zizi さんの日記
2012
10月
12
(金)
05:36
本文
連載小説「水の空に眠る」の第六話です。
初めての方若しくは過去の話をお忘れの方へ。これまでの経緯、バックナンバー及び外伝、関連楽曲等は下記よりお読み頂ければと思います。
第一話〜第五話
yuuichikさんの外伝「君十七の月ほの暗く」
「À la fracture de jour」/SCRAPSさん
前回より私の手で改行を行わない事にしました。最近多い小さめのモニタ表示ですと妙な改行になり読みづらいかと思われますので、大変御手数で御座いますが、webブラウザのウィンドウをお好きな幅に調整して御覧頂ければと思います。
一応参考までに申し上げますと一行の文字数はこれでちょうど一行になるようテキストを書いてます。
主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。
樋渡干記 大陸帰りの従軍記者。過去経歴に謎の部分有り。
シオン 寛太が漂着した村の美しい娘
笹子 古ぼけた写真に写っていた女性。じじ昔の知人であるらしい。
(須倉氏出番無くすみません)
第六話は寛太のその後を交えつつ黒猫館奥の土蔵の秘密、そして主が語った過去...文中の『』はじじの回想による笹子のセリフを表しています。それでは始めます。
今回のオープニングテーマはこちら。
「彼方から」/Asakoさん
挿入歌にこちらをどうぞ。
「6月の空」/Asakoさん。
----------------------------------------------------------------------
「水の空に眠る」
第六話 笹子
1945年6月
黒猫館
戦況が思わしくなく、戦艦大和も沈んだらしい…こういった話は最近では街中でも囁かれており、それに伴い客脚も減りつつあったこの頃…なぎこ、いさこ、まこに加えて「土瓶屋」の主ぽとまん達は突然じじに呼ばれて座敷に集まっていた。黒猫館の主はおもむろに話を始める。
「今日は皆に見せたい物がある。付いて来てくれ。」
そう勿体ぶった言い方をして日頃決して人を近づけようとしなかった裏の土蔵へ案内した。大きな鍵を開け、重い扉を開く。つん…とした独特の臭いがする。期待と不安交じりに中に置かれた物に目をこらして見ると…その場にいた全員が目を見張った。
手前の方に置かれた食料品の奥には、アップライトピアノに蓄音機、ジャズやクラシックのSP盤。たくさんの楽器類に洋書の雑誌や楽譜類...普通では目にする事が出来ない、しかしその筋の者にとっては宝の山であった。
「色んな所からかき集めて来た。禁制品も含まれてるが...もういいだろう。この戦争はもうそんなに長くは続かないさ...戦争が終わればここの商売もやっては行けないし、そもそも皆もここにいる理由が無い。それに、もうしばらく客も少ないだろう。これからは、時間がある時は皆好きに使ってくれ。」
「凄い...」「これ何だろう?」
なぎこを初め、興味がある物をそれぞれに手に取る。皆の目は今が戦時中である事を忘れたかのように輝いていた。
「私も使わせて貰って良いんですかい?こりゃ珍しく太っ腹だねぇ、旦那。」
ぽとまんが少しおどけた調子でそう言いながらピアノの蓋を開けたその時、鍵盤の上に三人の姿が写った古ぼけた一枚の写真があるのを発見した。
「じじの旦那、何かありましたよ。おっ。若い頃の旦那だね。それと二枚目の方ともう一人…へぇ〜、誰だいこの別嬪さんは?」
「え、私にも見せて...あっ」
興味ありそうに覗き込んだなぎこが声を上げる。
「え?なぎこサン、前に見せてもらった事あんの?」
「あ、いえ…ごめんなさい、この前偶然見ちゃったんです…夜中に目が覚めて…そしたら灯りがついてて、誰か起きてるの?って不思議に思って..その時、帳場の机でじじさん突っ伏して寝てて…大丈夫かなと思ってこっそり後ろから覗いたら、その写真が脇にあったんです…私もいつか聞こうと思ってたんですけど、そのおきれいな方...奥様かどなたかですか?」
(おお、なぎこサン、よくぞ言って下さった。今のなぎこサンに言われちゃあ流石の旦那も口を割るに違いねぇ…)ぽとまんは内心ほくそえんだ。
「いいや…違うよ。俺は独り身さ。まあ、これもいい機会かも知んないね。これは…その女の人は笹子さんと言ってね…若い頃の知り合いで、ピアノを勉強してたんだ。凄く上手だったよ。」
「惚れてたんでショ?」
わざとおどけて言うぽとまん。なぎこが皆の気持ちを代弁するかのように口を開いた。
「そういえばじじさん、以前から一度聞こうと思ってたんですけれど、以前確か軍楽隊にいらしたんですよね?でも今は...人前で絶対演奏しようとされませんよね…言い辛かったらよろしいんですけれど、何かその、理由がおありなんですか?」
黒猫館の主はこれまで見た事も無いような複雑な表情を一瞬見せ、長い独白が始まった…
「ああ、古い話だけどね…彼女のピアノが大好きだった…
俺が昔軍楽隊に居たのは話したっけね。30年位前...第一次大戦の頃なんだけど、この写真の...男の方はそん時の同期さ。名前は舞田蹴人、皆マイケルって呼んでた。入隊して一番最初の任地は大阪警備府で、そこで俺達は初めて笹子さんと会ったんだ。
『こんにちは、笹子と申します。本日は宜しく御願い致します。』
いかにも楚々とした感じの...色白のお嬢さんでね。俺とマイケルは二人で顔見合わせてオドオドしたもんさ。その時の団長が笹子さんの師匠と知り合いだってんで、見学に来てたらしい。当時にしちゃ珍しい色んな楽器があったからね。で、歳が近そうな俺とマイケルが紹介されたんだ。施設を案内してあげてくれって頼まれて。定期的に稽古でこちらに来てるって事だったよ。
『うふふ。お二人とも...面白い方ですね...今まで私の廻りには居ませんでした。』
その後も笹子さんが近くにくる度に三人で会ってたのさ。そりゃ気を惹こうと思って必死でね、マイケルと俺はいつも彼女が喜びそうな事を一生懸命考えてた。今思えばあの頃が一番楽しかったかもしんないね。で、時にはピアノ弾いてくれたり、教えてもらったりする様になって。時折、笹子さんが自分で創った曲をピアノ弾きながら歌って聴かせてくれたんだけど、これが俺達は大好きでね。俺とマイケルは二人してあれ歌ってくれってせがんだりしてたもんだったよ...だけど、俺にはすぐにわかったね。二人は好きあってるって。だから、途中からはさ、俺用事があるから先に帰るって言ってさ、二人きりにさせて、一人暇潰して部隊に戻ったりしてたんだ。でもすぐに...
