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zizi さんの日記

 
2012
8月 24
(金)
05:55
zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
本文
連載小説「水の空に眠る」の第三話です。
初めての方若しくは過去の話をお忘れの方へ 説明すると長くなりますので
経緯及びバックナンバーは下記よりお読み頂ければと思います(スミマセン...)。

第一話

第二話

主な登場人物(今回登場しない方含む)
簡寛太 海軍航空隊に所属する特攻隊員
なぎこ 航空隊のある町の花街にいた美しい娘「なぎこ」
由布 一 寛太の基地の司令官
ぽとまん「黒猫館」常連客で萬商店「土瓶屋」の主
いさこ なぎこと同じ店で働く娘。声の美しい、恥ずかしがり屋。
まこ なぎこと同じ店で働く娘。おきゃんで元気、だけど寂しがり屋。
じじ 彼女たちを束ねる怪しい料亭「黒猫館」のあるじ。

第三話は海軍基地を出撃し、なぎこのいる街に別れを告げ、沖縄方面へ飛び立って
行った後の寛太のお話です...

今回のオープニングテーマにこちらをどうぞ...
kankanさん&potmanさんのコラボ曲「God Of Thunder」



------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「水の空に眠る」

第三話 DogFight!

1945年4月 東シナ海上空


零式艦上戦闘機。寛太も乗って出撃したその機体は、太平洋戦争劈頭、連合軍を震撼させた。
圧倒的なキルレシオを誇り、1941年の時点では世界最高の性能を持つ航空機であった。
しかしアリューシャン列島において不時着した機体を確保した米国は徹底的に研究、
新たな機体と個人技でなく、編隊による空中戦で対抗する戦術を開発する。そして1945年の今、
空戦において昔の武士道のような一対一の格闘戦は既に過去の物となっていた。先に敵機を発見し、
有利な位置を占有した方が勝利する。



最期の連合艦隊の姿を眼下に追い越した後、寛太の隊は巡航速度で南下を続けていた。
発動機の調子もそう悪くない。このままなら順調に辿り着けるか...
しかしそろそろ艦載機の行動圏内だ...と思いかけたその時。

突然寛太の先を行く編隊長機の風防から手信号が伸びた。

「敵機だ!上空か?」

慌てて見上げると太陽をバックに三個のずんぐりした小さな影がこちらに向けて
急降下して来るのが見えた。と思う間もなく、機関銃弾が通過する衝撃を感じる。

「しまった!グラマンだ」

敵の一撃が僅かに逸れたのを見た隊長機が逃れるため降下する。寛太はそれに続こうと
したのだが遅れてしまう。すぐに機が重い理由に気付き、一瞬躊躇した後爆弾を投棄し
後に続くが距離が開く。その間に割って入った敵機は隊長機の後方に廻り一斉掃射を浴びせた。
先を行く編隊長機が炎に包まれる。

「くそっ!」

叫びながら寛太は咄嗟にトリガーを引く。まだ遠くて当たらないのは認識していたが、
敵機も動揺し進路を変えた。すかさず後方からすがり付き、巴戦に持ち込もうとする。
高度が下がり過ぎていたため急降下して増速し逃げる事は無理だった。隊長はこの時のために
自ら犠牲になり高度を下げたのかと今更ながら気付いた寛太の眼前、逃げ場を失った敵機
がたまらず宙返りを打った。

「しめた!乗って来たッスね!旋回性能だったら今でも絶対負けないッスよ」

と心の中で叫ぶ寛太。三転するうちに何とか敵機後方へ廻り込む事が出来た。衝突するか
と思える程照準器の中で大きくなった敵機に短くトリガーを引く。20mmの機関砲弾は
頑丈なF-6Fが相手といえども照準が正確であれば威力を発揮した。敵機主翼の付け根
辺りに命中、バランスを崩して海中へ落下して行く。しかしほっとする間も無く、今度は
後方から銃撃を浴びた。無線で連絡を取り合う敵機はすぐ後ろまで迫って来ていたのだが
それに気を配る余裕は流石に無かった。

