TOP  >  ガレぶろ(BLOG)  >  zizi  >  連載小説  >  zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話

zizi さんの日記

 
2012
9月 7
(金)
04:04
zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
本文
連載小説「水の空に眠る」の第四話です。
初めての方若しくは過去の話をお忘れの方へ 説明がすると長くなりますので
経緯とバックナンバーは下記よりお読み頂ければと思います(毎度スミマセン...)。

第一話
第二話
第三話

主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。
樋渡干記  大陸帰りの従軍記者。過去経歴に謎の部分有り。

第四話は寛太達の隊の出撃を見送った基地指令官の横顔のアップから始まります...
由布司令官とじじ、そして後年発見されるテープに書かれた「いさこ」の接点とは?
そして、寛太となぎこのその後は...(今回はちょっと長いです)

今回のオープニングテーマ及び外伝はこちらを。.
「君十七の月ほの暗く」/yuuichikさん&YsaeKさんのコラボ曲
挿入歌にこちらをどうぞ。
「キリエ」/YsaeKさん


------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「水の空に眠る」

第四話 司令官の憂鬱、その過去

1945年 4月7日 
-朝- 寛太の隊出撃直後の航空隊基地


寛太が乗る機を見送った基地司令官、由布 一。
かつては米国に駐在武官として赴任した経験もあり、敵をよく知っていた。
性格は冷静かつ誠実で決して居丈高になる事無く、部下の信頼も厚かった。


0600、出撃機を見送った後、次回の出撃に備え基地に並ぶ零式艦上戦闘機を眺めながら
一抹の寂寥感をどうしても拭えなかった。

出撃した後に爆装した状態で敵機と遭遇したら…と思うとどうしても気分が落ち着かず、
今日の出撃前の儀式を終えた後、搭乗員を自分の側に集め、小声で訓示した事を思い出していた。

「健闘を祈る…だが、もしも目的地へ辿り着くことがどうしても困難な場合…
 爆弾を投棄しても構わんから全力で次の機会に備えるように。あと、これは命令だ。
 全員着用してから出撃せよ。」

そう言って、皆が不要だと捨てていた救命用具を手渡したのだった。目的地へ辿り着けそうに
無かったらどこへ逃げ延びて生き残れ…と言いたかったのだがそれをはっきりと口にする事が
出来ない事を申し訳なく思っていた。

自分がこんな作戦に命令を下さなくてはならない立場にある事に嫌悪感を抱く事もあったが、
かと言ってこの思いを他の人間に味合わせる事は出来ない…そう考えていた。

「そういえば...あのなぎこという娘には申し訳無い事をした...」

寛太が着任して間もない頃一緒に訪れた黒猫館。あそこは何度行っても居心地が良い。
どこで知り合ったのか、寛太は店の「なぎこ」という娘と既に仲良さそうであった。
何故か私はここで「校長先生」とあだ名を付けられているらしいが気付かないふりをしている。
なぎこは美しく器量の良い娘で、主も一目置いているようだった。座敷の流れから、
客への気配り、他の芸妓達への手配、料理や酒の時宜にかなった配膳等その場に居る
黒猫館の皆を自然と従わせる徳を備えている。
こんな御時世でなければあの二人は、きっとお似合いの夫婦となれただろう…

「全機無事出撃致しました!」

副官の声が大きく響き、我に返る。

隣にいた男が不思議そうに声をかけた。最近この基地に居座って取材を続けている
従軍記者の樋渡干記という男だ。

「一機だけ街の上空を旋回していたようですが、あれは寛太隊員の機でしたか...
 彼には取材で話を聞いた事あります。編隊長機も何だか判ってて待ってるみたいに見えましたね…」

以前は満州で陸軍の庇護を受け映画を撮っていた、との事だったが過去の経歴には謎の部分がある。
この男は硝煙の匂いがする...そう感じていた。

「うむ。世話になった街に最後の挨拶をしていたのだろう。陸軍ではやらんかね?
 ああ、今の事は記事にはしないでくれたまえよ。」

由布は、しばらく部屋に誰も来ないように、と言い残し一人長官室に戻り机に向かう。
そしていつものように、先程出撃した隊員の家族に宛てた手紙をしたためるのであった。

この作業を行う時にはいつも、どうしても過去の出来事を思い出してしまう。
そういえば...自分が昨年転任して来た時にもまず訪れたのが「黒猫館」だった...


--------------------------------------------------------


1944年 10月
「黒猫館」敷地奥の土蔵

私は着任後、まず「黒猫館」を訪れた。どうしても確認しておきたい事があったのだ。
その時、主は座敷の接待もそこそこに私を敷地奥の土蔵に案内した。

「主、これは…」中に入った私は絶句した。主が質問に答える。

「こちらに転任して来られると聞いて驚きました。ここには誰も来ませんから御安心下さい。
 以前お会いした時は...失礼な口の利き方で大変失礼致しましたな...この中の物は...
 ちょいと昔の話ですがね...実は大戦の間、米国や欧州をほっつき歩いてた時期がありましてね。
 そん時仕入れて来たモノもありますが...いやあ、ある所にはあるもんです。」

食料の向こうにドイツ製のアップライトピアノ、他にも楽団が一式出来るのではと思われる程の楽器類、
それに蓄音機に奥の棚には独語のスコアや楽譜、英語の音楽雑誌と共にクラシック音楽、南米音楽、
グレン・ミラーやベニーグッドマンのSwing-jazzのSP盤が所狭しと並んでいた。しげしげと眺めていると
その中に一つだけ、本来ここにあるはずの無い機械を見て驚愕した。

「主、こ、これはまさか...一体どこでこれを?」
「流石にお目が高い、これは..音声信号を磁気録音方式で記録する装置ですが...御存知で?」
「大戦間に..軍が研究用に輸入した原形を見た事がある...どこでこんな物を?」
「そいつは...ドイツにはちょっとした知り合いがおりましてね。ま、今じゃ連絡も取れませんがね...
 でもそんな事は司令官殿はお知りにならなくて結構です。そんな事よりも...
 あの方は...今も息災のようです。時々食料などを御送りしたりしていますがね。
 御礼の手紙を頂戴したりしております。それにあの娘...いさこも元気ですよ...
 あの後...汽車でここに着くまで、下を向いて一言もしゃべりませんでしたね。
 黒猫館に着いてから事情を説明したんですが...最初はかなり驚いてました。
 しかし先程座敷にいたなぎこなんかは流石です、彼女の素質を一目で見抜きましたね。
 鼓が得意なんですな、今ではすっかり馴染んでます。少し食いしん坊ですがね...

 いやこいつは余計な事でしたな...失礼致しました。それよりも...
 司令官殿、今日座敷で唄に合わせて体動かしてあったですよね…裏に強拍が付いてた
 ようににお見受けしましたんで、もしやと思いまして…いえいえ分かっております。
 お立場もおありでしょうから何も仰らなくて結構です。どうぞ、この土蔵では決して
 外に音は漏れませんし絶対に口外はしません。勿論もしもの時に類が及ぶと
 いけませんからね、店の者も誰一人ここの事を知っている人間はいません…
 だから、いつでも御好きな時にお好きなように過ごして下さいませ…」

図星だった。米国駐在武官時代に知ってしまった西洋音楽、とりわけSwing-jazzの素晴らしい躍動感、
どうしても体が求めてしまう。それにあの音声信号を磁気録音方式で記録する装置...
黒猫館裏の土蔵の中はまるで別世界であった。

しかし...

あの娘の事は...影から見守る事しか出来ない。その方が幸福な生活を過ごせるであろう。
帰り際にそっと座敷を覗いて元気でいる事を確認する。由布の脳裏にはありありと、
ここの主、「じじ」と初めて会った時の事を思い出していた。

あれは2年前...