『どうして...あなた達が...行かないといけないんですか...?』
第一次世界大戦が始まって、俺達は青島(中国山東半島)へ派遣される事になったんだ。これにはちょっと訳があったんだが…まあそれはもう良いさ。当時はまだドンパチは今より少なかったから、後学の為見ておきなさいって程度の事だったんだろうよ。笹子さん港まで見送りに来てくれてさ。選抜されたんだから名誉な事なんだ、すぐに帰ってくるからって俺達は言ったんだけど、船を見送りながら彼女はとても不安そうな顔してたよ。青島は...結果的には勝ち戦だったんだが…」
じじは遠い目をして続けた。
笹子さんの不安は最悪の状態で的中したんだ。そこで、俺たちの居た場所の近くに敵の砲弾が落ちてしまって…マイケルは俺を庇って…俺の身代わりになって死んだのさ。その時の傷のせいで今でも脚がいう事きかねぇ...結局青島の戦いは一週間位で終わって、程なく帰国した。
『もう...お話する事はありません...』
凱旋帰国だったんだけど、マイケルの戦死の知らせはもう届いてて...笹子さんは会ってはくれなかったね。勿論何度も謝りに行ったよ。仕舞いには親御さんの方が申し訳なさそうにされたりして。
『今はピアノの練習に打込もうと思います。母が...心配するから...』
で、しばらくして何とか話してくれるようになったんだけど、いつもピアノばかり弾いてるみたいだった。最初はあんまり言葉も続かなくて…よく泣いてだんだけど、一生懸命慰めたつもりだった。それで少しづつ...心を開いてくれるようになって...以前のように話が出来てって...俺は思ってたんだ。徐々に笑顔も見せてくれるようになってたし。
『じじさん、いつもありがとうございます...』
俺も若かったよ。自分も元々憎からず思ってたからさ、笹子さんの事が段々ね...大事に思えて来て。そんな事出来る訳ないのに、分かってるはずなのに、マイケルの代わりに俺がって思ってしまってたさ。
『最近、よく雨が降りますね...』
で、一年位経った頃だったかね… 六月の雨の日だった。会いに行って言ったんだよ、俺と所帯持ちませんかってね。それまで他愛も無い話…音楽の事や最近の家族の話なんか微笑みながら話してくれてたんだけど、表情が急に変わってね。
『…ごめんなさい、それは出来ません』
って言われて。ああ、やはりまだマイケルの事想ってるんだって思ったけんだど、俺もその時はね。真剣なつもりだったから…自分に幸せにさせて下さいって言ったんだよ。そしたら...
今でも…いや、一生忘れる事が出来ませんよ、その時の彼女の言葉...
『優しい言葉をかけて頂いてどうもありがとうございます。でも...貴方と居ると、どうしてもマイケルの事を思い出してしまう...貴方のせいじゃない、戦争が悪いんだってわかってます。でも…
こんなに愛おしく思ってるのにあの人はもう居ない…どうして?…もしもあの時…じじさん...こんな事考えちゃいけないってわかってるのに... どうしても...思ってしまうんです……』
しばらく沈黙した後、突然涙を流して…私を見て...笹子さんこう言ったんだ…
『貴方が代わりに死ねば良かったのに!』
そう言って彼女は雨に濡れながら帰って行ったよ。その後俺も脚の怪我もあって除隊したのさ。そしてもう...俺は音楽をやめた。
その後、手紙が届いた。日本に居る事はもう出来ないので西洋音楽の本場、欧州で勉強するつもりですって。それから何度か便りがあったけど...有名な楽団と演奏した事なんかもあったらしい。最後の手紙はこの戦争が始まる前、ベルリンからだった...」
校長先生仕込みの世界情勢をじじから聞かされていた皆、5月に全面降伏したナチス・ドイツの首都ベルリンが今どういう状態にあるかを知っており、土蔵は重い空気に包まれた。が、ぽとまんが唐突に尋ねる。
「旦那、以前欧州に行った事あるって言ってたけどあれって…まさか…」
「........」
じじは黙っていた。皆何と言って良いか判らず誰も口を開く事が出来なかった。その時…
「ぐうっっ」と誰かの腹の虫が鳴った。一同思わず笑いの渦が起こる。
顔を赤くしてうつむくいさこに気付いたじじがまこに目配せをし、まこが明るく叫ぶ。
「ごめんなさ〜い!ちょっとお腹が空いちゃって…じじさん、何か食べ物ないの〜」
「すまないね、ひもじい思いさせちまって…もうすぐお客さんが来る頃なんだが…」
その時土蔵の扉をコンコンと叩く音がして、じじは用心しながら扉を少し開いた。
外には由布司令官と最近基地に来たらしい従軍記者の樋渡の姿が見える。
「や、皆様お揃いのようですな。主、今日はお招き頂き感謝します。あ、これは従軍記者の樋渡と言います。信頼の置ける人物で、お忍びの際の護衛役を引き受けてもらっております。」
「どうも。樋渡干記と申します。いやしかしこれは凄いですね…」
「今日は料亭はお休みですか、それじゃ、我々も一つ仲間に入れて頂いて宜しいかな?」
と言いながら手にしていた荷物を一つほどいて何やら取り出した。
「皆さんに召し上がってもらおうと思って持ってきてたんですよ。さ、ご遠慮無くどうぞ。」
いさことまこが同時に声を上げる。
「わあっ、おいしそう!」
「大福じゃなくてカステーラだ!」
土蔵には急に明るさが戻った。さすが校長先生ね、と久しぶりにはしゃぎながらカステーラを頬張るなぎこ達を横目で見ながら、じじは胸中に思いを巡らせた。戦後の事、そして遠いベルリンの空…
終戦二ヶ月前のこの日、黒猫館の玄関には「休館致します」との掛札がかかり、土蔵の中では夜遅くまで楽しげな音楽が鳴り止まなかった。
--------------------------------------
翌日朝
奄美大島海辺の村
寛太の若い身体はまだ回復には程遠い状態であった。
朝日を感じ、目が覚める。まだ頭の中は薄くもやがかかったような感じがして、気分が優れない。どうやら自分の名前は「寛太」というらしい…下帯にそう書いてあったので判ったのだそうだが、その他の衣服は血糊で汚れていたため、治療の際に切り刻まなくてはならず、捨ててしまったらしい。荷物は全然無かったらしいから、身分の手掛りが無い、との事だった。ぼんやりと戦争中だった、との認識はあるのだがよく覚えていない。村長はとにかく今は何も考えずに体を休めて療養しておけば良い、と言ってくれる。ここの村の人達は親切だ。
「今日も良い天気ですよ…何処か具合の悪い所はありませんか?」
「ああ...以前よりは...少しはマシだ...」
「そうですか...包帯を取り替えますね。」
「いつもすまない...よろしく頼む...」
特に私の看護をしてくれているシオンという娘。いつもこの笑顔に接すると、少し痛みが和らぐような気がする。
「足が…少し痺れている…」
固定具と包帯にきつく縛られた足が痺れてむず痒くなる。そう意思表示すると、医師の娘として看護の知識があるシオンは穏やかな表情で優しく、しかし適切に擦って緩和してくれるのだった。ここは空襲も無く、傷を癒すには良い場所であるらしい…シオンの表情を何となく眺めながら、いつしか寛太はまどろんでいた。
-続く-
----------------------------------------------------------------------
この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。「spring」/Asakoさん
あとがき
特別出演頂きました「笹子」演じるAsakoさん、どうもありがとうございました。「青島の戦い」は第一次世界大戦時、1914年の事です。この時中国の青島はドイツ帝国の拠点であり、日本は当時イギリスとの連合軍で攻撃、激しい砲撃線の末一週間程で陥落させています。この時のドイツ人捕虜は後に徳島県の板東俘虜収容所に収容され、人道的な処置を受けます。ここのオーケストラによってベートーヴェンの交響曲第9番が日本で初めて全曲演奏され、「バルトの楽園」という映画の元になっています。第二次世界大戦では敵味方入れ替わり...というのは大きな時代の奔流を感じます...あ、次回は「いさこ編」、いさこの得意技が炸裂します(たぶん)。
あとがきのあとがき
1945年ベルリンに...というと何となく先日gigoさんがガレブロで御紹介されてあった「諏訪根自子」さんと彷彿とさせますが、ziziはこの回の執筆は一月前にはほぼ終えておりその時点ではこの方の存在を全く知りませんでした。9月24日に一斉に報じられてから存在と経歴を知りかなり愕然としました。正に「事実は小説よりも奇なり」です。
しかしgigoさんへのコメントでひわたしさんが書かれていた事...諏訪嬢の黒猫館来訪...目撃者はやはり存在したのか...
