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zizi さんの日記

 
2014
2月 8
(土)
06:57
Blue mirage 第18話
本文
Blue mirage 


第18話


2014年 3月-2


で、本来ならアサミちゃんがボクの家に来る事になっている土曜日の夜八時、先週マコが見たという隣駅の繁華街まで行ってみた。ボクはユーイチの家に行くと言って来た。そして、もしもアサミちゃんのお母さんから電話がかかって来たら....やっぱここは男同士だ。この事をボクは父さんにお願いした。父さんは深くは尋ねずに、「わかった...あまりヘンな事すんなよ」とだけ言ってくれたのが嬉しかった。隣の駅でマコと落ち合って、例の場所に案内してもらった。先週も八時過ぎだったらしい。駅からすぐ近くにある、マコの母さんがいるスナックの2件隣の雑居ビルだった。

同じ通りの向かい側にある三階建ての時間貸し駐車場の影にかくれて見てたら....男女がそのビルの階段を降りて来た。

長髪の男とアサミちゃんだ!アサミちゃん、何だか親しそうに話てる。男の人はギターのケースを持ってた。タクシーが通りかかって、ヘッドライトに二人の様子が照らされる。

「あっ」

ボクは堪らず声を出した。やはりマコの言う通りだった。間違い無い。宮部先輩だ。今までどこで何やってたのかわかんないけど....今アサミちゃんが一緒にいるのは、あの、発表会の時最後にピアノを弾いた...ライブハウスでも、もの凄くカッコ良くて、アサミちゃんがこの人の事をとても楽しそうに話す...あの人だ。でもボクが声をあげたのはその事よりも、アサミちゃんが見覚えのある包みを...手作りのクッキーを包んでたあれだ。ボクが見たのよりも大き目のその包みを...宮部先輩に渡してたからだ。宮部先輩はそれを嬉しそうに貰って、アサミちゃんの頭を撫でて、手袋をした両手で頬をつつんで...アサミちゃんは照れてるけど嬉しそうにしてて...で、二人はその場でしばらく話したあと駅まで一緒に行った。その時アサミちゃんは、とても遠慮がちに宮部先輩の袖をつまんで歩いてた。ボクたちは後ろめたさを感じながらも少し離れて後を尾けた。アサミちゃんは切符を買って、一人で帰った。何度も振り返って宮部先輩に手を振っているアサミちゃんの姿はボクの心を締め付けた。

そしたらその後、男の人が三人と女の人がやって来て宮部先輩と話してた。女の人の顔には見覚えがあった。ライブハウス「Kanders」で貫太郎さんと話をしていた三好さんって人だ。しばらくして解散みたいな感じになって…宮部先輩と三好さんはさっきまでボクたちが隠れてた時間貸しの駐車場に向かって歩いて行った。ボクたちはどうしてよいかわからずに何となく...二人の後をこっそり尾けた。そしたら一階に止めてある一台の車、ちょっと古いボックス型のワゴンだったけど、それに一緒に乗った。三好さんが運転席に乗り込んで、エンジンをかけたけどしばらく出発しなかった。

ボクとマコは何も喋らなかったけど...このままじゃ帰れない。そう考えてた。少し駐車場に近寄ってみると...隣のビルのブロック塀の隙間から丁度二人が乗ったワゴン車が見えた。どうしたんだろって思って、悪いと思いつつ車の方見てたら、二人で何か話しこんでるみたいだった。で、三好さんが宮部先輩が手にしてた包み、アサミちゃんのクッキーだ。それを手に取り後部座席の方にポイと放り投げた。宮部先輩はそれを止めようともせず...二人は...少し遠かったけどハッキリ見えた。

キスしてた。

それは想像していたよりも長く続いた。ボクはとても見てはいけない物を見てしまって、罪悪感に苛まれながらも目を離す事が出来なくなっていた。そして、二人は抱き合ったまま...シートが倒れて姿が見えなくなった。

その時ようやく...通りを笑いながら歩くサラリーマンの声なんかが聞こえて来て、少し廻りの風景が見えるようになって来て...やっと口を開いた。

「帰ろう」

ボクは不機嫌にマコにそう言ってその場を離れた。

「ちょと待ち」
マコはボクにそう声をかけると小走りに走って自販機からコーラを買って来た。
「ほれ」
そしてボクの頬に缶をピトっと当てた。普通ならここで何すんだよってなる所だったけど、この日はとてもそんな気分じゃなかった。
「...わりぃ」
ボクはマコに缶を渡されて、とてもノドがカラカラに乾いている事にようやく気がついた。寒いはずなのに冷たい炭酸飲料がとても有り難かった。一気に半分以上を飲み干した所でようやくマコの事に気が向いた。残り三分の一位になった所で言った。
「オマエも飲む?」
「そやな...ちょっとだけ貰おか」
ボクは残りの缶を渡してヤツも一気に飲んだ。