「そうか...敵さんは連携を取って攻撃して来るんだったな…」

そんな事を感じる間も無く機体に衝撃を感じる。発動機から黒煙が上がり、主翼にも損傷を
受けたようだ。一撃での致命傷は免れたものの被弾した機体は思うように動いてはくれない。
どこかに傷を負ったらしい、出血したようだ…見事な一撃離脱で離れて行く敵機を横目に
そう感じながら、海面に向けて落下する機体を寛太は必死で立て直そうとしていた。

「上がれ!こんな所で死んじまっちゃたまんねぇッスよ!」

叫びながら操縦桿を必死で引き上げる。しかし高度計の指針は無情にも海面からの高度が
ゼロに近くなる事実を示していた。ありとあらゆる操作を試みる。が、黒煙を上げる
発動機は出力が上がらず、穴が開いた主翼はどう足掻いても浮力を得る事が出来ない。
振動が大きくなり、目の前に海面が迫ってくる。せめて着水する角度を浅くしようと
訓練された手足が勝手に動く。

「ああ、何でこんな事になっちまったんだ…」

そして遂に海面へ激突するその刹那、思い浮かんだのは両親となぎこの面影...

必死の操作の甲斐あって海面への墜落の角度は浅かった。しかし激しい衝撃に襲われ頭部
を強打、視界が赤く染まる。バラバラになった機体が沈む前にと最後の力を振り絞って風
防を開く、と同時に海水がなだれ込んで来る。辛うじて機外へ脱出するが機体が沈む渦に
巻き込まれ身体が沈んでしまう。血の気が引き思うように体が動かない…

なぎこさんから昨夜貰った櫛はどこに入れてたっけ...
あのハーモニカ、持っていてくれるだろうか...
ああ、あの歌をもう一度歌いたい...
寛太は意識が薄れ行くのを感じ、沈みゆく海の中から空を見上げた。


「なぎこ」の居た場所から遠く離れた南の海で「寛太」の目が見た「水の空」...


続く。

----------------------------------------------------------------

この物語はフィクションであり、登場する人物や団体の名称等は実在のもの
とは一切関係ありません...
今回のエンディングテーマはこちら。
kankanさん&キューピーさんのコラボ曲「「Tale Of The Woods (with QP)」です...

CM 速報!Asakoさん出演決定
前回主演の簡寛太さんへのインタビュアを勤めて頂きました美人歌手アサコさんが
数回後のエピソードで「笹子」を演じる事になりした。役柄は...どうやら「じじ」の
過去と何らかの繋がりがあるらしいですが例によって詳細は未定です(笑)

あとがき

またまた長い文章申し訳ありません。
寛太は最後に一矢報いた後どうなってしまうのか...その辺りも交えつつ、
次回より少し本筋を外れるかもしれませんが、「黒猫館群像」を描いてみたく思います。
今予定してるのは...司令官の苦悩を描いた「メランコリックな校長先生」
黒猫館をプチ家出した「まこ」の「マコちゃん危機一髪」、主の過去を暴く
「じじの秘密、笹子との間に一体何が!?」等です。とはいえ予定は未定ですので
どうなるか分かりません...(何だよそれ)
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。

(閲覧:31780) |  (好きボタンポチっと数:)
投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-9-1 21:06  更新日時: 2012-9-1 21:07
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
yuuichik「監督、をきのうアップしましたよ! これで由布一司令官の苦悩を描いた『メランコリックな校長先生』篇も、広がりを持って書けますね♪」。
zizi監督「うん・・・」。
yuu「あれ? 元気ないですね。どうかしましたか?」。
zizi「いや、別に・・・」。