初めての方若しくは過去の話をお忘れの方へ。これまでの経緯、バックナンバー及び外伝、関連楽曲等は下記よりお読み頂ければと思います。
第一話〜第五話
yuuichikさんの外伝「君十七の月ほの暗く」
「À la fracture de jour」/SCRAPSさん
前回より私の手で改行を行わない事にしました。最近多い小さめのモニタ表示ですと妙な改行になり読みづらいかと思われますので、大変御手数で御座いますが、webブラウザのウィンドウをお好きな幅に調整して御覧頂ければと思います。
一応参考までに申し上げますと一行の文字数はこれでちょうど一行になるようテキストを書いてます。
主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。
樋渡干記 大陸帰りの従軍記者。過去経歴に謎の部分有り。
シオン 寛太が漂着した村の美しい娘
笹子 古ぼけた写真に写っていた女性。じじ昔の知人であるらしい。
(須倉氏出番無くすみません)
第六話は寛太のその後を交えつつ黒猫館奥の土蔵の秘密、そして主が語った過去...文中の『』はじじの回想による笹子のセリフを表しています。それでは始めます。
今回のオープニングテーマはこちら。
「彼方から」/Asakoさん
挿入歌にこちらをどうぞ。
「6月の空」/Asakoさん。
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「水の空に眠る」
第六話 笹子
1945年6月
黒猫館
戦況が思わしくなく、戦艦大和も沈んだらしい…こういった話は最近では街中でも囁かれており、それに伴い客脚も減りつつあったこの頃…なぎこ、いさこ、まこに加えて「土瓶屋」の主ぽとまん達は突然じじに呼ばれて座敷に集まっていた。黒猫館の主はおもむろに話を始める。
「今日は皆に見せたい物がある。付いて来てくれ。」
そう勿体ぶった言い方をして日頃決して人を近づけようとしなかった裏の土蔵へ案内した。大きな鍵を開け、重い扉を開く。つん…とした独特の臭いがする。期待と不安交じりに中に置かれた物に目をこらして見ると…その場にいた全員が目を見張った。
手前の方に置かれた食料品の奥には、アップライトピアノに蓄音機、ジャズやクラシックのSP盤。たくさんの楽器類に洋書の雑誌や楽譜類...普通では目にする事が出来ない、しかしその筋の者にとっては宝の山であった。
「色んな所からかき集めて来た。禁制品も含まれてるが...もういいだろう。この戦争はもうそんなに長くは続かないさ...戦争が終わればここの商売もやっては行けないし、そもそも皆もここにいる理由が無い。それに、もうしばらく客も少ないだろう。これからは、時間がある時は皆好きに使ってくれ。」
「凄い...」「これ何だろう?」
なぎこを初め、興味がある物をそれぞれに手に取る。皆の目は今が戦時中である事を忘れたかのように輝いていた。
「私も使わせて貰って良いんですかい?こりゃ珍しく太っ腹だねぇ、旦那。」
ぽとまんが少しおどけた調子でそう言いながらピアノの蓋を開けたその時、鍵盤の上に三人の姿が写った古ぼけた一枚の写真があるのを発見した。
「じじの旦那、何かありましたよ。おっ。若い頃の旦那だね。それと二枚目の方ともう一人…へぇ〜、誰だいこの別嬪さんは?」
「え、私にも見せて...あっ」
興味ありそうに覗き込んだなぎこが声を上げる。
「え?なぎこサン、前に見せてもらった事あんの?」
「あ、いえ…ごめんなさい、この前偶然見ちゃったんです…夜中に目が覚めて…そしたら灯りがついてて、誰か起きてるの?って不思議に思って..その時、帳場の机でじじさん突っ伏して寝てて…大丈夫かなと思ってこっそり後ろから覗いたら、その写真が脇にあったんです…私もいつか聞こうと思ってたんですけど、そのおきれいな方...奥様かどなたかですか?」
(おお、なぎこサン、よくぞ言って下さった。今のなぎこサンに言われちゃあ流石の旦那も口を割るに違いねぇ…)ぽとまんは内心ほくそえんだ。
「いいや…違うよ。俺は独り身さ。まあ、これもいい機会かも知んないね。これは…その女の人は笹子さんと言ってね…若い頃の知り合いで、ピアノを勉強してたんだ。凄く上手だったよ。」
「惚れてたんでショ?」
わざとおどけて言うぽとまん。なぎこが皆の気持ちを代弁するかのように口を開いた。
「そういえばじじさん、以前から一度聞こうと思ってたんですけれど、以前確か軍楽隊にいらしたんですよね?でも今は...人前で絶対演奏しようとされませんよね…言い辛かったらよろしいんですけれど、何かその、理由がおありなんですか?」
黒猫館の主はこれまで見た事も無いような複雑な表情を一瞬見せ、長い独白が始まった…
「ああ、古い話だけどね…彼女のピアノが大好きだった…
俺が昔軍楽隊に居たのは話したっけね。30年位前...第一次大戦の頃なんだけど、この写真の...男の方はそん時の同期さ。名前は舞田蹴人、皆マイケルって呼んでた。入隊して一番最初の任地は大阪警備府で、そこで俺達は初めて笹子さんと会ったんだ。
『こんにちは、笹子と申します。本日は宜しく御願い致します。』
いかにも楚々とした感じの...色白のお嬢さんでね。俺とマイケルは二人で顔見合わせてオドオドしたもんさ。その時の団長が笹子さんの師匠と知り合いだってんで、見学に来てたらしい。当時にしちゃ珍しい色んな楽器があったからね。で、歳が近そうな俺とマイケルが紹介されたんだ。施設を案内してあげてくれって頼まれて。定期的に稽古でこちらに来てるって事だったよ。
『うふふ。お二人とも...面白い方ですね...今まで私の廻りには居ませんでした。』
その後も笹子さんが近くにくる度に三人で会ってたのさ。そりゃ気を惹こうと思って必死でね、マイケルと俺はいつも彼女が喜びそうな事を一生懸命考えてた。今思えばあの頃が一番楽しかったかもしんないね。で、時にはピアノ弾いてくれたり、教えてもらったりする様になって。時折、笹子さんが自分で創った曲をピアノ弾きながら歌って聴かせてくれたんだけど、これが俺達は大好きでね。俺とマイケルは二人してあれ歌ってくれってせがんだりしてたもんだったよ...だけど、俺にはすぐにわかったね。二人は好きあってるって。だから、途中からはさ、俺用事があるから先に帰るって言ってさ、二人きりにさせて、一人暇潰して部隊に戻ったりしてたんだ。でもすぐに...
『どうして...あなた達が...行かないといけないんですか...?』
第一次世界大戦が始まって、俺達は青島(中国山東半島)へ派遣される事になったんだ。これにはちょっと訳があったんだが…まあそれはもう良いさ。当時はまだドンパチは今より少なかったから、後学の為見ておきなさいって程度の事だったんだろうよ。笹子さん港まで見送りに来てくれてさ。選抜されたんだから名誉な事なんだ、すぐに帰ってくるからって俺達は言ったんだけど、船を見送りながら彼女はとても不安そうな顔してたよ。青島は...結果的には勝ち戦だったんだが…」
じじは遠い目をして続けた。
笹子さんの不安は最悪の状態で的中したんだ。そこで、俺たちの居た場所の近くに敵の砲弾が落ちてしまって…マイケルは俺を庇って…俺の身代わりになって死んだのさ。その時の傷のせいで今でも脚がいう事きかねぇ...結局青島の戦いは一週間位で終わって、程なく帰国した。
『もう...お話する事はありません...』
凱旋帰国だったんだけど、マイケルの戦死の知らせはもう届いてて...笹子さんは会ってはくれなかったね。勿論何度も謝りに行ったよ。仕舞いには親御さんの方が申し訳なさそうにされたりして。
『今はピアノの練習に打込もうと思います。母が...心配するから...』
で、しばらくして何とか話してくれるようになったんだけど、いつもピアノばかり弾いてるみたいだった。最初はあんまり言葉も続かなくて…よく泣いてだんだけど、一生懸命慰めたつもりだった。それで少しづつ...心を開いてくれるようになって...以前のように話が出来てって...俺は思ってたんだ。徐々に笑顔も見せてくれるようになってたし。
『じじさん、いつもありがとうございます...』
俺も若かったよ。自分も元々憎からず思ってたからさ、笹子さんの事が段々ね...大事に思えて来て。そんな事出来る訳ないのに、分かってるはずなのに、マイケルの代わりに俺がって思ってしまってたさ。
『最近、よく雨が降りますね...』
で、一年位経った頃だったかね… 六月の雨の日だった。会いに行って言ったんだよ、俺と所帯持ちませんかってね。それまで他愛も無い話…音楽の事や最近の家族の話なんか微笑みながら話してくれてたんだけど、表情が急に変わってね。
『…ごめんなさい、それは出来ません』
って言われて。ああ、やはりまだマイケルの事想ってるんだって思ったけんだど、俺もその時はね。真剣なつもりだったから…自分に幸せにさせて下さいって言ったんだよ。そしたら...
