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zizi さんの日記

 
2012
8月 24
(金)
05:55
zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
本文
連載小説「水の空に眠る」の第三話です。
初めての方若しくは過去の話をお忘れの方へ 説明すると長くなりますので
経緯及びバックナンバーは下記よりお読み頂ければと思います(スミマセン...)。

第一話

第二話

主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。

第三話は海軍基地を出撃し、なぎこのいる街に別れを告げ、沖縄方面へ飛び立って
行った後の寛太のお話です...

今回のオープニングテーマにこちらをどうぞ...
kankanさん&potmanさんのコラボ曲「God Of Thunder」



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「水の空に眠る」

第三話 DogFight!

1945年4月 東シナ海上空


零式艦上戦闘機。寛太も乗って出撃したその機体は、太平洋戦争劈頭、連合軍を震撼させた。
圧倒的なキルレシオを誇り、1941年の時点では世界最高の性能を持つ航空機であった。
しかしアリューシャン列島において不時着した機体を確保した米国は徹底的に研究、
新たな機体と個人技でなく、編隊による空中戦で対抗する戦術を開発する。そして1945年の今、
空戦において昔の武士道のような一対一の格闘戦は既に過去の物となっていた。先に敵機を発見し、
有利な位置を占有した方が勝利する。



最期の連合艦隊の姿を眼下に追い越した後、寛太の隊は巡航速度で南下を続けていた。
発動機の調子もそう悪くない。このままなら順調に辿り着けるか...
しかしそろそろ艦載機の行動圏内だ...と思いかけたその時。

突然寛太の先を行く編隊長機の風防から手信号が伸びた。

「敵機だ!上空か?」

慌てて見上げると太陽をバックに三個のずんぐりした小さな影がこちらに向けて
急降下して来るのが見えた。と思う間もなく、機関銃弾が通過する衝撃を感じる。

「しまった!グラマンだ」

敵の一撃が僅かに逸れたのを見た隊長機が逃れるため降下する。寛太はそれに続こうと
したのだが遅れてしまう。すぐに機が重い理由に気付き、一瞬躊躇した後爆弾を投棄し
後に続くが距離が開く。その間に割って入った敵機は隊長機の後方に廻り一斉掃射を浴びせた。
先を行く編隊長機が炎に包まれる。

「くそっ!」

叫びながら寛太は咄嗟にトリガーを引く。まだ遠くて当たらないのは認識していたが、
敵機も動揺し進路を変えた。すかさず後方からすがり付き、巴戦に持ち込もうとする。
高度が下がり過ぎていたため急降下して増速し逃げる事は無理だった。隊長はこの時のために
自ら犠牲になり高度を下げたのかと今更ながら気付いた寛太の眼前、逃げ場を失った敵機
がたまらず宙返りを打った。

「しめた!乗って来たッスね!旋回性能だったら今でも絶対負けないッスよ」

と心の中で叫ぶ寛太。三転するうちに何とか敵機後方へ廻り込む事が出来た。衝突するか
と思える程照準器の中で大きくなった敵機に短くトリガーを引く。20mmの機関砲弾は
頑丈なF-6Fが相手といえども照準が正確であれば威力を発揮した。敵機主翼の付け根
辺りに命中、バランスを崩して海中へ落下して行く。しかしほっとする間も無く、今度は
後方から銃撃を浴びた。無線で連絡を取り合う敵機はすぐ後ろまで迫って来ていたのだが
それに気を配る余裕は流石に無かった。

「そうか...敵さんは連携を取って攻撃して来るんだったな…」

そんな事を感じる間も無く機体に衝撃を感じる。発動機から黒煙が上がり、主翼にも損傷を
受けたようだ。一撃での致命傷は免れたものの被弾した機体は思うように動いてはくれない。
どこかに傷を負ったらしい、出血したようだ…見事な一撃離脱で離れて行く敵機を横目に
そう感じながら、海面に向けて落下する機体を寛太は必死で立て直そうとしていた。

「上がれ!こんな所で死んじまっちゃたまんねぇッスよ!」

叫びながら操縦桿を必死で引き上げる。しかし高度計の指針は無情にも海面からの高度が
ゼロに近くなる事実を示していた。ありとあらゆる操作を試みる。が、黒煙を上げる
発動機は出力が上がらず、穴が開いた主翼はどう足掻いても浮力を得る事が出来ない。
振動が大きくなり、目の前に海面が迫ってくる。せめて着水する角度を浅くしようと
訓練された手足が勝手に動く。

「ああ、何でこんな事になっちまったんだ…」

そして遂に海面へ激突するその刹那、思い浮かんだのは両親となぎこの面影...

必死の操作の甲斐あって海面への墜落の角度は浅かった。しかし激しい衝撃に襲われ頭部
を強打、視界が赤く染まる。バラバラになった機体が沈む前にと最後の力を振り絞って風
防を開く、と同時に海水がなだれ込んで来る。辛うじて機外へ脱出するが機体が沈む渦に
巻き込まれ身体が沈んでしまう。血の気が引き思うように体が動かない…

なぎこさんから昨夜貰った櫛はどこに入れてたっけ...
あのハーモニカ、持っていてくれるだろうか...
ああ、あの歌をもう一度歌いたい...
寛太は意識が薄れ行くのを感じ、沈みゆく海の中から空を見上げた。


「なぎこ」の居た場所から遠く離れた南の海で「寛太」の目が見た「水の空」...


続く。

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この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のもの
とは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。
kankanさん&キューピーさんのコラボ曲「「Tale Of The Woods (with QP)」です...