yuu「でも由布一がどうやって戦前に歌を録音できたのか。結論は出なくて見切り発車だったけど、キム教授を登場させといて良かったですね。きっとキムさんなら自分で良いアイデアを考えてくれると思ったら、大正解でしたね(笑)」。
zizi「うん・・・」。
yuu「同盟国のドイツからオープンリールの録音機材を、黒猫館のじじの財力にものを言わせて、土瓶屋のぽとまんさんが極秘輸入したということにしましょうか?」。
zizi「うん、そうだ・・・ね」。
yuu「で、録音場所は、海老婆さんの酒場というのはどうでしょう?」。
zizi「いいんじゃない・・・」。

yuu「監督、ホントにどうかしたんですか? 何か悪いものでも食べたんですか?」。
zizi「・・・」。
yuu「監督?」。
zizi「・・・なんで?」。
yuu「え?」。
zizi「なんで、なんで!」。
yuu「なんでとは?」。
ziz「なんで、いさこちゃんと、そんなにイイ雰囲気でデュエットしてるんだよぉー!」。

yuu「え!? 監督まさか、それで御機嫌斜めなんですか!(笑)」。
zizi「おい、校長! いったいどこのスタジオで、いさこちゃんと二人で録音したんだよぉ!」。
yuu「それは勘違いですよ。一緒になんか録音してませんよ!」。
zizi「いさこちゃんは、いさこちゃんは・・・(T_T)」。
yuu「もう監督、よく聴いてくださいよ。あれはyuuichikであって、yuuichikじゃないですよ」。
zizi「ん? どゆこと?」。
yuu「それは、ねぇ、もう少しヒミツっ(^x^)♪」。
zizi「え? どゆこと? あの男性ボーカルは校長じゃないの?」。
yuu「まぁ、私ではあるんですけどね♪」。

zizi「監督にヒミちゅにするとは、けしからんっ!」。
yuu「まぁまぁ(笑) それに相方の女性も、いさこであって、いさこじゃないんですから」。
zizi「ん? ますます分からん!」。
yuu「もう監督ったら! 分かってるくせに?(笑)」。
zizi「はは(笑) そうだった・・・。ちょっと嫉妬しちゃって(*^^*)」。

yuu「年甲斐も無く(^-^;) なぎこさんや、まこちゃんに言いつけちゃいますよ」。
zizi「そ、それだけは勘弁!〜m(__)m」。
yuu「もぉ、どこの世界の監督もオコチャマで嫉妬深いのは同じですね(笑)」。
zizi「それが創造性の源だよ」。
yuu「なんでも創造性に結びつけるんだから(^_^;」。
zizi「屁理屈も言い続ければ信念となる!」。
yuu「はいはい(笑)」。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: yuuichikさま zizi 2012-9-2 7:34

投稿者 スレッド
kimux
投稿日時: 2012-8-31 23:23  更新日時: 2012-8-31 23:23
登録日: 2004-2-11
居住地: 地球
投稿数: 6944
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
佐藤さん見てるか〜〜〜?!
戸田さん見てるか〜〜〜?!

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kimux さんへ zizi 2012-9-2 7:32

投稿者 スレッド
ひわたし
投稿日時: 2012-8-30 23:52  更新日時: 2012-8-30 23:52
オビ=ワン
登録日: 2007-4-8
居住地: ロックンロールサーカス
投稿数: 1528
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
コンコン
「入ります。」
がちゃ
「私、満州にて映画を撮っております、樋渡干記と申します。干記という名は
戊辰戦争にて熊本で活躍された谷干城様の字を恐れ多くも貰いました。佐世保から新天地を目指し海を渡り、現在は満州に展開する関東軍の庇護を受けております。ですが、どうも陸軍は堅苦しくて性に合いません。その点海軍はいい。海に、空に、男のロマンが溢れております。祖父は現在ニューギニア戦線にてジャングルの中で赤痢と闘っております。すいません,自分の事を喋りすぎました。えーと、かいつまんで申し上げますと、こちらで活躍されておられる寛太さんのお手伝いが出来ないかと思いまして、いや何せですね、私思い立ったらすぐに行動に移さないと昼寝もおちおち出来ぬ性質でして、居ても立っても居られず連絡船に飛び乗った次第であります。まあ、何と言うか寛太さんには非常にお世話になりまして、何か出来る事が有れば何でもするし、その行動を記録して親交の有る火野葦平や松本清張に小説を書かせたりも出来ますし、要するにちょい役でも貰えないかなてへへ的な感じで参った次第であります!」