今でも…いや、一生忘れる事が出来ませんよ、その時の彼女の言葉...
『優しい言葉をかけて頂いてどうもありがとうございます。でも...貴方と居ると、どうしてもマイケルの事を思い出してしまう...貴方のせいじゃない、戦争が悪いんだってわかってます。でも…
こんなに愛おしく思ってるのにあの人はもう居ない…どうして?…もしもあの時…じじさん...こんな事考えちゃいけないってわかってるのに... どうしても...思ってしまうんです……』
しばらく沈黙した後、突然涙を流して…私を見て...笹子さんこう言ったんだ…
『貴方が代わりに死ねば良かったのに!』
そう言って彼女は雨に濡れながら帰って行ったよ。その後俺も脚の怪我もあって除隊したのさ。そしてもう...俺は音楽をやめた。
その後、手紙が届いた。日本に居る事はもう出来ないので西洋音楽の本場、欧州で勉強するつもりですって。それから何度か便りがあったけど...有名な楽団と演奏した事なんかもあったらしい。最後の手紙はこの戦争が始まる前、ベルリンからだった...」
校長先生仕込みの世界情勢をじじから聞かされていた皆、5月に全面降伏したナチス・ドイツの首都ベルリンが今どういう状態にあるかを知っており、土蔵は重い空気に包まれた。が、ぽとまんが唐突に尋ねる。
「旦那、以前欧州に行った事あるって言ってたけどあれって…まさか…」
「........」
じじは黙っていた。皆何と言って良いか判らず誰も口を開く事が出来なかった。その時…
「ぐうっっ」と誰かの腹の虫が鳴った。一同思わず笑いの渦が起こる。
顔を赤くしてうつむくいさこに気付いたじじがまこに目配せをし、まこが明るく叫ぶ。
「ごめんなさ〜い!ちょっとお腹が空いちゃって…じじさん、何か食べ物ないの〜」
「すまないね、ひもじい思いさせちまって…もうすぐお客さんが来る頃なんだが…」
その時土蔵の扉をコンコンと叩く音がして、じじは用心しながら扉を少し開いた。
外には由布司令官と最近基地に来たらしい従軍記者の樋渡の姿が見える。
「や、皆様お揃いのようですな。主、今日はお招き頂き感謝します。あ、これは従軍記者の樋渡と言います。信頼の置ける人物で、お忍びの際の護衛役を引き受けてもらっております。」
「どうも。樋渡干記と申します。いやしかしこれは凄いですね…」
「今日は料亭はお休みですか、それじゃ、我々も一つ仲間に入れて頂いて宜しいかな?」
と言いながら手にしていた荷物を一つほどいて何やら取り出した。
「皆さんに召し上がってもらおうと思って持ってきてたんですよ。さ、ご遠慮無くどうぞ。」
いさことまこが同時に声を上げる。
「わあっ、おいしそう!」
「大福じゃなくてカステーラだ!」
土蔵には急に明るさが戻った。さすが校長先生ね、と久しぶりにはしゃぎながらカステーラを頬張るなぎこ達を横目で見ながら、じじは胸中に思いを巡らせた。戦後の事、そして遠いベルリンの空…
終戦二ヶ月前のこの日、黒猫館の玄関には「休館致します」との掛札がかかり、土蔵の中では夜遅くまで楽しげな音楽が鳴り止まなかった。
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翌日朝
奄美大島海辺の村
寛太の若い身体はまだ回復には程遠い状態であった。
朝日を感じ、目が覚める。まだ頭の中は薄くもやがかかったような感じがして、気分が優れない。どうやら自分の名前は「寛太」というらしい…下帯にそう書いてあったので判ったのだそうだが、その他の衣服は血糊で汚れていたため、治療の際に切り刻まなくてはならず、捨ててしまったらしい。荷物は全然無かったらしいから、身分の手掛りが無い、との事だった。ぼんやりと戦争中だった、との認識はあるのだがよく覚えていない。村長はとにかく今は何も考えずに体を休めて療養しておけば良い、と言ってくれる。ここの村の人達は親切だ。
「今日も良い天気ですよ…何処か具合の悪い所はありませんか?」
「ああ...以前よりは...少しはマシだ...」
「そうですか...包帯を取り替えますね。」
「いつもすまない...よろしく頼む...」
特に私の看護をしてくれているシオンという娘。いつもこの笑顔に接すると、少し痛みが和らぐような気がする。
「足が…少し痺れている…」
固定具と包帯にきつく縛られた足が痺れてむず痒くなる。そう意思表示すると、医師の娘として看護の知識があるシオンは穏やかな表情で優しく、しかし適切に擦って緩和してくれるのだった。ここは空襲も無く、傷を癒すには良い場所であるらしい…シオンの表情を何となく眺めながら、いつしか寛太はまどろんでいた。
-続く-
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この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のものとは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。「spring」/Asakoさん
あとがき
特別出演頂きました「笹子」演じるAsakoさん、どうもありがとうございました。「青島の戦い」は第一次世界大戦時、1914年の事です。この時中国の青島はドイツ帝国の拠点であり、日本は当時イギリスとの連合軍で攻撃、激しい砲撃線の末一週間程で陥落させています。この時のドイツ人捕虜は後に徳島県の板東俘虜収容所に収容され、人道的な処置を受けます。ここのオーケストラによってベートーヴェンの交響曲第9番が日本で初めて全曲演奏され、「バルトの楽園」という映画の元になっています。第二次世界大戦では敵味方入れ替わり...というのは大きな時代の奔流を感じます...あ、次回は「いさこ編」、いさこの得意技が炸裂します(たぶん)。
あとがきのあとがき
1945年ベルリンに...というと何となく先日gigoさんがガレブロで御紹介されてあった「諏訪根自子」さんと彷彿とさせますが、ziziはこの回の執筆は一月前にはほぼ終えておりその時点ではこの方の存在を全く知りませんでした。9月24日に一斉に報じられてから存在と経歴を知りかなり愕然としました。正に「事実は小説よりも奇なり」です。
しかしgigoさんへのコメントでひわたしさんが書かれていた事...諏訪嬢の黒猫館来訪...目撃者はやはり存在したのか...
