシーンはもちろんカットされた。 (zizi監督言わく、ギリギリってことで、よろしく) でも、シオナは、そっとだけ、唇を唇の端に寄せてきた(ような気がする) まだ、誰ともキスしていないなぁと思った。 シオナ「叔父さん。。。」 寛太「何だい」 シオナ「キモイ。すっごく酒臭い」 寛太「お前が疾走なんてするから、遅くまでママに酒飲まされたんじゃないか」 シオナ「べーだ」 The end |
zizi | 投稿日時: 2013-1-14 8:37 更新日時: 2013-1-14 8:37 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() その頃ziziはホテルのバーで九九社長と静かに語り合っていた。一旦ホテルの部屋に戻って休んでいて、宴会場の隅っこで大人しくしていた見ず知らずのカップルを掴まえて滔々と監督論をぶちまけてしまったがあの二人はその後どうしただろうか、と酔った頭で考える間もなく九九社長からラウンジに来てくれと着信があったのだ。
zizi「愛撫除奈さんは御元気で?」 九九「ああ、彼は元気だよ。頑張ってる」 zizi「どうしたんです、九九社長」 九九「ziziちゃん、寛ちゃんは大丈夫だろうか?」 zizi「え?ええ、これから後半にかけては出番もビッシリですし大丈夫です」 九九「そうなの?」 zizi「ええ、ああは言ってますが気合い充分です。いざとなったら営倉行きで本当にお灸を据えますから」 九九「じゃ任せた。しかし最新の技術とは何だろうか...」 zizi「地図や尻の事ですか...おいおい改善されるんでしょう?あんま気にしないで下さいよ」 九九「ziziちゃんはがそう言うのは私がスポンサーだからか?」 zizi「九九社長...私が初めて自分で買ったPCは力本五二〇型白黒液晶でした...ハイパー角に自分で書いていた歌詞を保存しました...」 九九「そうなの」 zizi「ええ、ただの単語帳的な使い方でしたが...むちゃくちゃワクワクしました。」 九九「ふ〜ん」 zizi「だから...その...私はりんご社の製品を...例えマイノリティとなっても使い続けます」 九九「それって...言われて喜んで良いのかな?」 zizi「あ。すみませんそういう意味じゃ...ただ、創造力を刺激する、そう言いたかったんです」 九九「そう。あんがと。」 その時二人に同時にメール着信。 [シオナちゃん。行方不明] zizi・九九「エエーーーー!!」 |
kankan | 投稿日時: 2013-1-13 22:56 更新日時: 2013-1-14 1:03 |
TheKanders ![]() ![]() 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
![]() 奄美大島・名瀬港
ママ「もう大変だったわよ。奄美大島って遠いのね。5人のオカマの移動でしょう。飛行機取れなくてさ。フェリーがやっと取れたのよ。37時間かかったわよ。なんとかロケに間に合ってよかったわ。カンぴょん。逢いたかった」 寛太「はいはい、わかった、わたった。飛行機だと2時間半ぐらいだけどね」 ママ「そう。帰りは、カンぴょんと同じ便を予約したわよ。」 寛太「はいはい。わかった、わかった。戸田、空港。車、出せ」 戸田「へい。ガッテン承知の助」 ママ「何、そんなあわただしい」 zizi「ママ、逢いたかったよ。ウェルカム。ウェルカム。九九社長が空港で待っているんですよ。これから迎えに行かなきゃならない」 ママ「まぁ。社長、ジャストタイミングね。じゃぁ、私たち、先にホテルへ行っているわね。カンぴょん。後でゆっくりねぇ」 ブオオオオオーン。 空港で九九社長とそのお付きを乗せ、ホテルに向かった。 寛太「撮影より疲れる」 九九社長「寛太さんは、今、マックのバージョンは?」 寛太「トラです」 九九社長「オーッ。ソレハ イケマセンネェ」 zizi監督「そろそろ、寛ちゃんも替え時かもね」 寛太「新しいものを導入して悩む余裕なんてないです。暇はあるんですが。もう、コンピュータにあんま、魅力感じないです。最新にしたからって、いい音楽できるってわけじゃないし。便利になれば、それだけ人間、バカになる」 九九社長「オーッ。ノーッ。」 zizi監督「まぁまぁまぁ。