--------------------------------------------------------


1942年7月

神戸市 ホテルの一室

太平洋戦争が開戦して半年を過ぎたこの頃。
まだ国民は南方で日本軍の進撃がつまづきつつある事を知らされずに、浮かれた状態にあった。
私は噂に聞いていた「じじ」なる男の宿泊先をようやく探し出し、ホテルの一室を尋ねたのだった。

「何ですかね?私に話って」

通称「じじ」なる人物はやや尊大な調子で応えた。

私は人目を憚って地味な平服姿だったが、彼はそんな自分を値踏みするように眺めた。
軍人相手には容赦はしない...そんな気持ちがありありと見える、聞いていた通りいけすかない態度だった。
話によるとこの男は軍人相手だと詐欺まがいの事も平気で、相手の弱みにとことんつけ込む事にいささかの
ためらいも感じない性質らしい。一筋縄では行かない...そう思ったが時間がない。早速話を切り出した。

「うむ。貴殿は歌舞に秀でた若い才能ある者を捜している、と聞いている」
「まあね。ただし軍人の親族や名家の…ってのは御免だね。自分で何とかしてくれってもんさ」
「実は...貴殿は今の戦況を知っているか。まだ国民には知らされていないが...このままじゃいずれ
 必ず日本本土も空襲される。そうなる前に一人庇護して頂きたい若い娘がおるんだが…」
「何を勝手な事言いやがる。頼みもしねぇのにあんたらが勝手に戦争始めたんじゃねぇか。
 俺は軍隊が嫌いだ。軍人様の御用聞きなんざ御免です」
「しかし貴殿は今私と会っている。何故だ? 」
「ああ。皆が嫌いだとは言わない。きちんとした...良識がある人も大勢いるのは分かってる。
 気脈が知れた人物とは今でも情報交換し協力し合ってる。持ちつ持たれつってもんだ。
 あんたもその中の一人からの紹介だったんで一応会っている。」
「貴殿も昔は軍楽隊にいたと聞いているが…?」

「あんたにゃ関係ないが…まあいいさ、教えてやる。」

少しだけ苦渋の表情を見せた様だったが彼は平静を装って言葉を続けた。

「俺が若い頃軍楽隊にいた時親友がいた。優秀な男だった。しかしその才能を妬んだ輩がいたんだ。
 俺達は危険な場所へ行かされて、奴は死んだ。俺もその時怪我をして今でも足が言う事聞かねえ。
 その口利きをした奴は上層部に親戚か何か居て...巧く立ち回って昇進した。同情してくれる人もいて
 事情を教えてもらったが全ては事が終わってから知ったんだ。後の祭りだったよ。
 将来きっと御国の役に立つ有能な若い者を殺しておいて...あんな馬鹿な奴を昇進させちまうなんざ...
 今の軍隊も同じさ。根性、根性ばかり言いやがって適材適所ってもんがなっちゃあいない。
 だからミッドウエイであんな無様な負け戦をするんだ。国民が汗水流して働いた稼ぎを吸い上げて
 大金費やして戦争なんかおっ始めて...世の中にはもっと大事なモンがあるんだ。大体...」

たまらず私は言葉を遮った。

「わかった、言いたい事はわかる。しかし、すまんが少し私の話しを聞いてくれ。
 これは私の個人的な事情による。軍隊とは関係無いんだ。
 実は...私には…兵学校時代に想い合っていた女性がいた。二人だけの間で将来を約束し、
 子供が出来た時の名前まで決めていた。しかしその後命令で極秘の、長期間内地に戻る事が叶わない…
 生還は望めない危険な任務に就く事になった。だから…黙って彼女の元を去った。
 彼女の将来を奪う訳にはいかない、そう考えた。しかし私は大怪我をしたが九死に一生を得て生還したんだ。
 任務の事は極秘で、帰還後私はしばらく軟禁状態だった。怪我が癒えても世間に出る事は許されなかったんだ。
 そしてようやく表立った軍務に復帰出来たのは数年後だった。無駄とは思いつつも彼女の消息を捜した…しかし…」

ここで一旦言葉を切った。「じじ」の目は少し関心を惹いているように見える。
もしかしたら似たような体験を過去にしているのかも知れない。と思った矢先、「じじ」の方から口を開いた。

「もう...一人じゃなかったんだな?」
「そうだ。彼女は私が還って来ないと思い、新しい生活をしていた。理科大出身の舟木という男と
 結婚して赤ん坊もいたんだ。可愛いらしい女の子だった。その姿を遠くから見た時...
 私はもう二度と姿を見せないと決心した。ただ...その娘の名前は、私達が二人で考えていた名前が
 付けられていた…」
「そうかい...せめて名前だけでも...ってやつかい、泣かせる話だね。しかし相手が軍人じゃなくて
 良かったじゃないか。もう悲しませずに済むってもんさ、しかしその娘を何で俺に?」
「実は最近久しぶりに...意外な所でその娘の名前を目にした。現在海軍特務機関の民間人徴用名簿に
 名前が載っている」
「何でそんな若い娘さんを海軍さんが?」

これにはさすがに「じじ」も驚いたようだ。

「資料を見ると、あの娘は優れた音感を持っていたらしい。周波数の差異を敏感に感じる事が出来るのだ。
 私達も音楽だ好きだったが…母親として何か教育していたのかもしれん。その音感を生かしての音響探知…
 潜水艦のソナー員か最前線の高射砲陣地の電探替わり…例えば…潜水艦から音を発し、
 反響音を聴いて敵艦の位置を探ったり、飛行機の音を聴きわけて機数や高度を探る…みたいな事だ。
 訓練した後、そこに配置出来ないかと考えているようだ」
「馬鹿な…そいつは危険だね。間違いなく死ぬ。海軍さんもひでぇ事しやがる…」
「そうだ。徴用される日は一週間後と決まっている。だから、貴殿に頼みたい、この通りだ」

私は深々と頭を下げた。雰囲気が変わった...どうやらこの男は話に喰いついてきたようだ。
海軍が若い娘をも戦争の道具に利用しようとしている。この部分が彼の心を大きく揺さぶったらしい。

「…どんな娘なんです?私の店の敷居は…お客さんには低いが芸妓にとっちゃあ
 その辺りの店よりは高うございますよ。それに…運転資金も必要ですからね。
 若い娘だって飯は食うんです。」

彼は身を乗り出して来て口調が少し丁寧になった。しかし金に執拗にこだわるのは噂通りらしい。

「資金は…これは内密にして欲しい。私の権限で可能な範囲の援助はする。約束する。それから
 その娘の素質だが…一度見て欲しい…悪いが私も貴殿の事はそれなりに調べさせて貰った。
 一度歌を聴いて貰えば貴殿なら解るはずだ。明日の日曜日、おそらく学校で子供達に歌を教えていると思う。」

「じじ」の態度は明らかに興味津々...という風に変化した。彼は機密情報にも接する事が出来る立場にいる
海軍の人間がここまでやる、という事に大変興味を惹かれ、またどうやら義賊的な一面があるらしい。
こういう輩との交渉は自分の保身を考えては上手く行かない。全てを曝け出すのだ。由布は言葉を続けた。

「名前は、「いさこ」と言う。」

一方「じじ」の方では、海軍のお偉いさんならとことん利用してやろうと考えていた。
大体自分の所に来る軍人にはロクなのがいない。女に入れあげて軍費を使い込んだとかそんな連中ばかりだ。
そんな奴らに遠慮する事は無い、いつものように挑発して冷静な判断能力を失わせ、弱みを徹底的に突いて
搾りとれるだけ搾り取るつもりだった。どうせ国民から搾り取った税金を湯水のように使ってんだ。
多少汚いマネしたって構うもんか。取り返せるだけ取り返してやる、そう決めていた。

が、話を聞いている内にこいつは何とかしてやりたい、いや自分が何とかする、と思うようになっていた。
じじの尺度ではうら若き女性を危険に晒して、その能力に海軍の片棒を担がせる、などという事は
損得勘定抜きにしても到底許される事ではなかった。

しかも...