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投稿者 | スレッド |
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岡田洲武 | 投稿日時: 2012-10-21 17:11 更新日時: 2012-10-21 17:11 |
登録日: 2010-7-2 居住地: 木の上 投稿数: 1741 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 すみません。
僕は文字で表現される読み物が苦手で ほとんど小説的なのを文字で見れない性分です ドキュメンタリー的な物は嫌いではないのですが。 ただ、ラジオドラマは興味があります。 僕のようなものにも伝わってくるものが ある気がします。 楽しみにしてます。 |
返信 | 投稿者 | 投稿日時 |
---|---|---|
Re[2]: kooさんへ | zizi | 2012-10-21 20:39 |
投稿者 | スレッド |
---|---|
kimux | 投稿日時: 2012-10-21 12:59 更新日時: 2012-10-21 12:59 |
登録日: 2004-2-11 居住地: 地球 投稿数: 6944 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 > 寛太「うわっ。星空、きれいだよ。見てごらん。オリオン座」
オリオン座といえば、今晩、オリオン座流星群が極大となります。 http://www.astroarts.co.jp/alacarte/2012/201210/1021b/index-j.shtml |
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Re[2]: キム教授へ | zizi | 2012-10-21 17:08 |
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yuuichik | 投稿日時: 2012-10-21 11:51 更新日時: 2012-10-21 11:59 |
校長 登録日: 2004-2-16 居住地: 投稿数: 2404 |
スクープ!ラジオドラマ「水の空に眠る」か!? ここでのコメントを転記します(笑)【妄想的追加あり】
・・・もうここまで来たら! 小説「水の空に眠る」ラジオドラマをやりますか!?(笑) もちろんナレーションは、なぎこの声を兼ねる凪さんで♪ (使い分け得意そうだしw) 【妄想新聞 零号】 第八話あたりで最終話となる予定の「水の空に眠る」。 好評のうちの最終話は、なんとラジオドラマでの発表となるらしい。 今や小説家として、また妄想的映画監督として飛ぶ鳥を落とす勢いのzizi監督。 今度はラジオドラマ作家としての肩書きも加えるらしい。 ラジオドラマの脚本もすでに執筆中であり、 主要声優との出演交渉も順調に進んでいるとのこと。 中心となるナレーターのなぎこには破格の出演料で交渉中。 zizi監督はGBUCの歴史の中に、常に新風を吹き入れる! |
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ゆ、由布校長先生へ。 | zizi | 2012-10-21 16:58 |
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kankan | 投稿日時: 2012-10-18 22:55 更新日時: 2012-10-18 23:39 |
TheKanders 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
「水の空に眠る」第六話裏話、「オマタとふたりきり?」 ホテル支配人「いやぁ。間様、すごい盛り上がりです」
寛太「そじゃろ。見ろ。あれが息子のRyuji。あの踊りまくってるのが姪っ子のシオナ。がははっ。愉快愉快。かゆい。ドンペリ、持ってこーい」 ホテルの地下はちょっとした小ホールになっていて、備え付けのカウンターで気軽に飲むこともできた。一応、貸切で宴会を開いたが、人数が少ないので、オープンにしたら、宿泊客が、物珍しくも集まってきた。 寛太「みんな。ノッてるかい。カウンターで飲みたいもの注文してねぇ。間寛太の奢りじゃぁ」 ホテル支配人「皆様、間寛太様から皆様にということで、お飲み物をご用意しております。カウンターの方でご自由にご注文ください」 やんや、やんや。 寛太「おっと小粋なおねぇ様。えっ!85歳。見えない見えない。銀恋、一緒にうたいましょ。Ryuji、銀恋やれぁ」 Ryuji「できねぇよ。そんなん。カラオケ入れるから、勝手にやって」 寛太「よっしゃ。おねぇ様。いこいこ。♪たらーらら、たらーらら♪」 ♪こころーのそこーから、しびれるよーな♪ おねぇ様、すてき。ちゅっ! 寛太「あれ?ひわたしちゃんじゃない。どちたの?」 樋渡干記「冷蔵庫で、ロケロしてた。ひどいじゃない。温泉であったまって、いま、絶好調」 寛太「よっしゃ。焼酎ロックやろ」 http://gbuc.net/modules/myalbum/photo.php?lid=12467&cid=13 樋渡干記「♪薩摩白波黒白波♪」 寛太「♪なんて奇麗な島美人(拝み倒しの観音さん♪」 みんなぁ。飲んでるかーーーーーーーーーい みんなぁ。今日は、ここを中心に世界がまわっているんだ^^^よーーっ 楽しい夜だった。 heroheroheroheroheroheroheroheroheroheroheroheroherohero 波の音で目覚めた。あまりにも静かなので目覚めたといってもいい。 不安になるぐらい。そうか、ここは伊豆のホテルかぁ。午後2時。 徐に受話器を取って。303っと。 オマタ「はい。すぐ伺います」 2分30秒後にドアがノックされた。寛太は、ドアロックを外して、オマタを招き入れた。 オマタ「遅くなりました」 寛太の内心語(むむっ。なんかオマタさん。口紅がいつもより濃いって感じ。いよいよ。今夜は。ふたりきり。。。ならいいけど) 寛太「シオナは?」 オマタ「先ほど、下田駅まで送りました」 寛太「Ryujiは?」 オマタ「今朝早く、バンドの皆様と出発なされました。バンドのンの字をイに変えて、バンドのドの字をトに変えて、みんなそれぞれ散って行く、のだそうです」 寛太「あぁ。それから。。。」 オマタ「樋渡。。。」 寛太「。。。キテキ?テキヤ?ヨコ?タテ。そうそう、タテキって呼ぶんだ」 オマタ「大変、失礼しました」(失礼されちゃった?) 寛太「すんなり出てきたら、こっちがびっくりするわい」 オマタ「せっかくなんで、釣りでもしてから帰るとおっしゃって、お昼にパスタを3種類お召し上がりになって、お出になりました。ごちそうさま。今度ゆっくり音出し会で盛り上がりたいと伝えてくれ。とのことでした」 寛太「。。。そうか。。。皆、帰ったのかぁ」 波音。さらさら、ざぶーん。(おぉ、いいSE) 寛太「オマタさん」(と切り出した) オマタ「はい」 寛太「今夜はどうやって過ごそう?」 オマタ「それはあなたが決めることです」 寛太「ふーっ。オレが決めることかぁ。。。そうだ。一緒にお風呂に入ろう」 オマタ「それは業務命令でしょうか?」 寛太「そうだよ。業務命令だよ」 オマタ「承知いたしました」 konyokukazokuburokonyokukazokuburowakuwakuwakuwakuwakuwakuwaku 湯船の向こうは水平線。漁火が目を奪う。 寛太「うわっ。星空、きれいだよ。見てごらん。オリオン座」 寛太は、オマタのタオルに包まれた胸の谷間が気になって仕様がなかった。 オマタ「わたし、スバルが好きです」 寛太は内心、びっくりした。初めてだ、自分自身のことを話すオマタさん。 寛太「学生の頃、このホテルに泊まったことがある」 目の前で湯がはねた。 オマタ「。。。(首を横に振って、はねる湯面を睨んだ)」 寛太「恋人と。でも、別れちゃった。あなたに付いていけないと言われた」 オマタ「でも、おふたりとも真剣だったんでしょ?」 また、湯がはねた。 寛太「うん。すごくね。。。少なくともボクは」 オマタ「。。。なぜ別れてしまうんでしょう?」 寛太「それがわかってしまったら、歌なんて必要ないよね」 湯がはねた。 寛太「こうしてると、Ryujiが幼い頃のこと、思い出す。そういえば、シオナとも一緒にお風呂入ったなぁ。チャプチャプって落ち着かないんだよね。でも。。。」 オマタ「でも?」 寛太「しあわせだった」 波の音だけになった。見ると、オマタは涙を流しているようだった。 オマタ「寛太さん」 オマタさんが初めて、自分の名前で呼びかけた。 オマタ「見えてたんですか?」 寛太「一昨日からかなぁ。うろちょろ、うろちょろ。今はばしゃばしゃ。おしゃまな娘」 オマタ「すみません」 寛太「やっぱ。オマタさんは刺激が強すぎる。このまま一緒だと、Ryujiじゃないムスコが噴火して、ビースト(獣)になっちゃう。先上がるね。それから、この部屋広くて、一人じゃ寂しすぎる。今日は、303号室で寝るから、オマタさんは、ゆっくり、ふたりで団欒しちゃって」 寛太は、股間を宥めながら、タオルで体を拭くのであった。 オマタ「寛太さん」 寛太「業務命令だ」 オマタ「し、しょ、承知いたしました」 いやぁ。オマタさんのタオル一枚の入浴する姿、惚れ惚れしちゃう。のぼせちゃった。鼻血ぶーーーっ。 オマタ「まったく。悪戯ばかりして。ダメ。もう誰もとばしちゃダメ」 だって、寂しかったの。お仕事ばかりで。。。 オマタ「。。。ごめんね。ごめんね」 yokujituyokujituyokujituyokujituvyokujituyokujituyokujituyokujitu 翌日。朝ーーーーっ。(古) 山手線、某週刊誌中刷り見出し 「間寛太、美人マネージャーと伊豆旅行」 「男と女、あんたはどっちがよかんた」 戸田「か、寛太さん」 |