寛ちゃんは、今の環境を、その、大切にしたいって。ねっ。ねっ。そういうことでしょ」 九九社長「オーッ。ノーッ」 寛太「そういうことにしておきます。もうすぐ、着きますよ。」 戸田(運転しながら小声で)「寛太さん。まずいですよ」 寛太(大声で)「まずくないだろ」 九九社長・監督「ホワイ?」 寛太「ホテルの料理、まずくないっす。ニッ」 明日もロケ本番だってのに、厄介なのがダブリュで来やがった。 しかも、目的は、何だと、シオナとのラブシーン見学だと。ふざけてる。 ホテルに着いて、寛太は、泡盛を早速あおった。 寛太「戸田。結局、力あるヤツに屈するしかないんだよな」 戸田「はぁ?はい」 寛太「オレは、この30年、どんなにマックに憧れ、やっと手に入れ、どんなPCよりも大切にしてきた。しかし時代は進む。タイガーじゃぁ、プラグインが対応しないんだよ」 戸田「はぁ?はい。なんだよ。結局、最新環境が欲しいんかい」 寛太「と、戸田。オレは今のままで、このままでいい。そうだろ、そうだろ」 戸田「はぁ?はい。いいよ。そんなの。どっちでも。そういうとこ、寛太。疲れんだよなぁ」 寛太「戸田。タメ口」 戸田「すんません」 この日の夕食は盛大だった。村の人も呼んで、ちょっとした宴会場となった。 zizi監督「では、九九社長。乾杯の挨拶をお願いします」 九九社長「うほん。レデイ・アンド・ジェントルマン。オアツマリクダサッテアリガト・・・サマです。本日はペラペラ・ペラペラ。。。」(15分経過) 寛太「長い。挨拶長い。戸田。なんとかしろ」 戸田「なんとかって言ったって」 寛太「よし。わかった」(と立ち上がる) 戸田「寛太さん」 寛太(大声で)「マック。ばんざーい。マック。ありがとう」 会場、唖然として、寛太に注目した。 九九社長「オーッ。ノーゥ」 寛太「マック。本当にありがとうでっす。そして九九社長。これからもマック、よろしく、よろしくお願いします。それでは皆様、かんぱーい」 九九社長「オーッ。ノーゥ」 ママ「きゃっ。カンぴょん。すてき」 一同「かんぱーーーーーい」 これで、また、酒池肉林の宴会が始まった。村の人々は、今までにないような振る舞いに、お祭り騒ぎと相成った。後に、この日が原因で、3人の子供が生まれたそうな。ひとりはシングソング&ライター。ひとりは役者。あとひとりは監督を目指したという。 寛太を部屋に運んだのはママだった。 寛太「ママ。何故、あなたは優しいの?」 ママ「いいから、横になって」 寛太「。。。酔い過ぎ」 ママ「カンちょんをこうやって見てると、自分があんたの母親に思えてくる」 寛太「オカマの母かい。似たようなもんさ。お袋なんてさ」 ママ「また、そういうこという。」(と寛太の頭を抱く) 寛太「こうしていれるのは、あなたのおかげだ。ありがとう。ありがとう」 ママ「それを本当のお母さんに言ってあげて。私は、あなたによく似た人と一緒になって別れた。だから分かる。人は繰り返すのよね。分かっていても。同じことを繰り返す。悲しさも嬉しさも繰り返すだけなの」 ママが痛いぐらい強く抱いてきた。 寛太「ママ。ぐるびーっ」 ドアがノックされた。ドアを開けた。オマタだった。 オマタ「失礼します。シオナちゃんが行方不明です。すみません。とりあえずご報告と思いまして。私はこれから捜索いたします」 ママ「カンぴょん。探すのよ。早く、さぁ。何ボーッとしてるの」 大変な一夜だった。そんなことは言ってられない。シオナはどこだ。 Be continue |
zizi | 投稿日時: 2013-1-8 19:35 更新日時: 2013-1-8 19:35 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() 寛太・戸田「監督ーーーーーーっ」
zizi「仕方ない...もう覚悟を決めてくれ」 寛太「だめ。シャレになんない」 zizi「え?だめなの」 寛太「だめ。絶対にダメ」 zizi「う〜ん...じゃあ今回は止めとこうか...」 戸田「大丈夫なんすか?九九社長楽しみにしてるんじゃ..」 zizi「ふふ。ふふふ...」 寛太「き、気持ち悪い笑いはやめてくれ」 zizi「いや、何だかんだ言ってさぁ、ジビッシュのママ寛ちゃんに惚れてるから」 戸田「そ、そうでしょうか。」 zizi「うん、だからさ、寛ちゃんのやる事なら全て許すんじゃないかと思う」 寛太「だから俺に人身御供になれと」 zizi「まぁ...まんざらでもないでしょ?」 戸田「しかし九九社長は...」 zizi「う〜ん...しかし美人歌手アサコさんも愛本五号機に乗り換えたし私の実兄も次期PCは姫リンゴ本にしようかと言っている」 寛太「それしきの事で九九社長が納得するワケないでしょうがよ」 zizi「ま。いざとなったら...私もジビッシュのママに添い寝しようか」 寛太・戸田「マ、マジっすか!?」 |