由布が言ったその名前に驚いた。自分の軍楽隊時代の同期達は現在上級の士官となっている者が多い。
以前から密かにその中の信頼のおける者と常に情報交換をしており「不遇な環境にある若い才能」を
捜していたのだ。その一人から最近この近辺で「いさこ」という名の娘が不幸な状態に陥りつつある、
という情報を聞いて調べに来ていたのだった。


日曜日、教えられた学校の教室をこっそり覗いて見る。
10人程の子供達に囲まれ、オルガンを弾いている若い娘の姿があった。

「いさこ先生、何か歌ってー」
「こら、私は先生じゃないやろ…」
「えー。じゃあいさこおねぇちゃん、歌ってよー」
「仕方ないわね…」

フォーレの小ミサ曲、「キリエ」を歌った。

その歌声が窓越しに聞こえて来た時…

驚愕し、鳥肌が立った。聴く者の魂に響き、全てを受け容れる…そんな歌声だった。
無垢な子供のように純真であり、賢者のように諭し、且つ全てを洗い流してくれる…
まるで自分がとてつもなく薄汚れた存在に思え、自分にはこの歌を聴く資格が無いのでは
ないかと感じていた。いつの間にか涙を流している事に気付き慌てて袖で拭う。
今の日本に…こんな歌声を響かせる若い娘が居たとは…
外国の宗教曲が外に聴こえて大丈夫なのかと思ったのは聴き終えた後、しばらく
時間が経過し精神が落ち着いた後だった。

その足ですぐに由布の滞在先へ向かった。話は早かった。由布は

「徴用の迎えが行く日、海軍が行く前に私の権限で運転手付きの車を出す。貴殿はそれに乗り、あの娘の
 家には徴用の車だと行って連れ出して、一緒に駅から汽車に乗ってくれ。黒猫館…だったか。もしも...
 そこまでの道中何かあったら私の名前を出してくれ。」

と言った後、切符や旅費の用意と共に一指しの物を差し出した。恩賜の短刀だった。

「こ、こんな物を…大丈夫なんです?」
「ああ、軍の方は…ちょっとゴタゴタするかもしれんが、その尻拭いは自分がやる。
 実家の方への説明も私が何とかしておくからとにかく…戦争が終わるまで宜しく頼む。」

「承知しました。後は私にお任せ下さい。責任を持ってお預かり致します。」

この人物は信頼に足る…損得勘定抜きで付き合えそうだ…
「じじ」はそう思いながら海軍から奪った娘を連れて黒猫館へ向かったのだった。




============================


1945年 4月7日 寛太の隊出撃の日
-夜- 黒猫館

まこといさこは夜中にお腹が空き、いつものように台所に忍び込みヒソヒソ話をしていた。

「まこちゃん、何かあるかな〜?」
「あるやろ。確かいつもこの棚の中に大福饅頭が...」
「あれ?じじさんの部屋まだ灯りがついてるよ...止めとこうか...」
「いさこちゃんがお腹空いた言うから来たんやん。大丈夫やろ。」
「だって今日早起きしたんやもん...あれ?なぎこさんの声だ...」
「え?ホント? まさか...あのオヤジ...」
 
そう言って底の浅い西洋鍋を手に取るまこ。
隣の帳場を二人してこっそり聞き耳を立てると...
 
じじは躊躇したが、由布司令官から聞き出した情報をなぎこに伝える事にした。

「...なぎこネェさん、実はさ...」
「ええ、寛太さんの事ですね...御願いです。どうか本当の事を教えて下さい...」
「ああ...実は..目的地に辿り着く前に敵機と遭遇、交戦中との無電を最後に連絡が途絶えたらしい...」
「え..? あの... 受け容れる覚悟は出来ています。事実を教えて下さい。それって...やはり...」
「そうだ。目標の機動部隊に辿り着く前に敵機と交戦状態となって、海へ墜落したって事だ...」
「...そう...ですか...」
「ただ、他の友軍機の信号からすると...どうやら最後に隊長機を撃墜した
 仇の敵機を一機屠ってから海に激突し炎上した、という事らしい...」
「..........」 

上を向いて堪えようとしたなぎこの目から思わず泪がこぼれる。

それを見た主は、これまでに憶えた事の無い打ち拉がれた感情を抑える事が出来なかった。
なぎこ達の力になりたかった。軍を相手に商売して...少しでも失われたモノを取り返し、
その才能を保護し、戦後に...次の世代へ...それが必ず必要となり、謳歌する時代がやって来る。
しかし...この大きな時代のうねりの前には、何と自分は無力である事か...



--------------------------------------------------------


1945年 4月8日 寛太出撃の翌日
-朝- 奄美大島の海岸

奄美大島の海辺の村。娘は早朝、海岸を歩くのが日課だった。
気ままな散歩ではなく、近海での海戦で損傷したり沈没したりした艦艇や墜落した飛行機
に積んである荷物が漂着する事があったからだ。

漁業と痩せた畑しか無いこの辺りではただでさえ物資も乏しく、時折漂着物の中に紛れ込
んでいる食料や医療品はありがたい贈り物であった。

人…死体?

浜辺に打ち上げられた影を見て思わず後ずさった。そういえば昨日村の人が沖で空中戦が
見え、日米双方の飛行機が落ちたと言ってた事を思い出した。

服装から判断すると日本人の航空兵らしい。恐る恐る近寄ってみると、微かに息がある
ようだった。

「お父さーん!兵隊さんが!」
娘は慌てて叫びながら村へ駆け戻って行った。


- 続く-


-----------------------------------------

この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のもの
とは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。「光の波」/yuuichikさん。



あとがき

今回大変長くなり解りにくかったかと思います。大変申し訳ありません。
諸般の事情により途中で大幅に加筆致しました。寛太はどうやら一命を取り留めたようです...
さて寛太はその後...島の娘は...なぎこは、黒猫館は...
次回はお待たせしました。黒猫館のある一日を描いた「まこちゃん危機一髪(仮題)」です。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

(閲覧:47122) |  (好きボタンポチっと数:)
投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-12 17:43  更新日時: 2012-9-12 18:25
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 「水の空に眠る」第四話外伝 兄弟の確執
それは、寛太の戦機墜落の一報が基地に届く1時間ほど前のことであった。

航空隊基地では、すでに第二陣の出撃に備え、厳しい訓練と整備に追われていた。
樋渡満記は、戦闘機の点検を終え、駐機場裏の格納庫脇に向かった。
そこは、寛太の隊の連中とよく集まって雑談していた場所だった。
寛太の冗談は、ちょっときつかったが、皆でバカみたいに笑いこけた。
満記もつまらないと思っていたが、バカ笑いが止まらなかった。
もうすぐ、自分たちは死ぬんだ。恐怖心から逃れるようにして、笑っていた。
「あっ。空だ」(大笑い)。「屁がプッ」(バカ笑い)。
寛太「可笑しい。腹いてぇ。死にそう」
皆が急に静まった。
寛太「さぁ。メシだ。腹が減っては戦はできぬだ」
寛太の口癖だった。満記は、その時の寛太の表情を忘れることができない。

満記(抜ける様な青空を仰いで)「寛太さん、自分はあなたが無事で帰還すると信じてます」

そこに樋渡干記が現れた。
干記「第一陣は、兄さんが飛ぶのかと思ってました」
満記「干記か。お前に話すことは何もない」
干記「そう、嫌わないでくださいよ」
満記「お前が大陸に行っている間。。。」
干記「また、その話ですか。もうよしましょう。戦争、もう始まっちゃったんですから」
満記「お前ってやつは」
干記「次は兄さんですか」
満記「まだ、わからん。話はそれだけか。俺はもう行く」
干記「出撃が決まったら、また来ます」
満記「来なくていい」(と背を向ける)
干記「弟に最後の別れをさせてやってくださいよ」
満記、返事をせず、立ち去ろうとする。
干記「兄さんが紙飛行機の作り方教えてくれていたら、大陸に行かなかったかもしれません」
満記、一度足を止めるが、気を取り直して立ち去った。
干記は、立ち去る兄の背を、じっと見つめていた。

その向こうの空では、着陸態勢を取るために、戦闘機が旋回を始めていた。
幼い時、兄が飛ばした紙飛行機を羨ましく眺めていたものだった。寛太と満記。それは自分と兄以上に、兄弟らしく見えた。

干記は、「自分も寛太さんは戦勝し、無事に帰還すると信じています」と兄に言うつもりでいたが、言えなかった。いつでもそうだ。いつも大事なことを言わずに別れてしまう。また一歩、兄が自分から離れて行った。そう感じながら、大きくため息をついた。

================================================================
kankanのまったくもって、早とちり、注意力散漫、勇み足の外伝を載せたせいで、登場人物がまた一人増えてしまった。ziziさん、すんません。m(_ _)m これで調整を。外伝だから、あまり本編には影響ないでしょう。
ひわたしさん。あんたに兄がいたんだよ。あれ?本当にいたんだっけ?満記って名前にしたけど、問題ない?もち、干潮満潮から語呂合わせ。「タテキ」ね。もう忘れないよ。いつも、めんご。