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「水の空に眠る」第六話裏々話、「監督、寛太の名誉を守るため記者会見に臨む」 | zizi | 2012-10-19 19:04 |
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kankan | 投稿日時: 2012-10-17 21:53 更新日時: 2012-10-17 22:01 |
TheKanders 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
「水の空に眠る」第六話裏話、「オマタの謎」 nak社長は、リンカーンコンチネンタルの中で、美人秘書から携帯電話を受け取った。
nak社長「zizi監督。。いやぁ。第六話は、ずいぶんお楽しみでしたなぁ。アサコさんは、ライバル・プロダクションの専属なんで、ビビッちゃいましたよ。頼みますよ。そこんとこ。。。えっ?間寛太のジャーマネ。。。美人?何だっけ。オマ?あぁ。オマタね。。。気になる?」 zizi監督「女優としてってワケじゃないんですが。。。」 nak社長「あの子、うちの家政婦。間寛太はあんま仕事ないので、その方がいいかなっとか思って。。。えっ?タレントとして。。。あぁ。無理無理。オマタは旦那と娘が死んでから、記憶喪失みたいになって。ともかく普通じゃなくなったから。」 zizi監督「普通じゃないって?」 nak社長「あんまり、プライベートなこと話したくないけど、オマタは、なんていうか、生きてるようで生きてないってのかな。家政婦ミタ、見たことない?あんな感じ。めちゃくちゃ優秀なんだけどね。秘書やってたんだけど、家政婦にしてくださいって泣きながら言い出すし。でも、最高だよ。料理はうまいし、家事はてきぱきやるし、秘書以上に私のスケジュールを把握してるし。。えっ?なんで。早く紹介してくれなかったのかって? 寛太とああなったり、こうなったり? 監督、何興奮してるの。まぁまぁ。どうなったって、変な者同士。なるようになるでしょ。がはははっ」 zizi監督「なるようになるって。問題ないんですかぁ} nak社長「ジビッシュのママよりはマシでしょ。寛太もちょっと人気の伸び悩みなんで、スキャンダルは大事なんですよ」 enonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsenonsen ホテルの正面玄関に、「間寛太様御一行」の札が下がっていた。 オマタの運転する車がロータリーに着いた。 ホテル側一同「いらっしゃいませ」 シオナ「おおっ。すげっ。」(と助手席から飛び降りた) 波の音が心地よい。 オマタは、だらだら降りる寛太を確認してから、フロントに急いだ。 寛太「お世話になります。ここプライベートでは初めてなんすよ」 支配人「憶えてます。確か3年前の秋のロケでしたね」 寛太「あぁ。あれは3年前ですか、時の流れは早い」 寛太がロビーに入ると、幾人かの客がたむろしていた。 寛太は、ソファーにどっこいしょと座った。 客A「あれ?間寛太じゃない。意外に老けてるわね」 寛太は、びくっとした。そうなのだ。zizi監督は若さ、若さを寛太に要求し、あらゆる演出、メイクを寛太にほどこしていたのだ。 シオナがよく言っていた。「ムリあるんじゃない?キモイ」 Ryuji「やぁっ」 寛太の息子、Ryujiだった。 http://gbuc.net/modules/myalbum/viewcat.php?uid=2031 当時は中3か高1だったかなぁ。今は、バイトしながらライブ三昧。 寛太「なんだぁ。なんでお前がここにいる」 Ryuji「遅いよ。ねむっ。ライブから直行。シオナちゃんから急に電話があって。とにかく、贅沢三昧でたらふく、うまいもんが食えるからって。バンドの連中も一緒」 バンド一同「ちっす。どうも」 Ryujiは寛太の耳に囁くのだった。 Ryuji「あんま、変なこと考えるなよ。じゃぁ。オレたち、昼メシ食ってくる」 寛太は、ロビーの向こうに見える水平線をじーっと眺めていた。 オマタ「オマタせしました。お部屋の方へ」 寛太「息子が来てるようだが」 オマタ「はい。シオナさんが呼んだので、至急手配しました」 寛太「私に内緒で」 オマタ「はい。内緒でというシオナさんの命令でしたので。。。キャンセルして、追い返しましょうか?」 寛太「いや。いい」 オマタ「では、こちらの方へ」 シオナ「うっわー。すごい。綺麗な海。わっ。海見ながらお風呂」 寛太はシオナと一緒のダブルの部屋だった。 オマタ「私は、303号室におりますので、何かありましたら、電話でお呼びください。3分で参ります」 シオナ「オマタさんも一緒の部屋でよかったのに。ねぇ。叔父さん」 オマタ「それでは一端、ここで失礼します」 卒無く、茶を淹れ、服をクローゼットに並べ、ちょっと乱れたベッドの皺を伸ばして、去って行った。 シオナ「きれいな人。。。じゃぁ。シオナ。海に降りてみる」 寛太は、窓辺のソファに座って、オマタの淹れた茶をすすりながら、海を眺めた。寛太「ここじゃ、すけべ根性も起こせないか」(と自嘲した) bonyaribonyaribonyaribonyaribonyaribonyaribonyari おい。よせよ。冷たいだろ。このやろう。 きゃぁ。冷たい。えーい、えーい。 かけた海水が、真夏の太陽に光った。 ふたりは、打ち寄せる波に揺れながらキスをした。 bonyaribonyaribonyaribonyaribonyaribonyaribonyari コツコツ。コツコツ。 寛太は、はっとして居眠りから目覚めた。 寛太「はい」 ドアを開けたが誰もいない。 どうも、コツコツはトイレの中からのようだった。 寛太は、そっとトイレのドアノブを回した。開く。 開けると、便座に、由布校長が座っていた。 寛太「ど、どうしたんですが?こんなとこで」 由布校長「いやね。とんで来ちゃった。戻らなきゃ。生徒たちが待っている。遅れてしまう」 と、急いで部屋を出て行った。 バスルームからシャワーが出る音がした。 寛太は、恐る恐る、ドアを開けた。 シャワーに打たれるキム教授がそこに居た。 寛太「キム教授」 キム教授「文明は音なり。羊は夢を見るにちがいない」 寛太「すみません。まだ本渡していませんでした」 キム教授「とんできたのを憶えているが、いや。こうしている場合ではない。今日は細君の誕生日だ。帰らねば」 と、渡したタオルで拭いながら、部屋を出て行った。 クローゼットでガタンを音がした。 九九社長が寝ていた。 九九社長「ハーイ。ボーイズ・ビー・アンビシャスって誰が言ったっけ? クラーク・ケントは、スーパーマン」 寛太「ウィリアム・スミス・クラーク」 九九社長「オゥ。イエス。とんできちゃったんだよね。ホワイ? オーノー!重役会議の時間じゃないかぁ。」 と飛び跳ねて、部屋を出て行った。 寛太「何なんだ。一体」 と、リビングに戻り受話器を取って、オマタに電話した。303。トゥルル。。。 ふと、窓辺の方を見て、寛太は、目を疑った。 窓辺のテーブルで、zizi監督とnak社長が各々、海に向かって携帯電話していた。 nak社長「だからね。ziziちゃん。オマタには一人娘がいてね。その娘が死んでいるはずなんだけど、オマタは生きていると信じているわけさ」 zizi監督「なんか、急に電波がよくなった。目の前が海だし。んで、生きていると信じているって、どういうことなの?」 nak社長「じゃぁ、どこで生きているのって訊くと、ここにいるじゃないですかって、怒るわけさ。気味悪くってさ。あとね。いつも出勤時間前に来るんだけど、必ず遅れました。すみません。っていうのよ。おい。なんで目の前が海なんだ?」 zizi監督「遅れました。。。」 nak社長「。。。はっ」 zizi監督&nak社長「ち、遅刻少女!!!!!!!!」 寛太「そこで、何やってるっすか?」 冷蔵庫がガタガタ鳴っていた。 樋渡干記♪いつもおいらは、ロケローボーイ♪「いやぁ。寒い。かなり寒い。おい、ここどこ?暗くて寒い。冷蔵庫の中みたいだぜぇ♪ベビィ。とんできちゃったぜ。オーマイ・ガッ。いいから早く開けてくれよ。久々ライブの時間だぜぇ」 |