kankan | 投稿日時: 2013-1-7 20:10 更新日時: 2013-1-7 20:10 |
TheKanders ![]() ![]() 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
![]() 寛太は、大至急にと、戸田をロケ地に呼んだ。
ヤツは飛行機で2時間30分だから、半日後には来るだろう。 言っとくけど、お下劣な週刊誌が面白がって書いているように、 ジビッシュのママともオマタとも、もちろんシオナとも、 実質的な肉体関係は一切ないんだよ。でも、火のない所に煙は立たないとか、 蒔かぬ種は生はえぬとか言って、スキャンダルは加熱している。 こわい。おっかない。しかも、上記3人が揃うと、なんか異様な雰囲気なんだよね。真っ向からぶつかり合うとか、そういうんじゃなくて、なんか、こめかみあたりがぴくぴくして、空気が重くなって、汗が滲み出る。 オマタとシオナだけなら、平穏は保っているが、そこにママが入ると、はっきり言って言い様もない緊張感が生まれる。 寛太は、『戸田、助けてくれ』っと思った。 しかも、ジビッシュのママは、九九社長を初め、多くのスポンサーとも深いつながりがある。この連続ドラマのスポンサーは、全てジビッシュのママに通じているんだよね。 ジビッシュのママを怒らせると、いい風は吹かないんだよね。 シオナはママになついてはいるものの、時折、生意気なことを平気な顔で言ってしまう。ママは、どうもオマタ敵対視しているみたいで、チクチクいたぶるようなことを言う。オマタはだんまりを決めて、目を閉じる。それがママの癪に触っているようなのだ。 この空間に居るだけで、寛太は、気絶しそうになる。 気絶するほど悩ましい、って歌を思い出す。ンチャーッ(タムケン風) zizi監督「わりぃ、わりぃ」 ・・・(ziziさんの前コメ参照) zizi監督(時計を見ながら)「今日の夕方に名瀬港に着くって言ってた」 寛太「今、ルカちゃんの話してる場合じゃあ、ないっしょ。戸田。スキャンダルはもう仕方ない。何やったって面白がられるだけだから。オレはもうホモの薔薇族でスケベな両刀使いの女たらしで、ついに近親相姦。最近では、SMの帝王ってことにもなっている。調教されたい男のベスト1。戸田が言っていたが、AVのオファーばっかりなんだよね。もう、オレはあきらめた。いいじゃぁないか。やってやろう。煙の立ってる所に火をつけてやろうじゃないか。生えた草に種蒔いてやろうじゃないかぁー」(と興奮がピークに達してる) 戸田「監督、ヤバい、ヤバい。寛太さん、完全にヤケクソ。自棄糞、焼糞。そろそろ始まりますよ。ごめんね。お袋が」(とため息をつく) 寛太「ご、ご、ごめん。お袋。オレは、オレはオレは。。。」 zizi監督「ほんとだ。ごめんね、お袋が始まった」 戸田「監督、今大事なのは、スポンサーに通じてるジビッシュのママの機嫌を損なわないようにすることです。それが言いたかったんですよね。寛太さん」 寛太「くくくくっ」(がっくりしながら、OKサインを戸田に送る) zizi監督「うん。そりゃそうだ。ジビッシュのママあっての、このドラマの予算とも言える。」 戸田「監督。寛太さんのカットは後いくつ残っていますか?」 zizi監督「10カットかなぁ。キスシーンも撮っておこうと思ってるから、12カットかな?」 寛太&戸田「キッ、キスシーン」(と目を見開く) 寛太「そんなの台本にないじゃないっすか」 zizi監督「うーん。だって、抱き合うだけじゃ、インパクト弱いと思うのね。ほんとはね。三島由紀夫の『潮騒』みたいに、浜辺の小屋で点点点みたいのやりたかったんだけどね」 戸田「このタイミングで、キスシーン」 寛太「シオナとキスしろっていうわけ」 zizi監督「だってさ。