返信 投稿者 投稿日時
 kankan様及び外伝の外伝の外伝作家の方へ zizi 2012-9-12 20:25

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-9-12 12:39  更新日時: 2012-9-12 14:39
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 「水の空に眠る」舞台裏「校長の提案に、監督凍り付く」
じじが小説「第四話」と、その撮影を終えた夜、校長はじじを、
いつも通う、いかがわしい酒場に誘った。
もちろん、麦酒を注文した。

yuu「第四話撮影、おめでとう」。
zizi「おめでとうかぁ。。。そうだよな。おめでたいかもしれない」。
yuu「まだ話は続いているからね。ホントのおめでとはまだ先だけどね」。
zizi「そうだね。しかし、しかし。。。」。

yuu「じじさん、覚えているかい? 私の原案を元に『ぜひ小説にしたい』と言った時のことを」。
zizi「ええ、校長がいきなり曲のコメント欄で、戦記物のイメージを語るとは驚きました。でもそのおかげで、こうして小説となり、映画化もされました。ありがたいことです」。
yuu「そう? 分かっているじゃない。。。」。
じじは校長の目がキラリと光ったのを見逃さなかった。
“何か来る!”・・・じじは身構えた。


yuu「でもね、じじ。足りないものがある。分かる?」。
zizi「なんですか?」。
yuu「先日の寛太と樋渡の酒場での会話、『外伝同士』を読んだか?」。
zizi「もちろん読んだよ」。
じじは“あの小説はコメント欄も含め、自分が管理しているんだから知らないわけないだろ!”と思った・・・が、言わないでいた。

yuu「格好良かったねぇ、寛太も樋渡も」。
zizi「うん、確かに男二人の出番でも、いい味出していた」。
yuu「そう、そうなんだよ。いい味出していた。その味はどこから来ていると思う?」。
zizi「うーん・・・、うちらよりも歳が若いところ?」。
yuu「違う!」。
校長はやや不満げにそう言って、コップの麦酒を空けた。

zizi「と言うと?」。
yuu「曲だ。あの二人には二人で作ったコラボ曲がある」。
ziziは内心“しまった!”と叫んだ。
“来るぞ、きっと来る・・・”。
そう思いながらも、人当たりの良いziziは、
人当たりの良いふりをしている校長に、こう言った。
zizi「コラボ曲があるからこそ、あの二人は通じ合っている味があるんですよね」。
“あぁ、つい言ってしまったよぉ・・・”。

yuu「そうだよ、じじ。分かっているじゃ無いか。コラボ曲を持っているということは強い。つまり私たちに欠けているものは、コラボ曲だよ。だから何か画にならない!」。
ziziは、“あぁ・・・やっぱりぃ〜”と思いつつ、
「そ-ぉ 〜 - です- ぅ -ねぇ〜」と、空気の抜けた浮き輪のように答えた。
yuu「つまり、私たちに必要なのはコラボ曲だよ!」。
zizi「な、なるほ- - どぉ〜〜~~ ~ ~」。
じじの浮き輪はぺちゃんこになった。


yuu「じじ監督、私たちもコラボ曲を作ろう! そうしたら黒猫館主と司令官の登場シーンにも味が出てくるに違いない!」。
校長は遙か遠くを見やる目つきで、いつもの妄想モードに入っていった。
じじも本来は妄想族であるから、本当は一緒に妄想モードに入っていきたかった。
しかし・・・。

zizi「いいかもぉ〜 ~ ~、ですけどぉ、どうやってコラボ曲を作るんですか?」。
yuu「それは決まっている。まずは私が原曲を創るから、それを元にじじちゃんがうまい具合にアレンジして行ってよ。ほらこの前発表した輪廻転生 ZizysaeK versionなんて、昔のザ・ベストテンのステージを彷彿とさせる素晴らしい編曲だったし」。
zizi「あ、ありごとう、じゃなくて、ありがとうございます」。
yuu「私の曲をアレンジできるのは、GBUC広しと言えども、じじちゃんだけだと思うから♪」。
ziziは、“あ、校長の♪が出たな”と思った。
“これに騙されてはいけない。でも騙されちゃうんだなぁ〜”。

そう思いながらも、一応言ってみた。
zizi「たまには校長が、最終的なアレンジをしてみても、おもしロイかもしれませんねぇ〜?」。
yuu「うーーん、私は基礎的な音楽的訓練を受けて無いから♪」。
ziziは、“やっぱ、それを言うか”と思いながら、「そんなことはないですよ」と言った。

yuu「ううん、そんなことは無い。

なんたって、じじさんには才能がある。
それも有り余るほどの。

そんなじじさんのユニークな個性を、
私は、最大限に活かせればと、願っている。

私は、じじさんの可能性に、賭けたい!」。



“その無駄な改行と句読点は、なんなんだ?”、と思いつつ、
ziziは校長お得意の「褒め殺し」の中で、気を失っていった・・・。

ziziは、“もう負けた”と思った。
心配していたことが現実のものとなった。
校長とのコラボ、確かに完成できたら面白いだろう・・・。
だってGBUC8年の歴史の中で、
校長はほとんどコラボをしたことが無いのだから。
でもそれには理由があった。
誰も・・・校長の曲には手をつけられないのであった!・・・。

いやかつて2004年冬、当時のGBUC5人衆によるコラボプロジェクトKKGPDの「HEART」があった。
あれも校長が「第一走者」であった。
そして校長が作って来て、第二走者に手渡した音楽ファイルは、
「13分もある三楽章の曲」・・・だったと聞いた。。。

“それは無理”、とじじは思った。
そこまで行かなくても、校長の曲はイントロだけで3分はかかり、10分超えも当たり前の世界。
“私はふつーの、楽しくて、キャッチーな曲を作りたいんだ。
しかも、出来たら女性ボーカルで・・・”。

でもそんなことを仮に言えたとしても、
校長はきっと今回のように、30年以上も昔の17歳当時の曲を持ち出して来るかもしれない。
よくぞ、YsaeKさんはやり遂げたなぁ・・・。
やっぱり音大出は耐性が違う。
あのキム教授でさえ、校長の過去音源に手を出したはいいが、途中で挫折してデモ段階で辞めたというのに・・・。


じじは何とかして切り抜ける言い訳を考えた。

zizi「そうですねぇ、いい案だとは思うのですが、とりあえず今は第五話のまこちゃんを撮り始めるのに忙しいから、それが終わってから考えましょう」。
yuu「そっか、そうだよね。忙しかったんだよね。ごめんごめん。分かった。じゃあ、撮り終えてから、改めて考えよう♪」。

ziziは、“永遠に第五話を終わらせない方法は無いか?”と、考えていた。
それでも、もしダメならば・・・。
以前校長の作品に手を出した、怖いもの知らずの「すくらぷさん」に頼もうかと考えた。
彼はさすがに廃棄金属加工業のプロだけあって、訳の分からない校長のを自ら取り上げて、奇跡の編曲を果たしたつわものであった。

あぁでも、あれはコラボというよりも、Remixと言った方がよかったか?
まぁでも、校長はコラボもRemixも違いが分からないから、いいっか。
とにかく、先延ばしにしよう・・・。

ziziは、校長との長い永い酒場の夜の中で、こう考えていた。

返信 投稿者 投稿日時
 「水の空に眠る」舞台裏「校長の提案に、監督腹黒く考える」 zizi 2012-9-12 20:10
 Re: 「水の空に眠る」舞台裏「校長の提案に、監督凍り付く」 SCRAPS 2012-9-12 23:35
    Re[2]: SCRAPSさんへ zizi 2012-9-13 19:11

投稿者 スレッド
ひわたし
投稿日時: 2012-9-12 9:26  更新日時: 2012-9-12 9:26
オビ=ワン
登録日: 2007-4-8
居住地: ロックンロールサーカス
投稿数: 1528
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
寛さん…またかい?いっつも名前の事聞くけど
説明してる間に酔って寝てるじゃないか。
タテキですよ。由来は正確には干城。谷干城で調べてよ。
もと土佐藩士。熊本城で西郷と戦った。
あと、この国の政府が出来てからまだ100年も経ってない事を
忘れないようにね。これ以上はあんまり言えないけど
現政府に忠誠心なんかこれっぽっちも持ってない人達は沢山居るのさ。
特に元薩摩や長州や土佐にはね。筋書きだって出来てるんだ。
黒猫館の中に眠るある物がその正当性を高めてくれる。
おっと、もう時間だ。
飛行機はもう随分乗ってないけど、この戦争が終わったらまた一緒に飛んでみよう。
空はどこまでも自由だし、人ももっと自由であるべきだ。豚の自由に慣れてはならぬ。
では、武勲のあらんことを。