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kankanさんへ3 | zizi | 2012-10-18 18:22 |
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kankan | 投稿日時: 2012-10-15 21:59 更新日時: 2012-10-15 22:18 |
TheKanders 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
「水の空に眠る」第六話裏話、「理由、聞き届けたり」 校門前に由布校長が立っていた。
少女A「寝坊ちちゃったの」 由布校長「早く教室に入りなさい。明日は遅れちゃダメだよ」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 由布校長「ワーッ」 由布校長は、布団を蹴って、跳ね起きた。 ロケ現場でzizi監督がディレクターチェアに腰掛け、貧乏ゆすりしていた。 少女A「おちょくなりまった」 zizi監督「代わりはいくらでもいるんだよ。早くスタンバイして」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 zizi監督「ワーッ」 zizi監督はルカちゃんを跳ね除けて、跳ね起きた。 講堂でキム教授は、歴史の講義をしていた。 少女A「ちゅみません」 キム教授「今日は許します。でも、あなたから1492年から1571年が失われた」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 キム教授「ワーッ」 キム教授は、奥方の手を振りほどいて、跳ね起きた。 ノーパンしゃぶしゃぶ(ふるぅっ)で、nak社長は有名プロデューサーと飲んでいた。 少女A「お待たせいたちまちた」 nak社長「遅いじゃないか。プロデューサーお待ちかねだぞ。あれ?この子だっけ。まぁ、いいや」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 nak社長「ワーッ」 nak社長は、プロデューサーと一緒に、跳ね起きた。 社長室で九九社長は、下に広がる都心のビル街を眺めていた。 少女A「エレベーターを間違いまちた」 九九社長「うん?キミはいったい誰だね。ともかくキミの来る所ではない」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 九九社長「ワーッ」 九九社長は、ナイトキャップをぴんと立てて、跳ね起きた。 スタジオで、樋渡干記は新曲の歌入れ最中だった。 少女A「まだやってますぅ?」 樋渡干記「ギリギリ♪ イエェイ。うん?キミ、見ない顔だね。でもいいよ」 少女A「いっぺん、とんでみる?」 樋渡干記「うん。いいよ。エッ?」 樋渡干記は、愛娘をベッドから転げ落として、跳ね起きた。 由布校長、zizi監督、キム教授、nak社長&九九社長(声を揃えて) 遅刻少女 遅れて、樋渡干記「遅刻少女?」 |
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kankanさんへ2 | zizi | 2012-10-16 20:36 |
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gigo | 投稿日時: 2012-10-14 21:38 更新日時: 2012-10-14 21:39 |
登録日: 2004-6-2 居住地: 中央公園西半丁入る北通り下駄履き最上階北窓日照短猫付時折雨漏り環境並地下鉄バス近大通り東3丁目元馬通 投稿数: 4160 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 あー、そういうことでしたか。
なんだか良くわからなかったけれど さーっと上から流して「あとがきのあとがき」を読みました。 始め出遅れて「水の空に眠る」は読んでないんです 余裕ができたら初回から読んで出直しま〜す。 |
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Re[2]: gigoさんへ | zizi | 2012-10-14 22:18 |
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kimux | 投稿日時: 2012-10-14 19:26 更新日時: 2012-10-14 19:26 |
登録日: 2004-2-11 居住地: 地球 投稿数: 6944 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 EPUB エディタ Sigil による EPUB 版に6章を追加しました。
GBUC共有フォルダの「水の空に眠る」フォルダに置きます。 kanta01-06.epub 校正メモ 正:言い辛かったらよろしいんですけれど、何かその、 誤:言い辛かったらよろしいんですけれど、<改行>何かその、 正:笹子さんの不安は最悪の状態で的中したんだ。 誤:「笹子さんの不安は最悪の状態で的中したんだ。 |
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Re[2]: キム教授いつもすみません... | zizi | 2012-10-14 20:13 |
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kankan | 投稿日時: 2012-10-14 15:28 更新日時: 2012-10-14 20:25 |
TheKanders 登録日: 2008-1-14 居住地: 投稿数: 2002 |
「水の空に眠る」第六話裏話 マネージャー・オマタ 戸田が休暇中、第6話が収録された。寛太には、オマタという美人マネージャーが付いた。
zizi監督「寛太ちゃん。すっげー美女じゃない。このぅ、このう」 美人が大好物のzizi監督が、さっそく飛びついた。 寛太「えぇ。」 zizi監督「それにしても美しい。マネージャーってより女優かモデルにした方がええんでないかい(北海道弁かよ)。nakのジャーマネ(業界用語かよ)にこんな美女がいたなんて。。。 寛太「昔、地方の番組に出演したこと、あるみたいっすよ」 zizi監督「そう、なんとかならないもんかなぁ。nakの社長に電話してみよ」 寛太「ちっ。ちゃっかりアサコさんと共演したもんで、超ゴキゲン。今度は。。。」 zizi監督「寛太ちゃん。何か言った?」 寛太「いいえ。なんでも。。。それにしても、この島のロケ、閑散としてますね」 zizi監督「そうだね。役者らしい役者、寛太ちゃんとシオナちゃんだけだもんね」 寛太「それ以外の出演者は島の人」 zizi監督「あっちは、大勢で、がちゃがちゃ楽しくやってるよ。樋渡ちゃん。場を盛り上げるのがうまくて」 寛太「楽しくね。。。」 その時、zizi監督の携帯電話が鳴る。 zizi監督「はい、もしもし。。。うん。いいねぇ。黒猫館での撮りの時、みんなでお祝い。いいねぇ。うんうん。親睦深めるって?。。。それでアサコさんも。うんうんうん。。。」 とサブコンに戻って行った。 寛太「戸田。コーヒー持って来い」 さっと、目の前にコーヒーが差し出された。 オマタ「熱いですよ。気を付けてください」 第6話収録終了の翌日、寛太もシオナもオフになり、自宅でくつろいでいた。 寛太「オマタさん」 オマタ「はい。何か御用でしょうか」 マネージャー・オマタが軽く会釈して現れた。 寛太の内心語(うーん。綺麗。でも、まったく笑わないんだよなぁ。それに、ちょっとコワいとこもあるし。。。) 寛太「明日のスケジュールは、どうなってる?」 オマタ「何も入っておりません」 寛太「そう。それじゃぁ、温泉でも一緒に行こうか」(寛太の脳裏にスケベな妄想が過ぎった) オマタ「それは業務命令でしょうか?」 寛太「。。。ぎょ、業務命令かな」(と小首を傾げる) オマタ「承知しました。どちらの温泉がよろしいですか?」 寛太「そうねぇ。。。オマタさんは、どこがいいと思う?」 オマタ「それはあなたが決めることです」 寛太「あっ。はい。は、は、箱根でいいかな。それとも伊豆?いずこへ。なんてね。はははっ」 オマタ「。。。」 寛太「うほん。伊豆下田で」 オマタ「承知いたしました。何泊のご予定で」 寛太「可能な限り」 オマタ「今のところ、月末まで十五日間、空いておりますが」 寛太「オレったら、ずいぶんと暇人。三泊ぐらいでいいだろ」 オマタ「承知しました。さっそく手配いたします」 そこに、シオナ登場。 シオナ「私も行くぅ」 寛太「お前は仕事だろ」 オマタ「シオナさんは、明後日の午後2時から雑誌の撮影が入っております。正午にホテルを出れば、同行は可能です」 シオナ「わーい。伊豆の海って初めて。」 寛太「お前は新木場あたりでも、うろついていろ。この仔雅」 シオナ「あっ。それ言っちゃう? 