インパクト欲しいんだもん」 戸田「九話では止めましょう。ママの琴線ってのが私も分からないのですが、えっ?ここで?ってとこで感情的になりますからね」 zizi監督「えっ。そうなの。つまんないの。芸術的に撮るからさぁ」 寛太・戸田「ダメ」 そこにオマタ。 オマタ「そろそろ、ジビッシュのママ様が、港に着くそうです。お迎えの方はいかがいたしましょうか?」 寛太「どうしよう?」 オマタ「それはあなたが決めることです」 戸田「皆で行きます。私が車出すので、オマタさんはシオナちゃんの方、よろしくお願いします」 オマタ「かしこまりました」 お迎えに行く車中 zizi監督「キスシーン、どうしてもダメ?」 寛太・戸田「ダメ」 zizi監督「つまんないなぁ。10話に突っ込んでおこうかな。でも、なんか面白くなってきたね」 寛太・戸田「面白くない」 プルルルルッ。プルルルルッ。 zizi監督「はい。。。九九社長ですか。はいはい。えぇーーーーっ。今、空港に着いたぁ? えっ? どうして、どうして、突然? エッ? ジビッシュのママと、寛太とシオナのキスシーンを見学する約束をしたってぇ? すぐ、空港に迎えに来いですってぇ?」 寛太・戸田「監督ーーーーーーっ」 Be continue |
zizi | 投稿日時: 2013-1-6 15:14 更新日時: 2013-1-6 15:14 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() zizi監督「わりぃ、わりぃ」
寛太「どうすんのよ。パパラッチもいるのにさ。」 zizi監督「まあいいじゃない。もうこうなったら派手にいっちゃおうよ」 寛太「大丈夫なの?おい戸田、お前からも何か言ってくれ」 戸田「監督、これはちょっと...引き返してもらった方が良いんじゃないですか」 zizi監督「戸田ちゃん。そう。もうルカちゃんと話させてやんない」 戸田「ああっ。監督そんな、小学生じゃないんですから...」 zizi監督はジビッシュ御一行が来るのを待つ間にも頭を巡らせていた。 来る...今年は先の二本の映画の公開に伴って零戦ブームが... 今その先頭を我々が走っている。あのアニメは夏、邦画は年末公開 予定らしい。よし...それまでにここは一儲けしなくては... その為にはシオンちゃんに数千円自腹切ろうが安い投資だ。 こちらは数回後には群像編を終えてクライマックス編に突入する。 その時が勝負だ...ええと、まず零戦のフィギュアを海○堂に発注して... あの実物大模型をお台場に持って行ってガン◇ムに対抗させようか... で、例のアニメ映画は「水の空に眠る episode 零」として前編のような 扱いになるのだと吹聴して廻ろうか... 今年も相変わらず皮算用に余念の無い監督であった... |
kankan | 投稿日時: 2013-1-6 13:40 更新日時: 2013-1-6 13:40 |
TheKanders ![]() ![]() 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
![]() 九話のロケは忙しかった。本編の方は戸田が、
島のロケはオマタが同行した。 戸田「オマタさん、すんません。よろしくお願いします」 オマタ「承知いたしました」 戸田「寛太さん。パパラッチが追っているんですがら、くれぐれも行動に注意してくださいよ」 寛太「相変わらず忙しいやっちゃなぁ。分かってるよ。はよ行け」 戸田「これだ。せっかく心配してんのによ」 寛太「戸田。タメ口」 戸田「済みません。では、失礼します」 シオナ「戸田さん。例のあれ、よろしくね」 戸田「了解、了解」 寛太「また、チケットか」 戸田「。。。」 シオナ「内緒」 寛太「そうやって内緒を一つ一つ重ねて、不良になっていくんだぞ」 シオナ「べーだ」 島の夕日は美しい。海に沈む光明。そして、贅沢にも朝日も拝める。 zizi監督「ねぇ。寛太ちゃん。その後、オマタさんとはどうなの?」 寛太「急になんすか。どうなのって、何もないっす」 zizi監督「また、また。誰にも言わないから教えて」 寛太「だから、何もないっすよ。疑うなら本人に訊けばいいっしょ」 zizi監督「そんなこと訊いたら、スケベ親父って思われるっしょ」 シオナ「何話してるの?」 