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 拝啓 樋渡干記 様 zizi 2012-8-31 19:46

投稿者 スレッド
potman2
投稿日時: 2012-8-29 7:19  更新日時: 2012-8-29 9:22
ターミネーター
登録日: 2010-5-23
居住地: 東京
投稿数: 1451
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
あ〜、戦争もの劇画はウチ(土瓶屋)では小林源文がよく出たねえ、ドイツ戦車ばっかだけど。

                                                ぽとまん談

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: ぽとまんサンへ zizi 2012-8-29 20:30
    Re[3]: ぽとまんサンへ potman2 2012-8-30 7:13
      Re[4]: ぽとまんサンへ zizi 2012-8-30 20:33

投稿者 スレッド
SCRAPS
投稿日時: 2012-8-28 22:02  更新日時: 2012-8-28 22:02
ターミネーター
登録日: 2007-1-27
居住地: 宮崎市
投稿数: 1424
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
GBUCでこんな読み物に出会えるとは。
このスペースにこういう場所があるのもいいものですね。
戦争モノの小説はあまり読みませんが、漫画ならかわぐちかいじなんかは読んだことあります。
寛太はどうなっちゃうんでしょうか。
なぎこと結ばれるのか悲恋に終わるのか、気になります。
ところで、清少納言の実名は諾子(なぎこ)との説があります。そのせいか、このヒロイン、どうも清少納言のような知的でクールな女性というイメージを持ってしまいます。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: SCRAPSさんへ zizi 2012-8-29 6:13

投稿者 スレッド
投稿日時: 2012-8-28 21:51  更新日時: 2012-8-29 5:59
ドラえもん
登録日: 2006-11-11
居住地:
投稿数: 1270
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
コメント欄でサイドストーリーが着々と展開してるなあ。

ちょっとこの小説から離れたことを書きますね。


ある日学校から帰ると、祖母が泣いていました。
戦争に出たまま長い間消息が分からなかった兄弟(私にとって大おじ)が、ミンダナオ(だったと思う)で戦死していたことが確認されたという知らせが届いたところだったのだそうです。

はっきりいつだったか覚えてはいません。
でも、学校に通っていたこと、日本が何十年も前に戦争をして負けたことくらいは知っていたことからすると、ある程度は物の分かる年齢だったのでしょう。

もちろん終戦から何十年も経っていたので、生きていると思ってはいなくても、彼女にとっての彼の時間はそこで止まったままだったのですね。

祖母の兄弟姉妹の家族のうち集まれる者だけがほんの数人集まって、小さな法要を営みました。宙ぶらりんになっていましたが、数十年の時を経て墓石に名前が入りました。この法要は、普通に死を悼む意味に加え、
「ああ、確かにこの人は遠い昔に異国の空の下で死んだのだ」
ということを各々が納得するための集まりだったようです。
きっとそういう人、全国各地にたくさんいらっしゃったのだろうなと想像します。
もし判明しないままだったら、終わりのないもやもやを抱えたまま。
兄弟は死んでも兄弟ですが、兄弟でなくて恋人だったら。夫婦だったら。
終わりにして新しい生活を始めていいのか、よくないのか。


さて、話をこの作品に戻して。
寛太はどうなるのでしょう。
生き延びることができれば、なんとかしてなぎこに自分が生きていると伝え、再会しようとするのでしょうか。
なぎこはどうやって寛太の生死を知るのでしょうか。
知った時、どのような道をとりうるのでしょうか。