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-11 23:21  更新日時: 2012-9-12 2:34
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 「水の空に眠る」第四話 外伝 同士
寛太の特攻が決まった翌日の夜、寛太は樋渡を、
いつも通う、いかがわしい酒場に誘った。
もちろん、焼酎を注文した。

樋渡「おめでとうございます」
寛太「おめでとうかぁ。。。そうだよな。おめでたいかもしれない」
樋渡「自分、おめでたいとはまったく思っておりません。しかし、しかし。。。」
寛太「憶えているか。一緒に紙飛行機を飛ばしたとき」

http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=9167&cid=1

樋渡「楽しかったですね。はっきり覚えてます」
寛太「昨日、そのときのことが頭から離れなくて」
樋渡「寛太さんは、紙飛行機が得意だって言って、いっぱい飛ばしました」
寛太「なかなか、うまく飛ばなかった。なのに、お前の紙飛行機は惚れ惚れするほど高く飛んだ」
樋渡「飛べばいいってものじゃないです」
寛太「。。。お前のおかげで、自分も一人前の特攻隊員になれた」
樋渡「何、言ってるんですか」
寛太「ありがとう。これが言いたくて、呼んだ。最後の酒だ」
寛太は、樋渡のグラスになみなみと、焼酎を注いだ。
樋渡「じ、自分は。。。」
寛太「自分は死ぬ気で戦地に向かう」
樋渡「。。。し、死なないでください」
寛太「。。。」
樋渡「あのう。そろそろ、注ぐのやめてもらっていいですか」
樋渡のグラスから、焼酎が溢れこぼれていた。
寛太「樋渡、やっぱ。お前が飛べ」
樋渡「はぁ?」
寛太「お前は飛行士として、俺より数段上だ。お前をあの何考えてるかわからん上官に推薦する。第一陣は、お前がふさわしい。俺はそう思う。今だったら、間に合う。。。(上官の弱みも握っているし)お前が飛べ」
樋渡「それは、ちょっと、話が。。。」
寛太「飲め。樋渡。とことん飲め。がははっ。決まった決まった。お前の飛行は美しい。惚れ惚れする。見事、敵機を撃沈できる」
樋渡の内心語:もしかして、寛太さんは、ただビビッているだけ? 死にたくないだけ?
寛太「♪The paper airplane. When I was a boy long ago.ってかぁ。オヤジ。酒ないぞ。酌のねぇちゃんぐらい置いとけってんだ」
樋渡の内心語:この人は、心の持って行きようがないとき、自分を酒に誘う。きっと、この弱さが、この人の強さなのかも知れない。
うん? これって大いなる矛盾?勘違い?

と、思った。

寛太、出撃の朝
樋渡、敬礼して、寛太を見送る。
樋渡「やっぱ、ダメでしたね。自分も次に続きます。自分も死にたくないであります」

※出撃前に樋渡に質問がある。長い間付き合っていて、今さらなんだけど、「干記」は正確になんて読むんだ。ググったら、杏仁豆腐の話ばっか。ユーチーシンレントウフーとか。

投稿者 スレッド
ひわたし
投稿日時: 2012-9-11 11:39  更新日時: 2012-9-11 11:39
オビ=ワン
登録日: 2007-4-8
居住地: ロックンロールサーカス
投稿数: 1528
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
本土上陸されたらこの国はすぐに落ちてしまうでしょうね。上陸されたら亡命政府も考えなくちゃいけないって関東軍の人が言ってました。その為に私たちは居るんだって、何の為に日本からフギを連れて行ったと思ってる?って。まあ、立ち話を聞いただけですけど。ともかく、本土決戦の防衛ラインは沖縄・奄美あたりですかねえ?おっと急用を思い出した。それでは。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 樋渡殿へ謎の登場人物より zizi 2012-9-11 19:02

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-10 19:44  更新日時: 2012-9-10 19:54
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 「水の空に眠る」外伝の外伝ー堕ちてゆく寛太ー
堕ちてゆく寛太外伝の外伝 - 自美酒に酔い -

GBUCを文字ったジビッシュを漢字表記すると「自美酒」となる。(「Wikipedia」より。嘘)
冗談はこれぐらいにして、本編に移りたいと思います。
なお、セリフにおける不適切な発言、地の文には、ピー音を入れております。

それは、寛太の心の中に、ぽっかり穴が空いた夜の出来事だった。

深夜、Bar「ジビッシュ」のママ(おかま)の部屋。

ママ「さぁ。寛太ちゃん。横になって」
寛太は、酔いつぶれて、ベッドになだれ込むのであった。
ママ「いい子ね。そう。服を脱ぎましょうね。」
寛太「ここどこ?」
ママ「ママのお部屋よ。さぁ。リラックスして。ピーッ。ピーッ。ピーッ。」
寛太「喉が渇いた」
ママ「はい。お水。口で、ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。」
寛太「うーっ」
ママ「ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ね」
寛太「えーっ」
ママ「ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。ピーッ。だわ」
寛太は、ピーッピーッピーッが、ピーッピーッピーッであった。
ママ「ピーッピーッピーッピーッピーッ。ピーッピーッ。ピーッピーッピーッ」
そのうち、ママは、ピーッピーッピーッピーッピーッピーッで、寛太をピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ。。。ピーッピーッピーッするのであった。
そして、ピーッピーッピーッピーッピーッは、ピーッピーッピーッピーッで、ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッが、ピーッピーッピーッピーッピーッピーッすると、ピーッピーッピーッピーッピーッの如く、意外にもピーッピーッピーッピーッのであった。
まったく、ピーッピーッピーッピーッに、ピーッピーッピーッピーッは、ピーッピーッピーッピーッピーッだ。ピーッピーッピーッのピーッピーッピーッによるピーッピーッピーッのためのピーッピーッピーッピーッピーッ。。。であったのだ。ピピピピーッ。

ついに、ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーピピピーーーッ。

ピーばかりじゃん
書けるか!こんな外伝。


※これは、ziziさんの「寛太さんの堕ちていきよう...攻めか受けか...この辺りは...どなたか外伝の外伝を(笑)。はいもう何が来ても大丈夫です。」を受けての悪ノリであります。

最近、曲を作るとか、そういうのまったく意欲が沸かない。暑いせいもあるけど、そんなことより、こっちがおもろいって思っちゃってるkankanでした。不埒なkankan、お許しを。残すとこ、SM?縛りでは昔ながらのトラック荷台でのロープの縛り方、南京できまっせ。最近はボックス多いから、必要ないとか、それ用の器具付きロープがあるってけど。いざとなったら、南京よ。ワイルドだろ?

返信 投稿者 投稿日時
 堕ちてゆく寛太様へ zizi 2012-9-10 20:44

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-9-10 12:27  更新日時: 2012-9-10 12:34
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
【ボツになったシーン裏話?】

いさこが教室でキリエを唱うシーン。
> 「いさこ先生、何か歌ってー」
> フォーレの小ミサ曲、「キリエ」を歌った。

別アングルのカメラでは、
じじが、教室の窓越しで密かに聴いているシーンが映し出される。
> その歌声が窓越しに聞こえて来た時…驚愕し、鳥肌が立った。
> いつの間にか涙を流している事に気付き慌てて袖で拭う。


実は、じじが聞き耳を立てていた、さらにその背後、
校庭の朝礼台の影から、司令官「由布 一」も、
「いさこぉ〜」
と涙を流しながら、聴き入っていたのであった。。。
・・・

カット!
zizi「うぅ〜ん、やっぱダメ! これじゃコメディになっちゃうよ、校長!」
yuu「そう? なら、朝礼台で訓示を垂れる校長の役での出演とか?」。
zizi「もう校長の出番はおしまい!」。
yuu「そんなぁ〜、さびしいぃ!(・_・、)」。

zizi「原案者ってことで、今回こんなに長編にしてあげたじゃない」。
yuu「だってぇ〜」。
zizi「主役の寛ちゃんが『いつ俺の出番が来るんだよ』ってイライラしてるんだから」。
yuu「そうなの?」。
zizi「校長はもういい大人なんだから我慢してよ。次はまこちゃんを撮るので忙しいの!」。
yuu「まこちゃん編は、私も楽しみ♪」。
zizi「でしょ? 密かに期待度ナンバーワンなんだから。あ、これ寛ちゃんにはナイショね」。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 校長先生へ zizi 2012-9-10 20:41