zizi監督「あぁ、シオナちゃん。寛太ちゃんとオマタさん、どうなってるの?」 シオナ、右手を広げて、zizi監督に差し出す。 zizi監督「何これ?」 シオナ「タダじゃ教えられないわ」 zizi監督「わ、わかったよ」と千円札を手のひらに乗せる。 シオナ「子供じゃないんだから。。。」 zizi監督「もう、シオナちゃんには叶わない」ともう一枚乗せる。 シオナ「まぁ、いいか。あのね。。。」とzizi監督に耳打ちする。 zizi監督「うんうん、そうなの。へーっ!!! そんでそんで」 寛太「何、ひそひそやってんだよ」(二人はそんな寛太を完全に無視) zizi監督「うわーーーーっ。そんなことまで。下心見え見え。そんで?。。。」 寛太「シオナ。お前あることないこと。。。」 zizi監督「ヤバい、ヤバい。。。ふ、ふられたぁ。そう。やっぱね」 そこにオマタが来た。 オマタ「リハのお時間です」 zizi監督(身を正して)「じゃぁ行かなきゃ。おーい。始めるぞーっ」 その直後だった。泣いているシオナを抱きしめるシーンは。 zizi監督「OK,OKーーーっ。シオナちゃん。最高」 シオナ「オマタさん。どうだった?」 オマタ「お上手でした」 寛太は「完全にシオナに呑まれた」と思った。泣く演技だけは絶品だ。 シオナ「叔父さん」 右手を広げて、寛太に差し出す。 寛太「なんだよ」 シオナ「だって、泣かしたじゃん」 寛太「そ、そこかよ。オレが泣かしたわけじゃないだろ。。。まぁいいか」 寛太は、シオナの演技に千円を渡した。 オマタ「今、よろしいでしょうか?」 寛太「うん?」 オマタ「携帯電話にシビッシュのママ様からの留守電が入っておりまして、連絡が欲しいとのことでした。どうしましょうか?」 寛太「ママ?何だろ」(とオマタから携帯電話を受け取る) プルルッ。プルルッ。 寛太「あぁ。ママ。ごめんね、スキャンダルに巻き込んじゃって。お店にも迷惑かけてるんじゃないかって。。。」 ママ「お店は繁盛してるわ。カンぴょんのおかげよ。そのお礼もあるけど、久しぶりカンぴょんにあ・い・た・い。それで戸田ぴょんに電話したら、今、島でロケ最中だっていうじゃないの。今、私、何処か解る?」 寛太「さぁ」 ママ「そちらへ向かう船の中」 寛太「え"っ。」 ママ「店の皆も一緒なの。慰安旅行も兼ねて」 寛太「だって、またスキャンダルの種になるし、それにロケだから」 ママ「いいのいいの。スキャンダル大歓迎よ。それに監督の承諾も得てるし」 寛太「なんだよ。さっき何にも言ってなかった。。。」 ママ「カンぴょん。オマタさんにふられたんだってぇ」 寛太「監督ーっ。zizi監督うううううううっ」 zizi監督「わりぃ、わりぃ」 Be continue |
zizi | 投稿日時: 2013-1-6 9:23 更新日時: 2013-1-6 9:23 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() zizi「キム教授、明けましておめでとうございます」
キム「あ、どういたしまして。こちらこそ」 zizi「いつもありがとうございます、本年も宜しく御願い致します」 キム「そんな事より監督。御存知ですか?」 zizi「何をです?」 キム「今年、零戦が関係する映画が二本公開されます」 zizi「ううむ。ようやく時代が我々に追いついて来たか...どんなんです?」 キム「一つは永◇の0。岡田◇一さんとか△浦春間さんとか井○真央ちゃんとか...」 監督。頬をピクピクさせながら... zizi「大丈夫です、ウチの俳優陣なら負けません。」 キム「もう一つは...あの国民的アニメ会社です。何と堀越二郎氏の若い頃を...」 監督。明らかに衝撃を受けている。なぜなら監督の芸名はその会社の黒猫から拝借していたからだ。 しかもその黒猫の綴りは「J」で始まる事を全く知らなかった粗忽者であった。 zizi「というと話は戦前ですね...よし。その映画はみずねむの前編という事にしましょう!」 キム「多分...怒られると思います...」 |
zizi | 投稿日時: 2013-1-6 9:21 更新日時: 2013-1-6 9:21 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() お忙しい最中どうもすみません!