…ええと、個人的にはマコちゃん危機一髪がとても興味深いですw

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: 凪さんへ zizi 2012-8-29 6:06

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-8-26 13:07  更新日時: 2012-8-26 18:09
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
戸田がzizi監督のご自宅にお邪魔した。戸田がいうには、今から来いっていうから。
戸田「しっかし。遠いっすね」
zizi監督「いらっしゃい。いらっしゃい。なんか喋り方が寛太ちゃんに似てきたんじゃない」
戸田「勘弁してくださいよ。それにしても、すばらしい家ですね。門から玄関まで15分」
zizi監督「それは言い過ぎ。まぁ、上がれよ。お疲れお疲れ」
戸田「お邪魔します」と言いながら、背広を脱ぎ、右手に巻く。
zizi監督「この暑いのに。ジャケットにネクタイなんだ」
戸田「仕事だと気持ち的にこれが楽なんです。慣れというか。お決まりって無難だし」
zizi監督「そんなもんかね。まぁ、気兼ねなしでやってくれ」
リビングに通されて
戸田「いいリビングですね。趣味がいいです」
zizi監督「わかった、わかった。そういうのいいって。戸田ちゃんはどこで本音か、お愛想なのかわからん。まぁ。座って」
戸田「ところで、私をご自宅に呼んだのは、何か訳が?」
zizi監督「うん。もう、気付いているとは思うが。。。」
そこに、めちゃくちゃアニメっぽい少女が登場。
少女「いらっしゃいませ」
と言って、冷たいアイスコーヒーを、戸田に、そして監督に差し出す。
少女、一礼して去ってゆく。
戸田「誰っすか。なんか、ご主人様って世界、感じちゃいました」
zizi監督「うん。ボカロちゃん。今年になっていろいろね。あって」
戸田「。。。そうだ。夏の扉だ。内の間寛太がロバート・A・ハイラインとかディックとかSF小説が好きで、騒いでました」
zizi監督「君は空とか宇宙とか、SFは好きか」
戸田「きらいじゃないですけど、特に好きって訳じゃないです」
zizi監督「聞いた話だが、戸田ちゃんは、アメリカ大陸横断したんだって」
戸田「昔の話ですよ。ただ、バスに揺られて西から東に渡っただけです。なぜ、そうしたのか、そのことで何か感じたか。今では覚えてません」
zizi監督「今撮っているのは、太平洋戦争の話だけど、君はどう思う」
戸田「戦争ですか。戦争なんてない方がいいし。人が争ったり死んだりするのもイヤです。でも、戦争しちゃって。日本が負けた。そういう歴史があるだけです。敗戦したのに、繁栄して、私が生まれた。平和を祈る以外、自分に何もできません」
zizi監督「ビジネスってわけか。ビジネスも戦争、戦争もビジネス。戸田ちゃんも役者やってみるか」
戸田「冗談は止してください」
zizi監督「はははっ。冗談冗談。ところで、一押しの若い娘はどうなった?」
戸田「。。。一押しですか。一押しっていうか、ぶっとびが一人いるんですが」
zizi監督「ぶっとび娘!!?」
戸田「歌は好きなんだけど、ビジュアル系が好きで、土日がめちゃ楽しい。根はいい娘なんだけどわがまま。瞬間瞬間で何言い出すか意味不明。泣いていたかと思えば笑っているし、面白いことには貪欲なくせに、次の瞬間、キモイとか言って。目を薄めて人を見る。自分に正直過ぎる。見てて危ない18娘」
zizi監督「ロシアのt.A.T.uみたいな感じ?」
戸田「そこまではいかないにしても。やっぱ、いいです。これ、なかったことにしてください」
zizi監督「使う使わないは別として、誰よ。写真は。可愛いの?」
戸田「すでに、監督もご覧になっていると思うんですが。寛太の姪っ子」
zizi監督「TheKandersやkankanのアートワークにときどき登場する、あの、あの。。。」
戸田「シオナです」
その瞬間、リビングは残暑厳しい折だというのに、氷付いた。
蝉の鳴く音がリビングに溢れた。