投稿者 スレッド
kimux
投稿日時: 2012-9-10 0:49  更新日時: 2012-9-10 0:49
登録日: 2004-2-11
居住地: 地球
投稿数: 6944
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
もう老眼なもんで、iPhone 等でも大きい字で読めるように EPUB 形式(リフロー可)にしてみました。ついでに Kindle の mobi 形式にも変換してみました。まだ iBooks 等では試してないんですが。

GBUC共有スペースの「水の空に眠る」フォルダに入れておきます。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: キム教授へ zizi 2012-9-10 20:39

投稿者 スレッド
投稿日時: 2012-9-9 15:30  更新日時: 2012-9-9 15:30
ドラえもん
登録日: 2006-11-11
居住地:
投稿数: 1270
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
うむむ、なんだかものすごい壮大なことになっとりますなあ。
いさこちゃんと校長とじじにはにはそんな背景があったのか。なるほどなるほど。
個々のエピソードからそこまで膨らませる力技、恐るべし。
この頃の学校では、唱歌の時間には、敵機の音の聞き分け訓練が行われていたはずです。
絶対音感と共感覚があって、音程に即した色が見えるいさこちゃんですから、その成績はずば抜けて優秀に違いない。

しかし、スピンアウトのほうの寛太さんの堕ちていきようがだたごとじゃないです。他人事ながら同情に堪えませんwww ←笑うな
>身を許してしまいました
ってしかもそれ、攻めじゃなくて、まさかの受け??寛太さんが??
更に、迫り来る近親○○シーン。
もうこの上、何が来ても怖くないかも。

…いいわね、何があっても気をしっかり持つのよっ。


親しい誰かが、急に目の前から(距離に関わらず)いなくなってしまうのは、堪えますね。その人がいないということを受け入れられるようになるまで、随分時間がかかります。殊に、触覚的な記憶が残っているのにその人はもういないという事実には、動揺させられます。
なぎこ姐さん、逢瀬の直後ですからね、密かに煩悶するのだろうな。
しかも死んだと思ってた寛太さんは島の娘と新たな展開に入りそうだし。
(本当は誰なんだろ、島の娘w)

それはおいといて、次はまこちゃんだ!
どんな得物を隠し持ってプチ家出するのでしょうか。
そこも楽しみであります。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 凪さんへ zizi 2012-9-9 21:43

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-9-9 2:29  更新日時: 2012-9-9 2:52
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
再びここに書き込むことができました。
昨夜はGBUC、なんどかサーバが落ちてませんでしたか?

ホントに「大作」、鯛が小説ですね。
あ、まちがえたw、大河小説ですね。
素晴らしかったです。

司令官と黒猫館主との対話が、
「男たちの戦艦○○」とかのタイトルが付きそうなドラマでも観てるように、
迫力ある描写でしたね。
ちょっと男二人は、暑苦しいですけどね(^-^;)

司令官は、もう「いさこ」とは関わりを持たないのでしょうかね?
若き日の司令官と、その恋人が唱い録音(どうやってだ?w)したテープは、
いさこの耳に、届くことは無いのでしょうか?
「いさこ篇」を期待しています♪


いさこが教室で、子供達にオルガンを弾き、唱った描写が良かったです。
個人的には、2006年NHKの朝ドラ「純情きらり」の
宮崎あおい演じる「有森桜子」が戦時中の代用教員として、
オルガンで「埴生の宿」を子供達に聞かせていたシーンと重なりました♪

なぎこネェさんが、寛太が海に墜ちたと、じじから聞いて、
「堪えようとした目から思わず泪がこぼれる」シーンも良かったですね〜。

それから、まこちゃんの
「え?ホント?まさか…あのオヤジ」と、西洋鍋を手に取るシーン!!!
「ちょっとバイク取ってくる」と合わせて、
まこちゃん、いい味出してますね〜〜♪
次回の「まこちゃん危機一髪」篇への期待が高まりますっ(笑)


「土蔵」の中に隠している「楽団が一式できる楽器類」は、
後にいろんな伏線がつながる感じがして、いいですね〜。
『この楽器を元に、軍部軍楽隊の有志が、先進的な音楽活動を始めた。
ぐんぶの、ゆうし(GunBuのUC)が始めたので、
暗号名「GBUC」と名付けられた。
・・・のちの平成の世になった時、軍部とは無関係であったが、
GarageBand Users ClubがGBUCと略称されたのも、
どこか因縁めいている・・・』、とか(笑)

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 校長先生へ zizi 2012-9-9 6:23

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-8 20:32  更新日時: 2012-9-8 21:58
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
寛太の自宅

寛太「話は戸田から聞いた」
シオナが、えらくご機嫌で、おニューの服を胸に当て、
ソファーに座る寛太のまわりを舞い踊っている。
シオナ「叔父ちゃん。この服、いいでしょ。かわいい?」
寛太「いいから。ここへ座んなさい」
シオナ「やだ。明日はライブ行くの。うーん。みやび」
寛太「なんで、zizi監督の要請を引き受けた?お前は姪で、オレは叔父だぞ」
シオナ「いいじゃん。別に。ドラマの上のことなんだから」
寛太「若い男女って、お前はいいさ。叔父さんは、お前の親父よりも年上なんだぞ」
シオナ「そうだね。ジャジャジャジャジャン。叔父ちゃん、決まってる?」
寛太「どう考えても、若い男女が、って無理があるだろ。zizi監督め、何考えてやがる」
寛太は、頭を抱えるのであった。
シオナ「叔父ちゃんもライブ、一緒に行こうよ。ポジティブになって」
寛太「お前、そんな英語、知ってるのか」
シオナ「バカにしないでよ。前向きってことでしょ」
寛太「じゃぁ、反対語は?」
シオナ「知らない。必要ないもん」
寛太は、ダウンライトにぶつかってもかまわず、踊るシオナを眺めながら、眩しいと思った。
シオナ「叔父ちゃん、アサコさんって知ってる?」
寛太「あぁ。美人歌手で、この間インタビューを受けた。お笑い芸人と勘違いされた」
シオナ「監督がね。アサコさんと、雅のライブに行っておいでって。チケットくれた」
寛太「それではしゃいでるのか。このビジュアル系が」
シオナ「でもね。私、前にアサコさんに会ったような気がするんだ」
寛太「会ってない。お前は渋谷のライブには。。。うん?アサコさんね。そうか。久々のアサコさんね」
シオナ「でも、忙しいんだって。今は神戸だっていうし」
寛太、急ぎ、zizi監督に電話する。コールするがなかなか出ない。
シオナ「ライブ、ライブ。行きたかった、愛しの雅様」
寛太「これで、シオナとラブシーンしないで済む。
お袋(シオナの祖母)も気絶しないで済む。妹(シオナの母)に罵倒されないで済む」
寛太は、もう、アサコさんは船に乗ったも同然。とことんやってから、後で謝ってもいいんじゃないのと思った。
それをzizi監督に伝えたかった。やっと出た。
寛太「もしもし。監督?。。。やっぱシオナは。。。
いやっ。忙しいから10月まで読まないし。。。
話を進めてしまえば、どうあったって観念するでしょ。
怒ったとき? 監督がまた土下座すればいいでしょ。
大丈夫ですって。。。えっ?監督らしくないなぁ。
やっちゃった者勝ち。そう。配慮。そうね。配慮は必要。
えっ?個人的に許せない?何?それ?私情でしょ。
えっ?もう役は決めてるって。。。内緒だって?
とにかく、シオナとのラブシーンはやだやだやだ。
お袋の血圧も気になるし、妹の目もこわい
シオナは、ひわたしに任せる」
と携帯電話を切った。

シオナ(目がうるんでいる)「叔父ちゃん」
寛太「な、なんだよ」
シオナ「そんなにシオナがイヤ?」
寛太「。。。そりゃ。。。おい、お前。計ったなぁ」
シオナ、泣き崩れる。泣きじゃくりながら、右手を開いて、寛太に差し出しているのであった。
シオナ、携帯電話を手に「お母さん。私は今日も叔父ちゃんに泣かされました。。。」
寛太「わかった。やめろ」
寛太、仕方なく千円札を、その手に置くのであった。