本年も宜しく御願い申し上げます。 いやいや本編はキレイに仕上げたかったのでそう仰って頂けるととても嬉しく思います。 白状しますとこのなぎこがお気に入りだった「ブルーマックス」という店は私の好きな小説、 佐々木譲著「ベルリン飛行指令」という小説に出て来る店の名前なんです。 最後見た踊る男女はこの小説の主人公とその妹で、小説中描かれているエピソード時に なぎこが居合わせた...という設定になっています。 今年はあれですよ、二本のゼロ戦が関係する映画が公開されます。 もしかしたら我々は時代を先取りしていたのでしょうかね(思い上がりも甚だしい:笑) しかしもう大河なんて言ってる場合じゃありません。何せ一つは文庫部門で1oo万部 突破のミリオンセラー「永◇の0」、もう一つは何とあの巨匠宮○駿氏の新作です。 巨大なる敵の襲来に身が引き締まる思いです。(いや誰もzizi監督の事は知らないから) |
kimux | 投稿日時: 2013-1-6 1:17 更新日時: 2013-1-6 1:20 |
![]() ![]() 登録日: 2004-2-11 居住地: 地球 投稿数: 6943 |
![]() 第九話までを電子書籍化しました。
GBUC共有フォルダ→水の空に眠る(電子書籍) kanta01-09.epub ... iBooks等で読めるEPUB形式 kanta01-09.mobi ... Kindle 向け 横書きのままです。リンク情報等は無視しています。すみません。 今回は iPad mini で、Dropbox 経由で iBooks に入れて、読んでみました。 寛太、ニクいね〜 |
yuuichik | 投稿日時: 2013-1-5 20:29 更新日時: 2013-1-5 20:29 |
校長 ![]() ![]() 登録日: 2004-2-16 居住地: 投稿数: 2404 |
![]() 今ちょっと忙しいので、iPadからひとこと!
文章表現が、とても美しいです。 一話ごとにziziさんの文筆家としての進化が目覚ましい! 寛太となぎこが共に空を飛ぶ描写は、 とても美しいラブシーンですね。 素晴らしい! 須倉も良い味出してます♪ |
zizi | 投稿日時: 2013-1-5 20:15 更新日時: 2013-1-5 20:15 |
![]() ![]() 登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3247 |
![]() これまでコメント欄での裏話等に登場している本編登場人物以外の方々です。
戸田:芸能事務所NAK社所属、寛太のマネージャーだが... オマタ:芸能事務所NAK社所属、戸田に代わり寛太のマネージャーとなる。 鈴木:監督助手その1、唐揚弁当事件で一旦クビになる。 佐藤:監督助手その2、会議で監督を援護せず不興を買う。 鈴木の彼女:地味な女子。 ルカ:ziziの仕事用邸宅に居るボカロちゃん。アンドロイドなのか? 九九社長:大スポンサー、りんご電算機株式会社社長。愛車はミ○・イース。 キム教授:時代考証担当顧問 樋渡満記:樋渡干記の兄 三好:須倉氏の美人マネージャー nak社長:愛車はリンカーンコンチネンタル |
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