zizi監督「シ、シ、シオナちゃん。寛太ちゃんが彼女の詩に曲を付けて歌ったら、キモイ。バラードにしてって言って、寛太ちゃんがバラードしてやり直した、しかもこの曲をパソコンでカラオケを流して、歌うにはどうしたらいいかって、丑三つ時まで、家族や寛太巻き添えにして大騒ぎした、あのシオナちゃん。寛太ちゃんに泣かされたら1000円罰金ってのを逆手にとって、わざと泣く、あのシオナちゃん」
戸田「あの、シオナです」
zizi監督「それで、寛太ちゃんは、もしシオナちゃんが出演するようなことになったら、どうなのよ。気持ち的というか、今のポジション的というか」
戸田「別にいいんじゃないですが。喜ぶとか不安だってことは別として、ビジネスですから。まぁ。あの娘ならノッたらいいもの出すとは思いますが。けっこう無茶な役でも」(アイスコーヒー。冷たくて、おいちぃ)
zizi監督「無茶な役も」
戸田「行水シーンなんて、喜んで」
zizi監督「ノらなかったら?(赤くなっている頬を撫でながら)」
戸田「けっこうキツいもんありますね。監督次第って感じです。もちろん、キャスティングが決まったら、戸田、全力でシオナをコントロールする所存です」
zizi監督「戸田ちゃん。大丈夫なの?」
戸田「大丈夫。間寛太に比べたら、もう。任せてください」
zizi監督「うーん。考えてみようかな。。。インパクトかぁ」
戸田「監督」
zizi監督「何?」
戸田「今日、私を呼んだのは、実は鈴木ちゃんのことでしょ。外で待っているんですが、どうします。この暑さだから、唐揚げになってるかも、ですが」
zizi監督「。。。」

その頃、寛太は昼寝の夢の中で、次々と敵機を撃ち落としていたのであった。
寛太の寝言「やったぜ。メリケンなんて屁でもねぇぜ。戸田ーーーーっ。と、とだ__。どこだ、とだぁ。アイスコ。。。また携帯。。。むにゃむにゃ」

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankan さんへ 第二話 zizi 2012-8-26 21:00

投稿者 スレッド
kankan
投稿日時: 2012-8-25 20:23  更新日時: 2012-8-25 20:35
TheKanders
登録日: 2008-1-14
居住地:
投稿数: 2002
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
寛太は、冷たいアイスコーヒーが飲みたかった。
自分は、もしかすると役者として、天才なのではないかっと、思っていた。
「うん。これは役者として忙しくなりそうだ。」「社長も喜んでくれるぞ」
「戸田ぁ。どこ行ってやがる。マネージャーはいつもそばに居なきゃならんだろ」

===戸田、携帯電話をかけながら登場。
「はい。はい。いいえ。そりゃ。もう。Win & Winで。何言ってるんですが。大丈夫です。それじゃぁ。よろしくお願いします。はい。よろしくお願いします。」
おっ。戸田も忙しくなってきたか。
戸田「すいません」
寛太「オファーの電話か?」
戸田「いえ。違います。ちょっと、事務所にネズミが出るんで、知ってる業者さんにちょっと。」
寛太「そんなことで、1時間も電話しているのか」
戸田「だって、社長命令ですから」
寛太「わかった。いいから、アイスコ・・・」
戸田の携帯が鳴る
戸田「はい。戸田です。あぁ、もう、電話待ってましたよ。(寛太に)すいません。ちょっと」
寛太「また携帯かぁ。あいつ、一日、何時間電話してるんだ。メシ食ってても携帯、糞してても携帯」