自分だって下心見え見え。伊豆で何期待してるの?叔父さんの考えてることなんて、すぐわかるんだから」 寛太「下心とはなんだ、下心とは」 シオナ「赤くなって怒った。図星だ、図星。叔父さんは、男でも女でも、どっちでもいいんだもんね。この両刀使い」 寛太「このヤロウ。どこでそんな言葉覺えた。こっち来い」 シオナ「キャーッ。変態、キモイ。オマタさん、助けて」(とベソをかき、オマタの影に隠れる) オマタ、追ってきた寛太を冷静な目で見つめる。 オマタ「どういたしましょうか?」 寛太「ケツをひっぱたけ」 オマタ「承知しました」 オマタ、シオナのケツを思い切りひっぱたき始めた。 シオナ「キャーッ。やめてー。イタイ。叔父さん、やめさせて」(と泣き叫ぶ) 寛太「オ、オマタさん。もういい」 オマタ、シオナの涙を拭いて、千円札を渡す。 オマタ「明日の準備をして、今日は失礼させていただきます。食事はキッチンに用意しております」 寛太とシオナは目を合わせて、お互いの驚きを確認し合った。 xsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsexsex その頃、戸田は。 寛太の、ばーーーーかーーーーーやーーーーーろーーーーー 部屋は照明で真っ赤に染まっていた。 戸田はソファーの真ん中に、その両隣りには、最近のziziさんの楽曲のアートワークに登場するようなボカロイドの少女人形が居た。 リン「私、リン」 ミク「私、ミク」 戸田は、ふたりを両脇に抱いて、それぞれにキスをする。 戸田「お前たちはいい娘だ。ボクをわかっているのはお前たちだけさ」 リン「寛太、ばか」 ミク「シオナ、わがまま」 リン「zizi監督、許せない」 ミク「ルカちゃん、かわいい。英語もできる」 戸田、がくっと肩を落とした。 リン「ご主人さま、ルカちゃんが好き」 ミク「ご主人さま、私たち英語できない」 戸田「ルカちゃんに電話してみよっと」トゥルルルル、トゥルルルル。 ルカ「ハイ。ルカです。。。クタバレ。このゴミ虫。」 戸田「は、はっ。ははっ。へへへへへっ。カ、カ・イ・カ・ン」 口からヨダレが垂れていた。 リン・ミク「きゃーっ。ご主人さま。すてきーっ」 これが戸田の休暇の過ごし方だった。この休暇が長く続けば、戸田は完全に干からびてしまうだろう。 |
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kankanさんへ | zizi | 2012-10-14 20:11 |
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yuuichik | 投稿日時: 2012-10-14 15:12 更新日時: 2012-10-14 19:54 |
校長 登録日: 2004-2-16 居住地: 投稿数: 2404 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 zizi監督、ついに「じじ自らを語る」編を発表されましたね。
あいだに「ZIZIMACOシリーズ」をはさんだせいか、 売れっ子作家にありがちな「集中力の散漫化」(笑)が懸念されましたけど、 やはりzizi監督の筆さばきは見事でしたね。 Asakoさんを「笹子」としたせいか、イメージの連想が難しかったですが、 (朝子でもいいかと思いました♪) じじにも複雑で辛い過去があった感じがうまく伝わってきます。 そういう過去があったからこそ、思いやれる面があるんだなと感じました。 でも笹子さんがその言葉を言わざるを得なかったのは、分かる気がします。 憎さと同時に、それを言えるだけの心許せる相手だったのしょうね。 彼女がもしもその思いをいつまでも吐き出せなかったら、 きっともっと辛い気持ちの中に閉じ込められたままだったのでしょうからね。 言われた方は、堪りませんけどね。 笹子が次に進むための「大切な役割」をしたと、自分に言い聞かせて下さい。 「好きになった者負け」です(笑) とは言え、全体を通してじじさん、確かに格好良すぎますけどね(笑) でもそれぐらいしないと、これだけの持続パワーは得られませんものね♪ 分かりますよ♪ 私も原案者役得で十分に素敵な演出をして下さって、感謝です。 今回も「カステーラ差し入れ」など、良い役どころ嬉しいです♪ でもでも、じじと司令官、お互い「ふられる」のはどうして? じじさんのデフォルトの女性体験がそうさせるのでしょうか?(笑) また、まこさんも良い役どころですね〜♪ これはZIZIMACO役得?(笑) これだけ個性が出てきたまこさんを、このままにさせるのはもったいない! まこさんにも何か恋のエピソードを加えたいですね♪♪ 須倉 歩さんとくっつけるのはどうです?(言うのは勝手w)。 でも実は、まこさんは樋渡記者のことが・・・。 で、最終的には須倉 歩氏も「仲間」入りにっ(笑) 主人公の寛太・・・・・・・・(居たんでしたね?w)。 うーーん、この先、彼がどう「日本の話」に戻れるのか?(笑) 残すところ2話?(いさこ編・ぽとまん編) 収拾を付けるのが難しいような気もしますが、 その時は「須倉歩まさかの告白編」と 「寛太となぎこ奇跡の再会編」を加えたら、 驚異の大どんでん返しになるかもしれませんね♪(どんなだ?w) 堪能しました。 続きをまた楽しみにしています。 |
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Re[2]: 校長先生へ | zizi | 2012-10-14 19:36 |
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SCRAPS | 投稿日時: 2012-10-13 13:48 更新日時: 2012-10-13 13:48 |
ターミネーター 登録日: 2007-1-27 居住地: 宮崎市 投稿数: 1424 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 読みました〜。
監督、結局ふられちゃったとは言え、ちょっとかっこよすぎじゃないですか! 今回も楽しく拝読しました。 私の出番のことなど全然気にしないでくださいねぇ〜。 読んでるだけで楽しいですし、別に最終的に出番がなくてもちょい役だったとしても全然気にしないですから。 きっとマネージャーの三好女史がメガネをキラリと輝かせて口の端が片方ニヤリと上がるはずですww |
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Re[2]: 須倉氏へ | zizi | 2012-10-13 16:30 |
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Asako | 投稿日時: 2012-10-13 13:38 更新日時: 2012-10-13 13:38 |
ドラえもん 登録日: 2006-7-15 居住地: 投稿数: 1102 |
Re: zizi通信 09 「水の空に眠る」第六話 どうもお久しぶりです。
エピソード、感慨深く?拝見しました。 最後のきつい一言がモロ私って感じです♪(性格悪。。) 大変な時代だったと思います。オフレコな事も多々あるでしょう。 根津女史の事も、ご家族の意向を優先してあげたいですね。 まあユダヤ人にとって見ればな感じですが。。 あちらで伴奏とかしてたりして。 いやほんと、現代に生まれてよかったーな毎日です。 曲も作り始めたので、できたらアップしますね。 また機材関係のご相談もさせて下さいましー Asako |
返信 | 投稿者 | 投稿日時 |
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Re[2]: Asakoさんへ | zizi | 2012-10-13 16:29 |
投稿者 | スレッド |
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zizi | 投稿日時: 2012-10-12 5:50 更新日時: 2012-10-12 5:50 |
登録日: 2008-4-25 居住地: 投稿数: 3257 |
登場人物など これまでコメント欄での裏話等に登場している本編登場人物以外 updateしました。
戸田:芸能事務所NAK社所属、寛太のマネージャー。 鈴木:監督助手その1、唐揚弁当事件で一旦クビになる。 佐藤:監督助手その2、会議で監督を援護せず不興を買う。 鈴木の彼女:地味な女子。 ルカ:ziziの仕事用邸宅に居るボカロちゃん。アンドロイドなのか? 九九社長:大スポンサー、りんご電算機株式会社社長。愛車はミ○・イース。 キム教授:時代考証担当顧問 樋渡満記:樋渡干記の兄 須倉 歩:フランス帰りの音楽家。 三好:須倉氏の美人マネージャー nak社長:愛車はリンカーンコンチネンタル あ、引き続き普通のコメントも絶賛受付中です。 |
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