寛太は、ため息付きながら、トイレに向かった。
途中、客間で戸田が携帯電話を手にしてた。
戸田「ルカちゃん。なんでいつも同じ返事なの?僕は君を。。。」

戸田が恋愛?しかも相手は、監督のとこの。。。ボカロ?
リビングでは、シオナの「ライブ・ダンス」が始まっていた。

縁側では、秋の虫が鳴いていた。
寛太「いつの間に、秋かぁ。お母さん。許してください。自分は、ジビッシュのママに身を許してしまいました。ほんの気の緩みです」

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankanさんへ4 zizi 2012-9-8 23:42

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-8 16:56  更新日時: 2012-9-8 16:56
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
ぐひひっ。謝ってる、謝ってる。
kankanの分も、よろしく謝っといてね。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankanさんへ3 zizi 2012-9-8 17:24

投稿者 スレッド
Asako
投稿日時: 2012-9-8 13:13  更新日時: 2012-9-8 15:50
ドラえもん
登録日: 2006-7-15
居住地:
投稿数: 1102
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
こんにちは〜 お久しぶりです。

お話大変興味深く拝見しました。
(すいません、私は後ほどささこ役で登場とのことで、
この部分を修正しました汗)
今後皆様との絡みを楽しみにしております。
楽しみ反面、長くて読み切れておりませーん><
まだちょっと忙しいので、来月あたりに読み返します。
かなり先ですんません。。

そういえば、いさこって、YsaeKさんですか。
(すいません、私は後ほどささこ役で登場とのことで、
この部分を修正しました汗)
個人的にはシオナ様と絡みたいです。だって私たち仔雅なんだもん。

妄想で、皆さん登場して舞台劇したら面白いと思いました。
しかし設定と現実のギャップでコメディーと化すに違いない。
オフ会があったら実現するのか。
君は生きのびる事ができるか。

失礼しました。ではまた〜

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 美人歌手のAsakoさんへ zizi 2012-9-8 16:03

投稿者 スレッド
SCRAPS
投稿日時: 2012-9-7 22:39  更新日時: 2012-9-7 22:39
ターミネーター
登録日: 2007-1-27
居住地: 宮崎市
投稿数: 1424
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
おぉ〜、今回はちょっと読み応えのあるボリューム!
いまやこの大河小説(になるのか?)の更新を楽しみにしている私です。
そして出演者の面々によってコメント欄で繰り広げられるスピンオフもまた楽しいんですよね。それにBGMとして皆さんの音楽と結びつくのがGBUCならではであり、なかなか斬新で楽しいのです。
まるで映画を観ているようです。
もしまだ長く続くようなら私もBGMで参加してみたいなぁ。でも私の場合手が遅いので間に合わないかな。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: SCRAPSさんへ zizi 2012-9-8 6:03

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-7 20:40  更新日時: 2012-9-7 20:57
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
都内の場末のバー(と言っても新宿三丁目であることは想像に易い)
Bar「ジビッシュ」(GBUCを文字ったのも想像に易い)

店内には、古いジャズが流れている。
まだ早い時間なので、客はカウンターにひとり寛太だけだった。
もう20年以上の常連であった。
寛太「ママ。ロック、おかわり」
ママは、おかまだった。おかまだけど、いざとなったら腕っぷしはかなり凄い。
ママ「もう、こんな早い時間から。はい」
寛太「なんだよ。シングルじゃないか。ダブルに決まってるだろ」
ママ「もう、一休みしたら。はい。チェイサー」
寛太「そうめんが食べたい。そうだ。そうめん食べてない。ママ。そうめん」
ママ「まったくメンドくさい男ね。そのメンドくさいとこが好きなんだけど」
寛太「そうめん注文しただけで、何がメンドくさいだ。ぶっこわすぞ、こんな店」
ママ「いい子、いい子ね」(寛太の振り上げた手をさっと掴んで、ぎゅっと握るのであった)
寛太「ママ。いたい」
ママ「ごめんね。カンぴぉん。今日は悪い子だから」
(ママはまったくのプライベートでは寛太を「カンぴょん」と呼ぶのであった。この呼び方をされると、寛太は、一瞬理性的なる。パブロフの法則みたいに)
寛太「お仕置きは勘弁。きつい。わかった」
ママ「いい子、いい子。そうめん、作るから」
寛太は、カウンターにガクッとうなだれるのであった。
寛太「ママ」
ママ「なーに?」
寛太「コルトレーンっていいよな」
ママ「そうね。カンちゃんは、マイルス好きだものね」
ママは、通常、冷静なときには「カンちゃん」と呼ぶ。
寛太「ウェイン・ショーターが好きなんだけど、時々、無性にコルトレーンが聴きたくなる」
ママ「はい。そうめん。好きな卵焼きのスライスも入れたわよ」
寛太「だめだよ。金糸卵じゃ。」
ママ「わかってるわ」
寛太「ほんとだ、ぐじゅぐじゅのやわらかい玉子。ママ、ありがと」
寛太は、美味しそうに、そうめんをすするのであった。
ママ「例のドラマのお話していい?」
寛太「うん。いいよ。なんで、そんなこと訊くの?」ズルズルズル。きゅうりもさっぱり。やっぱ生姜のこの鼻に抜ける感じ。夏だ。
ママ「だって。暴れるとき、あるでしょ」
寛太「今日は暴れないよ」
ママ、小指を寛太に差し出す。
寛太「何よ」
ママ「や・く・そ・く」
寛太(ちぇっという顔で)「。。。」(小指を絡ませる)
ママ「いやん。感じちゃう」
寛太「これがしたかっただけだろ」
ママ「せっかく掴んだ連続ドラマ酒宴、あっ。主演。好評なのに、なんで浮かない顔してるの?こっちがよかったわって言っても、ムスッとして」
寛太「ママ。虚しいんだよ。ふーっ」(箸を置く)
店内に「奇妙な果実」が流れた。
ママ「この歌、好き」
寛太「ママは三島由紀夫の『憂国』知ってるよね」
ママ「映画も観たわ。ルルルルルッ」
寛太「明日、死を覚悟して、愛する人との別れの夜」
ママ「それで。ルルルルルッ」(ちょっと泣いてる)
寛太「zizi監督は、あんな、あんな、あっさりと、出陣前夜のシーンを流した。あるでしょ。もっと盛り上がる場面が」
ママ「ほんとにいいわ。奇妙な果実。よかったんじゃない、あれで。そもそも、そこで濡れ場じゃ、なぎこがOKしないでしょ」
寛太「リアリティが。。。ないと思うわけさ」
ママ「ぷっ。そんなこと気にしてたの。カンちゃんって可愛い。知ってるわよ。浜辺でzizi監督がOK出したのは、演技じゃなく、ほんとに熱射病で倒れてたって。ADの佐藤ちゃん。言ってたもの。カンちゃんって、自然、野生、野蛮。可愛い」
寛太「何が可愛いだ。オレは、オレは、リアルな人間模様というか、そういうのを演じたいだけで。。。」
ママ「今度は、島の美しい女性と濡れ場があるか、その相手の女性が誰か。そんなことばっかり考えてるんでしょ」
寛太「。。。ママ、何言ってる。オレは。オレは。。。」(図星だ、図星だ)一気にバーボンを飲み干す。
ママ「いいのよ。今夜は、カンぴょんの面倒、とことん見てア・ゲ・ル」

そこに、戸田から携帯に電話があった。
寛太「もすもすぃ。なんだよ。お前の電話でいい目にあったこと、ないぞ」
戸田「シ、シ、シオナちゃんが。。。」
寛太「な、何。zizi監督と。。。う、うそ。ほんとかよ」

寛太は思った。まったく厄介なもんを抱えてしまったと。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankanさんへ2 zizi 2012-9-8 5:56

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-9-7 11:12  更新日時: 2012-9-7 11:12
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
都内のとあるレストラン