===そこにzizi監督が通りかかる
zizi「いぃや。よかった。操縦桿の握り方なんか、もう本物。戦闘機、知ってますなぁ。あのF-6Fは・・・べらべらべらべら」
寛太内心語 <また、始まった。戦闘機の話、長くなるんだよなぁ。また、同じ話してるし>
でも、笑顔で相槌を打つ寛太であった。
寛太「第4話。楽しみですね」
zizi「そうなんですよ。もう膨らんじゃって。そうそう。社長さんから電話があって、お宅の事務所の若手をお願いされちゃいましてね」
寛太「自分、出番あるっすか?」
zizi「うん。そのことね。そうね。戸田ちゃんからは何も?」
寛太「いえ。何も。あいつ、携帯電話ばっかして、一緒に居ても、ろくすっぽ話してないっすよ」
zizi「戸田ちゃんも忙しいよね。いいことだ。いいことだ。あっ(時計を見ながら)いけない。これから、アサコちゃんと打ち合わせよ。それじゃ。また。よろしく」

===zizi監督、寛太の腰を叩いて、去る。
寛太「監督、なんかウキウキしてんなぁ」

===戸田、携帯を切りながら戻って来る
寛太「お前は、携帯電話のマネージャーやってんのか?恋人か?奴隷か?神様か?」
戸田「何なんでしょうね。仕事半分、プライベート半分ってとこですかね」
寛太「わかった、わかった。お前、監督から第4話のこと、なんか言われてるだろ」
戸田「はい。これからはあんまり寛太を出すと、なんというか寛太の輝きが減る。カリスマ性も必要だろうって」
寛太「それって、つまり」
戸田の携帯が鳴る。寛太睨む。
戸田「メールです。10秒待ってください。。。。。。。。。。はい。すみません」
寛太「第4話には、で。。。」
また、戸田の携帯電話鳴る。
戸田、寛太に詫びのポーズ作って、携帯に出る。
「はい。戸田です。えっ。。。なぁんだ。そんな冗談な切り出しやめてくださいよ。ただの間寛太のマネージャーですよ。そんな、社長だなんて。専務でもありませんって。ぺいぺいですって。えっ。内のモデル使ってくれるんですか。はい、はい。いいですよ。何でもできます。。。」

そうなのだ。間寛太の所属するNAK(ナック)プロダクションは、所属の新人の売り出しに躍起なのだ。
自分が、zizi監督や最近バーテンダーを始めた校長と、少しばかり縁があるものだから、決まったこのドラマ出演。
これを機に、我がプロダクションは、このドラマのエキストラからイレギュラーまで、自社タレントで埋め尽くそうとしている。
最早、寛太出演は二の次なのだ。戸田が自分を余所に忙しいのは、そのためだ。
第4話では、レギュラー以外で、数多くのNAKプロのタレント、エキストラが出演するであろう。

寛太は、ここではアイスコーヒーを飲めないと悟った。たとえ、飲んでも、ぬるくて苦いものになることを思って、ぶるっと震えた。
いつも、秋はそっと忍び寄り、突然に気配を感じさせる。

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: kankan さんへ zizi 2012-8-25 22:17

投稿者 スレッド
yuuichik
投稿日時: 2012-8-24 22:11  更新日時: 2012-8-24 22:11
校長
登録日: 2004-2-16
居住地:
投稿数: 2404
 Re: zizi通信 06 「水の空に眠る」第三話
今回も堪能しました。
零戦としか理解無かったですが、「零式艦上戦闘機」が正式なんですね。
ziziさん、なぜにそんなにお詳しいのでしょうか?(笑)

流れるような空中戦の描写と、
それが寛太=kankanさんが演じているとイメージすると、
画に「ロック」を感じます。

寛太が南の海に沈みながら見た「水の空」が、
なぎこが飛び込んだ川から見た「水の空」と呼応させるところも、
音楽の第一主題が再現されたようで、音楽的です。
お見事!

次回から語られる「黒猫館群像」も楽しみです。
特に、えーっと「いけないマコちゃん」・・・じゃなくてっ(笑)、
「マコちゃん危機一髪」が、どんなだ!?って、楽しみですっ♪

返信 投稿者 投稿日時
 Re[2]: yuuichikさんへ zizi 2012-8-25 4:39
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