ボクは駅までの帰り道、ボクの手が隣を黙って歩くマコの手に一瞬触れた時、思わずをそれを握ってしまった。でも互いにビクっとして直後にそれを放して...自分でも説明出来ない何だかとてもヘンな気持ちになっていた。後でマコに聞いたら駐車場を覗いてる時ボクは飛び出して行きそうな感じだったんでヤツは必死でボクの腕を一生懸命掴んでいたそうだ。


それから殆ど会話もせずに家に帰ると、ヤスオ先輩から電話がかかって来た。

「ジジちゃん〜!元気?ごめんよ、言うの忘れてたんだけどさ」
「え?どうしたんですか...」
「いや、ほらジジちゃんまだケータイとか持ってないからさ、つい言いそびれてたけど、明日夕方ヒマ?」
「え?また急ですね...」
「どしたの?何か元気無いじゃん」
「ちょっと...あ、気にしないで下さい...」
「なんでぇ、彼女、マコちゃんだっけ、あの娘とケンカでもした?」
「違いますよ...それより用事って何なんですか?」
「お、わりィ。実はさ、明日またKandersでライブあんだけどさ」
「え?そうなんスか...」
ちょっと今とてもそんな気分じゃ無い...ボクはそう思った。
「そ。ま、ちょっと最後まで話聞きなよ、今度はオレのじゃないんだ。ジジちゃん前さ、宮部のバンド好きだって言ってなかったっけ」
「はあ...好きっていうか...興味はありますけど」
「知らない?明日、その宮部がさ、ワンマンでライブやるんだぜ。それでさ、三好女史が音楽事務所の人にも売り込んでてさ、どっかの業界人が来たりするらしいんだけど。ま、有り体に言うとスカウトマンにこのバンドどうですかってワケさ」
「そうなんですか?」
「それでさ、新曲を一曲やるらしいんだけど、初のバラードらしいのよ、ピアノ入りの。でもあのバンドは宮部はギター弾くからピアノいなくてさ、誰がサポートすんのって噂になって。アイツは独特の感性があるらしくてさ、上手けりゃ誰でもいいワケじゃないらしいから。試しにスタジオで音会わせたけど何人も断ってやがるらしい。ナカナカ波長が合わないんだろね。この辺りのキーボードプレイヤーは皆匙投げてるって話だ。このヘン天才っつーヤツは厄介だよな」
「は、はあ...そうなんですか」
「それでさ、小耳に挟んだ話なんだけど。明日のライブで一曲だけピアノのサポートやるのがさ、何と中学生らしいのよ。女の子の。あの宮部が認めたプレイヤーってどんなヤツなんだって皆噂してる。どうやら宮部と同じ中学の後輩らしいって話だからさ、今ジジちゃんと一緒じゃん。だからさ、何か知らないかなと思ってさ。いや、オレその情報事前に知ってたら皆に自慢出来るから」

この時、ボクの中で点と線が全て繋がった。

「ヤスオ先輩...隣駅の繁華街の...メインから一本東側の通りにある、立体駐車場の前のビルって何があるか知ってます?」
「え?ああ。この辺でバンドやってるヤツなら皆知ってると思うけど。「kimux」だろ。貸しスタジオだ。バンドの練習したり録音したりする所だぜ。俺たちも使ってるからさ、あそこのキムさんってのは面白くてさ。ウクレレが上手いんだぜ..」
「ヤスオ先輩!オレ明日行きます!チケットまだあります?」
ボクはヤスオ先輩の話を遮って言った。
「おお。どしたの急に?じゃさ、凪子さんに頼んでおいてやるから。受付にジジの名前で前売り二枚。マコちゃんにも宜しくな。あ、で、ピアノの娘に心あたりってない?」
「ヤスオ先輩、どうもありがとう!」

ヤスオ先輩の声がまだ聞こえてたけど、ボクはそれを思いやる余裕が全く無かった。受話器を置くとすぐにまた取り上げ、マコに電話し短く説明した。

「明日、一緒にKandersに行こう」
「明日やな...わかった」

この時ボクは初めて理解した。全ての事は、明日のためだったんだ...

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投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2014-2-9 8:59  更新日時: 2014-2-9 8:59
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3257
 Re[2]: kankan様へ
どもでっす!いえいえどういたしまして。
やはり皆様お仕事もリアルな生活もありますんでね。で、バイオリズムが戻ったら
また賑やかな感じになるんじゃないかと思って色々書き込んだりしてます。

音楽はやはりオリジナルを創るってのはかなりエネルギー使いますんでそんな
しょっちゅう出来ません。なので今は出来るだけ隙間に文章でも書いて、一日前の
状態と少しでも変化があれば見に来る方もいらっしゃるかと勝手に思ったり。
まあそんな事も考えつつ結局自分のやりたい曲を創って書きたい事を書いてる
という...なのでGBUCには非常に恩義を感じると共に有難いと思っております。

いかん...真面目に語ってしまった...さ〜て終盤の執筆に取りかかります
(まだ書いてないのかよ)
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