シオナ「あぁ。美味しかった。デザート、何にしようかな」
寛太「デザート、食べたじゃないか」
シオナ「あんなメロンひと切れなんか、デザートなんかじゃない。あんなのいつでも食べられる」
寛太「まぁな。北海道のメロンの方がうまいしな」
シオナ「一番高いのどれかな」
寛太「いい加減にしろ。頭、茶色く染めちゃって。キャリーパムパムみたいじゃないか」
シオナ「言えてねぇし」
寛太「。。。パミパミ。。。パミュパム。。。」
シオナ「キモイ」
シオナ、眉間に皺を寄せて、目を薄めて、斜に構えて、寛太を見る。
寛太「その、おぞましいもんでも眺めるような目、やめろ」
シオナ「だって、キモイもん」
寛太「ひとの顔見りゃ、キモイ、キモイって。。。」
シオナ「叔父ちゃん。服買って。109行こう」
寛太「なんで、オレがお前に服買ってやらにゃ、ならん?」
シオナ「だって、いい演技だって褒めてくれたじゃん。ご褒美」
寛太「ご褒美は、このレストランだろ」
シオナ「えぇ? こんなのがご褒美?」
寛太「こんなって。ここいくらすると思ってんだ」
シオナ「知らない。ねっ?109行こ。肩車させてあげるから」
寛太「いらないよ。でかいケツしやがって」
シオナ「スケベ。キモイ。セクハラ。エロじじい」
寛太「声がでかい。まわりの人、見てるじゃないか」
シオナ「。。。だって。服買ってくれないんだもん。せっかく、かわいいシオナを叔父ちゃんに見てもらおうと思ったのに。。。」
シオナは、目に涙を浮かべて、しおらしくも悲しい少女を演じるのであった。
寛太内心語:やべっ。こいつ、泣いて、とりあえず1000円せしめようとしてるなぁ。泣く演技だけは絶品だ。
シオナ「もう、いい。北海道、帰る。叔父ちゃんのせいでひどい目にあったって、部屋に閉じこもってやる」
テーブルに顔を埋めて、泣きじゃくるシオナであった。
寛太「おい。シオナ。やめろ。わかった。わかったら、ちゃんとしろ」
シオナ、スルーッと、寛太に手を差し出す。
寛太、わかったという顔で、仕方なく1000円を、その手に渡す。
シオナ「あっ。デザート頼まなきゃ。すみませーん」(げんきんにも笑顔)
寛太「まだ、食べるのかよ」
シオナ「109何階だっけかなぁ。(携帯で調べる)えーと。叔父ちゃん。タクシーで行く?」
寛太「何処へ?」
シオナ「109。タクシーだったら、原宿寄って。アクセサリー、見たいのあるから」
寛太「まったく。勝手なヤツだな。それより、叔父さんの演技、どうだった?」
シオナ「演技?あぁ、浜辺で倒れているっての。別に」
寛太「その、微かな呼吸とか、アップのときの表情とか。。。」
シオナ「。。。寝てただけじゃん」
寛太「寝てただけ。。。」

そこに、戸田が登場。
戸田「いつまで、食事してるんですか」
寛太「今日はオフだろ」
戸田「寛太さんじゃなく、シオナ。CM撮影の衣装合せ」
シオナ「そうだっけ?」
戸田「そうだっけって、急いで。もう時間過ぎてる」
シオナ「えぇ。これから叔父ちゃんと買い物なの」
戸田「何言ってる。行くよ」
シオナ「やだ。買い物。ねぇ。叔父ちゃん、買い物だものねぇ」
寛太「仕事が大事だろ。戸田、ここ払っといて」
寛太内心語:いいとこに来たぞ、戸田。お前は救世主だ。
戸田「えぇ?これは経費じゃ落ちないよ。プライベートだろ」
寛太「戸田、ためぐちはやめろって言っただろ」
戸田「すみません。シオナ、連れて行きます」
シオナ「やだっ。絶対やだ。」
戸田、シオナに耳打ちで、ごそごそ言う。
シオナ、急に神妙になって、頷き始める。
戸田「さぁ。行くよ」
シオナ「はーい。叔父ちゃん、またね。」
戸田に手を引かれて席を立つ。
寛太「ごちそうさまは。。。」
シオナ「ごちそうさま」
戸田とシオナ、慌ただしく店を出て行く。

寛太「ふーっ。シオナは疲れる。それにしても戸田は誰のマネージャーなんだ」
店のフロア・スタッフ「失礼します」(と、レシートを差し出す)
寛太「いくら?」
店のフロア・スタッフ「1万6千300円です」
寛太、手持ちのキャッシュが足りないのに気付き、カードを中指と人差指で挟んで、スタッフに渡す。
寛太内心語:出費だ。シオナがこわい。それにしても戸田のヤツ。シオナをすっかり手懐けてるなぁ。
なんなんだ、あの豹変ぶりは。
店のフロア・スタッフ「失礼します」
寛太「サインかい?」
店のフロア・スタッフ「はい。それと、先ほどのお嬢様、店を出るとき、スイーツ・コーナーで、ケーキをご購入されまして、これもお客様に回してくれということですが、これもカードでお支払いなされますか?」
と、新たなレシートを差し出され、それを見て、寛太、びっくり。
寛太「こ、こんなに」
店のフロア・スタッフ「はい。なんか皆様でお召し上がりとかで。。。」
寛太「皆様? これは経費だろ。戸田のヤツ。。。カードで」

寛太は、冷たくなったコーヒーをすすった。

「寝てるだけ。寝てるだけの演技かぁ。さもありなん。あの炎天下で1時間以上、何度も倒れてて、シオナは何度もNG出しやがって。
それが<寝てるだけ>。熱射病なりかけたのも、シオナのNGのせいだぞ。。。
うーん。とりあえず、オレは生き残った。生き残って、島の美しい女性と出会うに違いない。
きっと、ふたりは恋に陥るに違いない。きっとラブシーンなんかもあるだろ。
誰だろ。相手は誰だろ。気になる。
シオナ? ふざけるな。そんなことがあってはならない。却下、却下。
えっ?濡れ場もあったりしちゃって。。。ぐひひっ」
店のフロア・スタッフ「お客様、お客様。」
寛太(気を取り直し、あわてて)「うん。サインかい」
店のフロア・スタッフ「実は、ドリンク・コーナーからもレシートが回ってきまして。。。」
寛太、ため息「あちゃぁー。。。カードで」
と、と、戸田ーーーーーーーーーーーーーーっ。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankanさんへ zizi 2012-9-7 18:43

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-9-7 10:04  更新日時: 2012-9-7 10:04
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 Re: zizi通信 07 「水の空に眠る」第四話
今職場からです・・・コソッと、一筆だけ(笑)

ziziさん、ありがとうございます!
お疲れさまでした!
素晴らしい力作です!
こうなりましたかぁ・・・、さすがです!

また時間が取れたら、コメント入れます。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: yuuichikさんへ zizi 2012-9-7 18:42

投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2012-9-7 4:06  更新日時: 2012-9-7 4:06
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3257
 Re: zizより
御参考までコメント欄での制作裏話に登場している本編登場人物以外の人を整理しました。

戸田:芸能事務所NAK社所属、寛太のマネージャー。
鈴木:監督助手その1、唐揚弁当事件で一旦クビになる。
佐藤:監督助手その2、会議で監督を援護せず不興を買う。
鈴木の彼女:地味な女子。
ルカ:ziziの仕事用邸宅に居るボカロちゃん。アンドロイドなのか?
九九社長:大スポンサー、りんご電算機株式会社社長。愛車はミ○・イース。
シオナ:寛太の姪っ子でNAK社一押し娘。もしかしたら本編最後辺りに登場してる?
アバター
«前の月次の月»
1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30
アクセス数
5601682 / 日記全体
最近のコメント
RSS配信
zizi さんの日記



GBUC x Google
SEARCH
   検索オプション

  
GBUCアーカイブ
PAYMENT
購読料を受け付けています。
年額2000円。


銀行振込も受け付けております。詳しくはこちら
ライブスケジュール
予定なし
iChat
iTunes Store TOP100
ASSOCIATE LINKS
LOG IN
ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失

新規登録

MAIN MENU

NEWS

NOW ONLINE...
99 人のユーザが現在オンラインです。 (29 人のユーザが ガレぶろ(BLOG) を参照しています。)

登録ユーザ: 0
ゲスト: 99

もっと...

LICENSE
creative commons lisence
当サイトの作品群は、
creative commons license
の下でLicenseされています。
当サイトのデフォルトCCは
表示ー非営利ー継承
です。

Apple User Group




SPONSOR


iPhone対応サイト