CM 速報!Asakoさん出演決定
前回主演の簡寛太さんへのインタビュアを勤めて頂きました美人歌手アサコさんが
数回後のエピソードで「笹子」を演じる事になりした。役柄は...どうやら「じじ」の
過去と何らかの繋がりがあるらしいですが例によって詳細は未定です(笑)

あとがき

またまた長い文章申し訳ありません。
寛太は最後に一矢報いた後どうなってしまうのか...その辺りも交えつつ、
次回より少し本筋を外れるかもしれませんが、「黒猫館群像」を描いてみたく思います。
今予定してるのは...司令官の苦悩を描いた「メランコリックな校長先生」
黒猫館をプチ家出した「まこ」の「マコちゃん危機一髪」、主の過去を暴く
「じじの秘密、笹子との間に一体何が!?」等です。とはいえ予定は未定ですので
どうなるか分かりません...(何だよそれ)
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。

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投稿者 スレッド
zizi
投稿日時: 2012-9-2 7:34  更新日時: 2012-9-3 12:30
登録日: 2008-4-25
居住地:
投稿数: 3257
 Re[2]: yuuichikさま
「それじゃ、ヨロチク。」

やれやれ....今週は散々だった...
戸田ちゃんは今度家に来てって...あれ後日でって意味だったのに急に家に来るし
女優陣には総スカンを喰うし...原案者の校長先生からはカラカワれちゃうし...
いいや。こんな時は家族が一番。週末はようやく家に帰れる...

そこは戸田を案内した仕事用の邸宅ではなく、愛する妻と息子二人が住む
ごく普通の公団住宅であった。階段を上がりかけたその時、着信のアラームが鳴った、

げ。く、くっ、くっくっ、九九社長?

大スポンサーのりんご電算機工業株式会社の社長様直々に電話かけてくるなんて...

「はい。ziziでございます」
「九九だ。少し話しがある。近くのコンビニまで来てくれ。」
「はいはいはいはいこれからスグに参りますっ」ピッ。

もしかして...制作裏話の方が本編より長いから怒られるのか...
今日は家族には逢えないかもしれない...そう覚悟した。
慌てて取って返って駅傍のコンビニに行く。店内には既に九九社長の姿があった。
社長は悠然と「週刊○スト」誌を立ち読みしている。トレードマークの眼鏡を
キラリと光らせながら、ページを垂直に立てて中を覗くような仕草をしていた。
袋綴じの中を見ようとしている...と思ってウインドウの外から眺めていると、
袋綴じを角が丸い◇状に拡げた空間の向こうの九九社長の眼と視線が合った。

慌てて中に入る。

「や。ziziちゃん。お久。」
「こんばんは。除部須会長の49日法要以来ですね...こんな遅くにどうされました?」
「いや。ちょっと話がしたくなって。ziziちゃんも何か食べる?」
「はあ、私は...では...このアップルパンとりんごジュースを...」
「そ、私はこれにしよっと。」

そう言って社長は150円もする「至福のロールケーキ」を手に取った。
流石は大会社の社長だ。太っ腹である。しかしきっちり割り勘でレジを済ませ
二人揃ってコンビニ袋をブラ下げ店外に出ると、社長はおもむろにコンクリートの
車止めに腰掛けて喋り出した。

「どう?最近調子」
「ええ、まあまあ...いえ、全然大丈夫です。絶好調です任せて下さい。」
「まあたそんな無理して...ちなみに最近どんなソフトウエア一番使ってるの?」
「もちろんPCはりんご社のりんご本で...最近使ってるのは...テキストエディット...」
「ziziちゃん。いいの?それで...Logicは?」
「いえ、良いんですこれで。私の音楽なんて...もう誰も...」
「ふ〜ん、私はキライじゃないけどね。ほらあの、ALWAYS や
 Fact that cannot be avoided や No one なんて...」
「社長....それ全部他の方のremix作品です...」
「え?そうだっけ。まあいいじゃないそんな細かい事。とにかくさ、イメージ上
 何でも使ってくんなきゃ困るのよ。映像作品の監督が、動画も静画もテキストも。
 勿論音楽も。これ重要よ。カメラなんかオートフォーカスしちゃうけど被写体変える
 事で撮る人の個性が出せるよね。しかし音楽にはオートフォーカスは無理だ。創り手に
 よって一から、土台から創るしかないから全然違う。勿論ループの音源みたいな同じ
 素材を使っていても出来上がる物は全く違う。だから面白い。」
「え?サスガ社長ですね...いつもそんな事ばかり考えてるんです?」
「え〜と。うん。だって宣伝しないといけないから。ziziちゃんもさあ、メディアの
 取材とかあるでしょ。あれに自分のりんご本持って行って写るように持ってさあ、
 今、こんな事やってます!なんて言って頂戴よ。今度雷電のSSDあげるからさあ...」
「え?あの何かすげえのに繋げる物が無かったあれですか?SSDなんてあるの?」
「え〜と。たぶん...ま、いいからいいから。それじゃ宜しく頼むよ〜」

社長はそう朗らかに言いながら愛車「ミ○・イース」に乗り帰って行った。
本当はCMに出ている香○奈が好きだという理由で「ア○ト」にしたかったらしいのだが
奥様があのモデルさんが宣伝していた通販で服を買って自分で着たら全然香○奈のようには
見えなかったから嫌いとの理由で却下されたのだった。

「ふう。ようやく家に帰れる....」

AM3:00。明日は久しぶりにゆっくり寝れる...
いや今日か...は起きたらまずあの音源を例のサイトにアップするんだ...
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